取材

会社をうまく動かすために積み上げた知られざる工夫の数々が光るサイバーコネクトツー福岡本社見学ツアー


一体どのようにしてわずか数名で始動した会社が、15年以上が経過して200名近い規模にまで大きくなっていったのかという知られざる軌跡を約5万字のロングインタビューで前回は明らかにしていったわけですが、そうやって作り上げた現在の会社はどのようなものなのか?というひとつの結晶でもあるサイバーコネクトツー福岡本社内をいろいろと見学させてもらいました。

博多駅前にあるカーニープレイス博多にサイバーコネクトツー本社が入っています


サイバーコネクトツーのあるフロアへ


この通路を通って受付へ


もともとサイバーコネクトだったのが、リブートして「サイバーコネクト2」、すなわち「サイバーコネクトツー」になったということが明らかになった前回のインタビューを知っていると、このロゴ一つにもそういう思いが込められていることが理解できます。


取材開始まで待っていた会議室に貼ってあった「サイバーコネクトツー会議心得十ヶ条」一つ取ってみても、10年以上の歴史を積み重ねたからこその細かい工夫の跡がうかがえます。


当たり前に以下のことが守られている会社や組織もあるはずですが、改めて読んでみると、いろいろなことが見えてきます。

◆サイバーコネクトツー会議心得十ヶ条

一.会議は必要最低限で実施する。
 ・開く必要があるかを合理的に判断し、人数、時間を確定すること。
 ・簡単な打合せや回覧だけですませられないか確認すること。

二.事前に目的、資料を十分に確認して参加すること。
 ・的外れな意見を述べない。趣旨・目的を十分に理解したうえで発表すること。

三.開始・終了時刻を厳守、5分前には席に着くこと。
 ・遅刻参加は、反対していると思われ、全員の時間のロスになるので注意すること。

四.会議中は姿勢正しく集中すること。
 ・態度、姿勢は会議への意欲、業務への姿勢に表れますので注意すること。

五.発言は要点にまとめ、簡潔にすること。
 ・全員が理解できるように、端的にまとめること。

六.化学反応を生み出す提案をすること。
 ・業績向上に役立つ考え方やアイデアは遠慮することなく発言すること。
 ・違う意見にこそ、耳を傾けること。

七.会議の主役はリーダーではなく、参加者自身である。
 ・時間を尊重し、やむをえない所用がないかぎり、席をはずさないこと。

八.リーダーは議事進行、まとめをすること。
 ・随時要点をまとめて、全員が理解しているか確認すること。

九.会議に掛かっている時間・コストを認識すること。
 ・5人1時間の会議は、合計5時間分のコストが掛かっていることを認識すること。

十.会議のアクション項目を明確にすること。
 ・決定事項は協力して取り組み、最善をつくすこと。


ほかにも、会議室には歴代の掲載記事がスクラップされてまとめられています


そんなわけでいよいよ社内へ


仕事に関係するコミック満載のライブラリ


週刊少年ジャンプのバックナンバーも山ほどアリ


前回のインタビュー中でも出てきたワンフロア開発体制を具現化したのがここ。このようなワンフロアにまとめるまでは以下のような感じだったそうです。


今の場所に引っ越してきたのが5・6年前でですね。それまでは初めの、10人の頃から使っていたビルにいたんです。最初に小さい所を借りて、だんだん人が増えてきて、30人を越えて入らないということで2階を借りたんですよ。で、また入らないということで、3階を借りて。4階を借りて。そうしているうちに120人になったんです。3フロアに分かれてて40人・40人・40人みたいな感じで。「.hack」シリーズ作って「NARUTO-ナルト- ナルティメット」シリーズ作って、その上のチームで次のタイトルを新規開発してた時に全くコミュニケーションを取らなくなったんですよ、フロアが分かれてるから。「俺、上の『ナルティメット』チームでこういう話を先週したんだけど、なんでお前それ聞いてないの?」って3階で言っても、「いやまあ聞いてないからですねえ」って。昔はワンフロアにいたから聞こえてるんです。「それさっき社長が言ってた」みたいなことを。それがフロアが違うだけで情報が滞るんですよ。ちょっと前まで同じフロアにいて皆でコミュニケーションとってたじゃん。情報のシェアってあったぞって。なんでフロアが変わっただけでコミュニケーション取らなくなるんだよ、サボんなよ走れ―!って言って。用が無くても行けーって階段走らせたりしてたんですけど、ゲーム会社で走れ、声出せって、野球部じゃないんで!

