京丹後の酒蔵「竹野酒造」で20代の若手杜氏が手がける日本酒造りを見学してきました~後編~
前編に引き続き、京都府・京丹後市の酒蔵「竹野酒造」での日本酒造りの様子を追いかけていきます。
早朝から行われるのは、日本酒になる大量の米を蒸す作業と、その米を仕込み途中の日本酒である酒母に入れたり、その酒母にかかせない材料となる米麹にしたりする作業。とてつもなく大きな釜で蒸し上げた米を数人がかりで運ぶなどかなりの重労働で、1つひとつの行程に人の手がかかっているのがよく分かるものとなっていました。
しんしんと冷えしきる朝の蔵での作業風景は以下から。ひとさけひと eq ThinkFree
http://www.yasakaturu.co.jp/
朝6時ごろから作業は始まります。弱い雨が降っていましたが、雪は溶けることなく残っています。
早朝の酒蔵は冷え切っていて、しんとした空気の中、ボイラーの音と作業の物音が響いています。
YouTube - 早朝の酒蔵
酒蔵に向かってまず目に着いたのはこのろうと。成分分析のために、現在仕込み中のもろみを少量ずつ入れて日本酒を抽出しています。
作業にいろいろと使う湯を沸かす釜がちょっと吹きこぼれてしまったので杜氏の行待さんが様子を見ています。
冷え切った蔵の中でも、この辺りはむっとした蒸気が立ちこめているので温かいです。
米を蒸すための釜の準備をする蔵人たち。手に持っているわらを束ねたもので網にはさまった米を取り除いています。金属の道具を使うと網の方が傷ついてしまうのでわらを使っているのだとか。
掃除が終わったら釜にセット。
その上に布をかぶせたら準備完了。
昨日洗米した米をこれから蒸します。
どさどさと投入。
片側に寄せて米を盛り、もう1枚布を乗せて逆サイドにも米を持っていきます。布で仕切ったのは米の精米歩合が違うためです。
米を入れ終わったら布で表面を覆います。
これで蒸す前準備は完了。
フタを閉めて、ロープでしっかりと固定します。
チューブをつないで蒸気が釜の中に入るようにしたらいよいよ蒸し始め。
蔵の外に蒸気が排出されていきます。酒蔵がもくもくと煙っているイメージを持っている人も中にはいるかもしれませんが、それは米を蒸すための蒸気だったわけです。
蒸し上がるのを待つタイミングで朝ご飯。ご飯とみそ汁に、昨晩のうたげの残り物が少し。みそも自分で仕込んだものだということです。清く正しい日本の朝食という感じ。
約60分経過したら蒸しは完了。圧倒的な量の米が炊けました。
スコップで米をよそうという衝撃的なビジュアル。これだけの量の米を移動させるにはこれくらいでないと間に合いません。
黄色い箱に入れられた米は室の前まで運ばれていきます。
黄色い箱は使う前に熱湯でしっかり消毒します。
米の水分量などを把握するために、室に入れる前に米の重さを測定。
量った後にこの大きな箱に米を移し替えて冷まします。
この朝蒸し上げた米は米麹にするほかに、酒母に投入する分も含まれています。投入する前には温度計を差し込み、ちょうどいい頃合いになったかどうか確かめます。
米を冷ますための箱を、酒母のタンクの前まで運びます。
布の端と端を持ってかかえ、タンクの中に投入します。
米を入れたら酒母とよく混ぜあわせます。
酒母を保温するために外側に白い布を巻き付けます。大きなタンクには酒母を冷やすための黒いカバーがついていますが、酵母の働きがちょうど適切な状態になる温度を一定に保つという共通の目的で使われています。
続いて、室(ムロ)での米麹作りを見せてもらうために、特別に室の中に入らせてもらいました。冷え切った蔵内部とは対照的に、この中はサウナのように温かです。
室の中は電熱ヒーターやパネルヒーターで温めていました。
布の両端を2人で持って米を大きな机の上に運び、広げて行きます。
蒸したての米はかなり熱いので、へらを使う場面も。
おにぎりのような状態の部分は手で広げます。作業の前には菌などを持ち込まないよう、蔵人は石けんで手を洗い、アルコールを吹きかけて消毒して作業にあたります。
どんどん運び入れます。
天井には窓がついていて、湿度調整ができるようになっています。
しかしこの米はかなり熱かったため、天井の窓だけでなく、普段は閉め切っている室の扉も開けられました。
米をあらかた広げ終えたら、赤外線温度計で各部分の温度を測定します。
米の温度を下げるために、布であおいで冷まします。
一通り冷ましたら下に敷いてある布を使って米を一塊に。ちなみに、この米の総重量は108キロで、平均的な夫婦が1年間に消費する米の量だそう。
塊には温度計を仕込みます。
キレイにくるんでしばらく放置。
全体の温度が均一になったかどうか確認するため再び広げていきます。
まだやや熱かったので、布で再びあおぎます。
ちょうどいい温度になったので、いよいよ種切り、つまりもやしを米に振りかける行程に入ります。空気を揺らさないように、杜氏以外の蔵人は皆部屋の隅によってじっとしています。
YouTube - 米麹を作るための「種きり」
種切り後の米。見た目ではちょっと分かりませんが、表面にもやしの粒子がついています。
これでようやく表面が終了。次は米をひっくり返して裏面に種切りをします。
あおいで米を冷まして……
再び種切り。シャラシャラともやしを振る音だけが室の中に響きます。
両面の種切りが済んだので米をまとめます。
布でくるんで……
さらにたくさんの布を上にかけて、これでようやく室の中での作業は終了。ここまでの作業を「たねきり」と言い、翌日までこのまま置いて箱に移し替え、さらに室の中で麹ができあがるまで置いておきます。
一度広げた米を一塊にするのは、全体の温度を一定にするためだそうです。
ここまでの作業が昼までに終わり、午後からは米の銘柄や量などは違うものの、前編で見ていった作業を再び行っていくそうです。献立は親子丼とみそ汁。ハードな作業はしっかりした食事で支えられています。
蔵から帰ろうとする頃にはすっかり晴れていました。冬の京丹後市はあまり晴れることがないそうなので貴重な晴れ間です。日本酒の繊細な味わいは、人の手をかけて造られていました。作業は搾りも含めて3月末まで続けられるということです。
・関連記事
平日に飲んでも翌日に響きづらい「二日酔いしないお酒」が登場するかもしれません - GIGAZINE
酒好き必見、ビールやワインやカクテルを結晶化し撮影した美麗な顕微鏡写真 - GIGAZINE
JTと大関が共同開発、米を原料にした炭酸飲料「和素材工房 米づくり」試飲レビュー - GIGAZINE
幸手市の酒店が「らき☆すた」ラベルの日本酒を販売 - GIGAZINE
「ハヤテのごとく!」マリアさん役を担当した声優を起用した萌酒「とむりえ」の第1弾「おじょう」発売 - GIGAZINE
・関連コンテンツ