従来の限界を超えた大容量HDDへつながる「マイクロ波アシスト磁気記録方式」の基本技術が開発される
ハイビジョン動画など、大容量コンテンツの普及にともない、多くのパソコンユーザーがHDDの大容量化を望むところではありますが、現行の垂直磁気記録方式を採用したHDDでは大容量化に限界があるため、現在あらゆる企業がさらなる大容量化を実現する記録方式を模索しています。
そんな中、新たに「マイクロ波アシスト磁気記録方式」と呼ばれる記録方式を用いた大容量HDDに向けた基本技術が開発されたことが発表されました。
詳細は以下から。
次世代超高密度HDDに向けたマイクロ波アシスト記録の基本技術を開発
磁気ヘッドに搭載可能なスピントルク素子を用いた磁気情報の書き換えを確認
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構および日立製作所の発表によると、従来の磁気記録方式の限界を超え、HDDの記録密度を現行の1平方インチあたり最大550ギガビットから1テラビット(1000ギガビット)以上へと飛躍的に伸ばす方式として期待されている「マイクロ波アシスト磁気記録方式(マイクロ波アシスト記録)」の基本技術を開発し、原理を実験的に確認したそうです。
「マイクロ波アシスト記録」は、磁性体の磁化が特定の周波数に対して一種の共鳴を起こす「磁気共鳴現象」を用いて記録媒体の磁化を局所的に反転しやすくし、磁気情報を記録するという方式で、記録にあたって「マイクロ波帯」という高周波の磁界を発生させる必要がありましたが、磁界を発生させるための「発振素子」が実際にHDDのヘッド部分に搭載された例は無かったとのこと。
そして今回、ヘッド部分に搭載できる「スピントルク発振素子」を開発し、この素子を用いることで、記録媒体上に磁気情報を記録できることを実験的に確認したそうです。なお、コンピューターを用いたシミュレーションでは、マイクロ波アシスト記録の原理を用いることで、1平方インチあたり3テラビットの記録密度が実現可能なことが確認されているため、「マイクロ波アシスト記録」を用いたHDDが実現すれば、容量は現行のHDDの最大6倍近くになるということになります。
ちなみに日立は大容量HDDを実現する次世代記録方式の候補として、「熱アシスト磁気記録方式」と呼ばれる記録方式も研究しており、こちらは1平方インチあたりの記録容量を最大4テラビットにまで引き上げることが可能であると見込まれています。
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