ゲーム会社で声出せ、走れもないだろと。それはちょっと環境が悪いんだなっていうことで、いろいろと物件探して、博多で少ないんですけどワンフロア300坪とか、そういった場所を見つけて。ワンフロアにしたらすごくいいですね。


社内の開発の様子が確かに何となく見えてきます


各机に目を向けてみると、グラフィック担当の場合は照明がモニターに映り込むのでこのようなものを使っています


これはモーションのチェック中


こういうことをフロアで誰かがしていても誰も一向に変な目で見ない雰囲気が維持されていると思えばOK


これは毎月60冊以上の情報誌や漫画雑誌を定期購読して置いてある場所


ずらーり


定期購読紙の閲覧についてはこのようにして「定時内(9:00~12:00、13:00~18:00)の閲覧の禁止」「定時後(18:00以降)は、タイムカードの打刻を行って閲覧すること」、さらには「業務に必要な場合は、書棚に氏名を明記した付箋を貼付し、各自の席で読むこと」というルールが。


このルールが決まるまで何があったのかがうっすらとわかる感じ。


こっちにも雑誌がいっぱい


その近くにある自販機、よく見ると90円のものもあり、明らかに全体的に安めの設定。これは松山社長がいろいろと調べて安く仕入れられるようにした結果だそうです


雰囲気的にはコンビニとか書店の雑誌の立ち読みコーナーっぽい感じ。こういうのを設置することによって、「業界に身を置いているにもかかわらず忙しいがゆえに最新の情勢に疎くなる」という事態を防いでいる、とのこと。


同様にして各種ゲームタイトルも山のようにそろえています。


これらのゲームは社の方針である「ゲームやろうぜCC2」に則ったものとなっており、前回のインタビュー中でも以下のように答えている部分です。


弊社は各プロジェクトにゲームソフトを買っています。必要経費だということで。無駄はダメですけど。「モンスターハンター」を4本買って下さいと言われた時は「ちょっと待て」と。それ研究じゃないだろ!って。一番良くなくて、私が大嫌いなのが、アニメーターでもゲームクリエイターでもそうなんですけど、「昔に比べてゲームで遊ばなくなった」とか、「アニメを見なくなった」とか、そういうこと。私が消費者、子どもだったら、むちゃくちゃアニメが好きで、むちゃくちゃゲームが好きで、しょっちゅう映画を見てる、バカみたいな、そういう人間が作った作品と、ゲームは仕事として割り切って、他社の作品にも興味が無いし、そういうスタンスで僕は作ってますっていう人間が作ったゲームのどっちが欲しいかというと、間違いなく前者なんですよ。クリエイターはバカであって欲しいと思います。世の中には色んな会社があると思いますけど、うちは週刊少年ジャンプを読んでなかったら怒られる会社です。マンガを読んでなかったらものすごい怒りますから。私が!


次にやってきたこの部屋は音響とかに関する開発を実行している部署。


ワンフロアに全部署を基本的に収める体制といえども、さすがに音がバリバリに鳴りまくるサウンド関係だけはこのような防音の部屋が必要、とのこと。


いろいろな関係者がやってきて音を聞くため、イスの予備も多め。


例えば松山社長が来てサウンドチェックをする場合はこのようにして5.1chスピーカーなどが一番よく聞こえるこのポジションに陣取り、実際のゲーム画面をモニターに出しながら、確認していくわけです。


開発部に通じる奥の廊下にはハンガー&傘立てがずらずらと並んでおり、最初は入り口近くにあったものの、社員数がどんどん増えていくと見苦しくなってきたため、この場所にすっきりとまとめられたそうです。


その向かいにはサーバールーム


出口に通じるドアには「ご来客のお客様」に対して「ハンカチはお持ちですか?」ということで、「サイバーコネクトツーでは、ハンカチの携帯を全スタッフに徹底しております。トイレにペーパータオル等の設置は行っておりません。ご理解とご協力の程、宜しくお願い申し上げます」と書かれています。このあたりにも松山社長の方針が反映されており、こういうものの積み重ねが「会社の社風」あるいは「社内文化」になっていくのだということがよくわかります。


アニメや映画、特撮ものなどなど、これらも映像資料ライブラリの一環


「会社のライブラリにある4千本のDVDをみんな借りてデータベースでミーティングして学ぶ。だって、誰もが知ってる物を見てないと」ということで、ラインナップはかなりのもの。


「私の尊敬するアニメーターって知識欲の化け物で、貞本さんや鶴巻さんや、ガイナックスの方たちだけじゃないんですけど、ものすごい沢山の娯楽に触れているんです。見てもいないし知らないのに「あれはだめだ」とか絶対に言わないですよ。あれも見てるしこれも見てるしどれも知ってるし、食べたことあるしみたいな。ほんと知識欲の化け物みたいな人たちばっかりなんですよ。そんだけ吸収しないと生み出せない、そういう人の典型なんでしょうね。「GANTZ」って作品を描かれてる奥浩哉さんも同じことを言われてたんですけど、自分は誰も見たことのない絵を作りたいんだと、だから沢山の映画を見てきたんだと。で、一つも真似しない。そうしたら誰も見たことのないものが作れると。仰る通りだと思うんです。その為のサイバーコネクトツーのライブラリです」とロングインタビューで言い切るだけのことはあるわけです。


