街で拾ったタバコの吸い殻やガムからDNAを採取し3Dプリンターで顔を復元する「Stranger Visions」
DNA解析は犯罪における容疑者の特定にも使われますが、街のアスファルトに落ちているチューインガムやタバコの吸殻、髪や爪などから得たDNA情報を元に、持ち主の顔を作成、3Dプリンターで出力してしまうというのがアーティストHeather Dewey-Hagborgさんのプロジェクト「Stranger Visions」です。
Stranger Visions
http://deweyhagborg.com/strangervisions/
実際にHagborgさんが採取したサンプルと、サンプルのDNA情報を元に3Dプリンターで作成した顔は以下から。
◆01
採取日時:2012年6月1日 12時15分
採取場所:ニューヨーク ブルックリン マイトル通り 1381
DNAはタバコの吸殻から採取されました。
判明したDNA情報は以下。
ミトコンドリアDNAのハプログループ:H2a2a1(東欧)
SRY遺伝子:あり
性別:男性
HERC2遺伝子:AA
目の色:茶色
上記の情報を元に3Dプリンタで持ち主の顔を出力するとこんな感じになります。
◆02
採取日時:2012年6月1日 12時15分
採取場所:ニューヨーク ブルックリン ヒムロードストリート マイトル通り
こちらも採取したのはタバコの吸殻。
判明したDNA情報は以下の通り。
ミトコンドリアDNAのハプログループ:T2b(ヨーロッパ)
SRY遺伝子:なし
性別:女性
HERC2遺伝子:AA
目の色:茶色
作られた顔は以下のような感じ。今度は女性です。
◆03
採取日時:2012年6月1日 12時15分
採取場所:ニューヨーク ブルックリン スタノップストリート ウィルソン通り
今回は道に吐き捨てられたガムから採取。
判明したDNA情報は以下の通り。
ミトコンドリアDNAのハプログループ:D1(アメリカ先住民 南アメリカ)
SRY遺伝子:あり
性別:男性
HERC2遺伝子:AA
目の色:茶色
出力された顔はこんな感じです。
◆04
採取日時:2012年6月1日 12時20分
採取場所:ニューヨーク ブルックリン フラットブッシュ通り 33
再びタバコの吸殻からDNAを採取。
ミトコンドリアDNAのハプログループ:L1b(西アフリカ アフリカ系アメリカ人)
SRY遺伝子:あり
性別:男性
HERC2遺伝子:AA
目の色:茶色
顔はこちら。
上記のサンプルにはチューインガムやタバコの吸殻が用いられていましたが、この他にも髪の毛や爪からもDNAを採取。ニューヨークのブルックリンにはGenspaceというDIYの生物学研究所があり、Hagborgさんは研究所に採取した素材を持ち込み、そこで解析を行います。ポリメラーゼ連鎖反応を用いてDNAを増幅し、反応結果を研究所に提出。するとシークエンスのテキストファイルを受け取ることができるので、生物情報科学のプログラムを使って、どんな対立遺伝子がサンプルに存在するかを明らかにします。そして、このプロジェクトのためにHagborgさんが作ったソフトウェアを使って3Dモデルで性別や目の色、生まれ、髪や肌の色、などをDNA解析で得た情報をもとに入力し、サンプルの持ち主の顔を作るというわけです。
どのくらい作品の顔が正確なのか?ということに関して、Hagborgさんは作品は完全に本人を再現しているのではなく、性別や目の色、母親の人種といった要素から考えうる顔を作り出しているだけであると語っています。これは人間の顔の違いに関する遺伝子の研究がまだ初期段階であるためですが、今後遺伝子の研究が進むにつれてより正確な顔を作ることも可能になると考えられています。
以下は展示会に置かれたサンプルが入った箱。
ソフトウェアを使って解析したDNA情報はGitHubで公開もされています。
msporny/dna · GitHub
https://github.com/msporny/dna
Stranger VisionsはHagborgさんがセラピーを受けている時に壁のヒビに挟まった1本の髪の毛を発見し、「この髪の毛は一体誰のもので、どうやったら髪の毛1本から持ち主を知ることができるのだろう?」と疑問に思ったところから始まりました。家に帰った時にHagborgさんは自分の周りに遺伝子の素材となるような物質があることに気づき、Stranger Visionsが生まれるに至ったというわけです。
なお、Hagborgさんが書いたコードはオープンソースではありませんが、友人たちには自由に使ってもらっている様子。もしソフトウェアについてよく知りたい場合は、メールにて連絡してください、とのことです。
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