サイエンス

平日に飲んでも翌日に響きづらい「二日酔いしないお酒」が登場するかもしれません


体内でアルコールを分解する際には、まずお酒に含まれるエタノール酸化されてアセトアルデヒドになり、アセトアルデヒドがさらに酸化されて酢酸になり、最終的に水と二酸化炭素に分解されます。

この代謝の過程で必要な酸素は呼吸や皮膚を通じて得られるのですが、お酒に溶解した酸素の濃度を高めることによって、体内でのアルコールの分解が促進されることが最新の研究により明らかになりました。近い将来、酸素濃度を高め「二日酔いしにくい」「翌日に残らない」といった特長を売りにしたお酒が登場するかもしれません。


詳細は以下から。Hangover-free booze? Increasing dissolved oxygen concentrations in alcohol may reduce negative side effects

韓国・忠南大学校薬学部のKwang-il Kwon教授らによる研究で、酸素濃度を高めたアルコール飲料は、そうでないアルコール飲料に比べ、体内での分解に要する時間が短いというこという実験結果が出ました。研究の詳細はAlcoholism: Clinical and Experimental Research誌2010年5月号に発表されます。

「体内に摂取されたエタノールは、酸化されてアセトアルデヒドになり、さらに酸化されて水と二酸化炭素になります」とKwang-il Kwon教授。「この酸化反応は主として肝臓で起き、Microsomal Ethanol Oxidizing System(MEOS:ミクロソームエタノール酸化系)・アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)・アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)などの酵素を触媒とします。ADH・ALDH・MEOSによるエタノール酸化は酸素を必要とし、酸素摂取量が多い方が酸化速度も高まります」

Kwon教授と同じく忠南大学校薬学部で毒物学を専門とするHye Gwang Jeong教授は、「これまでに複数の研究により、酸素濃度が高い水は、マウスの生存能力・疲労からの回復力・無酸素耐性・エネルギー貯蔵力を高めることがわかっています。しかし、溶解酸素濃度がアルコールの代謝に与える影響はこれまで明らかにされたことはなく、今回の研究は、健康な人間におけるアルコールの薬物動態と溶解酸素濃度のかかわりを調べた初めてのものです」と語っています。

Kwon教授らは49人の健康な成人(男性30名・女性19名、平均年齢27.2歳)を対象として3セットの実験を行いました。実験1では度数19.5%のアルコール飲料240mlで溶解酸素濃度8ppmと20ppmの場合を比較、実験2では度数19.5%のアルコール飲料360mlで酸素濃度8ppmと20pppmを比較、実験3では19.5%のアルコール飲料360mlで酸素濃度8ppmと25ppmを比較しました。

その結果、アルコール飲料の溶解酸素濃度を高めることによりアルコールの代謝を促進できることが示されました。具体的には、血中アルコール濃度が0.000%になるまでの時間は実験1(度数19.5%・240ml)において酸素濃度20ppmのアルコール飲料の方が8ppmの飲料より20分短く(237.7分と257.7分)、実験2(19.5%・360ml)では血中アルコール濃度が0.000%になるまでの時間は酸素濃度20ppmで342.1分、8ppmで365.4分、実験3(19.5%・360ml)では25ppmで334.5分、8ppmで361.6分という結果だったとのことです。

アルコール飲料の酸素濃度を高めることは臨床医学的にも、日常生活の上でも、重要な変化をもたらすだろうとKwon教授は期待しています。「酸素を強化したアルコール飲料は人々が早く酔いから覚めることを可能にし、アルコールの効果(気分良く酔う効果)を損ねることなく、アセトアルデヒドの作用(いわゆる二日酔い)を低減させます。さらに、短い時間で血中アルコール濃度を低下させることにより、アルコールに関係する事故も減少させることができるかもしれません」

Kwon教授とJeong教授によると、高酸素濃度を売りにしたアルコール飲料はすでに韓国で販売されているそうですが、これまで科学的根拠はなかったそうです。「こういった高酸素の飲料は開封前は室温で10~20日間、開封後は室温で70分ほど高い溶解酸素濃度を保つことができるようです」とKwon教授は語っています。

高濃度酸素水などは日本でも販売されていますが、酸素濃度を高めた酒類が発売される日も近いかもしれません。しかし出荷後20日間しか酸素濃度が保たれないというと販路が限られそうなので、お店で注ぐ際にビールに酸素を溶かし込むことができるビアサーバーなどが発明されると人気が出るのではないでしょうか。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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