次は社長室へ。


ドアの前には、とあるキャラクターが「毎日の積み重ねがキサマらを弱くする!漫然と日々を過ごすなっ 四六時中ゲームクリエイターであるコトを自覚しろ 自分に足りないモノ 必要なモノを常に考えて行動せよ!!」と叫んでいる一コマが。


これが松山社長の机、奥にはさまざまなプラットフォームのゲーム機が。これで実際にテストプレイして確認するわけです。


いろいろチェック中の社長の図


社員数が50人くらいになるまでは経理・総務・人事も全部一人でしていたというだけのことはあり、鬼気迫るものがあります


次は毎週月曜日に行っている全員朝礼などに使う大会議室へ。うしろには大きな鏡があるので、このようなモーション研究にも使われています。


うつべし!うつべし!うつべし!


見学しているとそのまま誘われ、松山社長も蹴ることに。


勢いを付けて……


ずびーし!


実際にキックを繰り出す松山社長を激写したムービーは以下から。

実際にキックを繰り出すサイバーコネクトツー松山社長 - YouTube


で、これが肝心の全員集合可能な会議室部分。


ロングインタビュー中で「会社によっては全員が集まれる場所が無いっていう所も多いんですけど、弊社は毎週月曜日に、東京も福岡もテレビ会議システムに繋いだ状態で、全スタッフで会議をやっています。進捗報告を約1時間。どの部屋もテレビ会議につなげられるようにしてまいすので、東京スタジオとのコミュニケーションもバッチリです」と語っていたのがコレです。


その会議室の壁部分には「松山文庫」なるものが。


これらは松山社長が自分の家から持ってきたもので、以前は2000冊ぐらい、現在は3000冊程度。


「東京にある会社さんにポンポン博多に出張してもらうわけにいかないので、大井町にある東京スタジオに来て頂いて、テレビ会議システムを使って福岡の我々とミーティングをしています。HD画質で繋いでいるので窓の向こうにいるみたいで!今日も、ついさっきまで東京のスタッフとテレビ会議をしていたんですけど、超いいですよ。テクノロジーは日々進歩していますね」とロングインタビューで触れられていたテレビ会議のできる会議室。


こちらのもうちょっと大きな会議室も同様です


すみっこには喫煙室も。


次にやってきたのはデバッグルーム


モニターの大きさがいろいろなのは、ユーザーがどのような環境でプレイするかが分からないため、さまざまな環境でプレイテストをする必要性があるから。


にじんだりかすんだりして読めないような文字にできるだけならないようにするため、液晶画面だけでなくブラウン管もそろえている、とのこと。


さらにその奥にはトレーニングルームなるものが。入ってみると……


ゲームクリエイター志望の学生を対象としたインターンシップ用の部屋になっていました。


「福岡という土地柄、待っていてもなかなか人は育たないし、だったら育てようという考え方でやっています。求められるスキルが年々上がっていくので、なかなか新卒が合格しにくいっていうのもありますし。なので、うちには4種類のインターンシップがあって、1年を通してずっとやってますね。育てる気満々でやってますから。終わったら学校に返すんですけど、見込みのある人にはちょっと待て、と。現場でアシスタントからやって実績を積んで何カ月以内に社員を目指せ、という話をしてるんです。それで毎年うちに新卒が入社してます。結構こういう人間が強いんですよね。ゼロからたたき上げができてるんで。うち厳しいですから教育が」とロングインタビューで話していたのがコレです。


「完全体育会系ですよ、はい。手とり足とりではないですから。結構スパルタでやりますんで。ただ、うちは環境の整ってる会社、プロの現場ですから、これをチャンスと呼ばずなんと呼ぶんだと!それで結果を出せないんだったらやる気なしですから。そんな奴が作ったものは子どもたちに出せないんで」とインタビューで言っていたとおり、なかなかキビシイのだということが壁面の付箋紙からも伝わります。


求めることのレベルが高い分だけ、環境は整っています


各種書籍もこの通り


スケジュールも企画もかなり本格的


さらにこのような倉庫も。


CC2ストア」というサイバーコネクトツー公式オンラインショップができる秘密はこの倉庫の存在にあります。要するに、物販に必要なブツがこのようにして整理され、保管できる体制が整えられているから、というわけです。


物販体制のベースになったのが開発に使う機材をラベリングして整理するという部分。いろいろなものが意外なところで活きている、という仕組み。


・おまけ

なお、ナルトのとある巻の表紙をよく見ると「サイバーコネクトツー」と書いてある、とのこと。実際にロングインタビューを行い、社内をこの目で見て回った感想から言うと、こういう関係を原作者と築けているあたりが、サイバーコネクトツーのこだわりや社内文化、経営方針などの成果であるように感じられました。

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in 取材, Posted by darkhorse

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