彼女に愛を伝えるためにLED内蔵の指輪を作る「Project Longhaul」
製作者の男性は女性と知り合って恋に落ち、自分の思いを伝えるために何をすればよいか考え、なるべく複雑な指輪を自分でデザインして作ることを決断、それから約4か月の間、指輪を作り続けています。
KdN - Kokes dot Net
http://www.kokes.net/projectlonghaul/projectlonghaul.htm
指輪の最終的なデザインが決定したのは2013年の1月で、素材や設計などを試行錯誤して、単純では無いが自分が作ることのできるものをデザイン。最終的にデザインされたのはチタン製のリングの内側にLEDと銅製コイルの組み合わせを埋め込み、発信器に近づくとリングに付いているストーンの下からLEDが光るというものでした。
Autodesk Inventorという3Dモデリングソフトを使用して指輪の3Dモデルを設計し、さらに協力者から指輪を渡す相手の指のサイズが15.72mmであると知ることにも成功します。
チタンは、アルミやスチールを利用するよりも扱いがむずかしく、さらにチタンをカットしたり加工する際には超硬工具を使用しなければなりません。高速度鋼ツールを使用して加工することができますが、すぐにすり減って消耗します。
指輪はチタンの棒から作成。指輪の外径19.8mm、内径と外径の間に2mm程度余裕が出るように指輪部分を削っています。
指輪の指を通す部分を空ける際は、最初に小さなドリルで跡を付けてから大きなドリルで削ることで、ドリルが大きくぶれたりしないようにしているようです。
チタンは熱伝導が良くないのでドリルの先端部分であるドリルビットに熱が集中、先端が熱くなりすぎたため、この写真のようにドリルビットのエッジ部分が溶けてしまい使い物にならない状態に。
指輪の指を通す部分を空ける際は、穴が15.8mmになるように穴を開けます。電子機器を入れるために、指輪を渡す彼女の指のサイズよりも弱冠大きめに作ったそうです。
指輪に23の穴を、3つのプロセスを踏んで空けていきます。最初に0.8mmのドリルで穴を空けて、より大きな穴を空ける際の目安になる穴を作り……
次にガイドの穴を頼りに、2mmのドリルを使って指輪に穴を作成。
そして最後に、2.3mmのドリルで2mmの穴の上にストーンを置く場所を削り出しました。
ここまで完成したら、いよいよチタンの棒から指輪部分を切り外す段階へ。穴空けステップの前にチタンの棒から指輪部分を外してしまうと穴を空ける際に指輪が壊れてしまうことがあるため、慎重にいきます。
棒からチタンリングを外した際ところ。
次は内蔵する電子パーツ用のスペースを作るようです。コレットとマンドレルで指輪を旋盤に固定。
Oリング溝を作る機材を使って、指輪の内側に幅2mm深さ1mmの溝を彫ります。この溝はパーマロイという合金の一部と、コイルとLEDを収納するためのスペースになります。
ストーンの位置を切断すると、ストーンの並びがきれいになり、うまくはめ込めるようになるので、ストーンを収納する部分の間のスペースをカットしました。このカットの際にリングが動かないように固定しておくのがとても大変だったようです。
金属加工最後のステップは研磨です。研磨には顕微鏡を使用して、3つの行程を行います。超硬工具を使って作ったので、指輪には鋭くとがった部分がいくつかあります。これを削るために粒度1200の紙やすりを使い、その後にDREMELにフェルトの回転板を付けて磨きました。1度ゴミを洗い流してから最後にRYOBIの金属磨きセットを使用。
ストーンをリングに固定するためにいくつかの方法を試しましたが、どれもリングかストーンの破損につながりました。最終的に使用したのはEpoxy 330という接着剤。
リングには13の白いストーンと10の青いストーンを接着しました。
電子機器部分の作成は比較的簡単なようです。指輪の溝部分に取り付けるコイルを作成。
コイル部分を拡大するとこんな感じ
コイル部分の作成はこれで終了です。
発信器回路の回路図。
銅板に発信器回路をカット。
発信器コイルの作成に移ります。
腕に取り付ける発信器装置が完成。
発信器が上手く服の下に隠れています。
リングが発信器に近づくと光ります。
リングに切れ込みを入れずに作ると、コイルをリングの中に入れたときに、コイルが光らなくなってしまいます。
実際に切り込みを入れていない指輪がコイルに近づくと、コイルが発光しなくなる現象は以下のムービーからわかります。
Magnetic Field Cancelation - YouTube
溝加工とカットを行いこの溝にパーマロイ合金を入れることでうまく作動するようになったようです。
以下のムービーでは、リング内にコイルを収納した状態でリングを発信器に近づけても、リングが光るように改良成功した様子が分かります。
Ring Illumination - YouTube
長い棒は、指輪のベースとして使われたチタンの棒で、より短い方の棒はさまざまな試験の際に使用したアルミニウムの棒。1番最近作られた指輪は左端にあり、これはチタンの指輪としては10個目の試作品です。
製作者はこの指輪を彼女に渡し、次の日に宝石商でプロの作った指輪を買いに行ったそうです。しかし、そこで彼女は指輪を買うよりも、もう1度製作者に指輪を作り直すよう要求しました。その理由は製作者の作った指輪の内径が15.6mmになっており、彼女の指のサイズである15.72mmよりも小さくなってしまっていたからのようです。
なお、製作者は近い将来に彼女が自分の設計した、より良い指輪をつけているだろうと言っています。
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