アート

100年前のレンズと21世紀のカメラ「Canon EOS 5D MarkII」で撮影された味わい深い写真


ニューヨーク在住のカメラマンTimur Civan氏は、自身の新しいプロジェクトで撮影した作品に「ヴィンテージ感」を出したいと考え、4×5の大判フィルムで撮影することを思いつきました。しかし、予算の問題をクリアできず、大判フィルムでの撮影は断念せざるを得なくなったとのこと。

数週間後、プロジェクト自体をあきらめかけていたCivan氏のもとへ、ロシア人のレンズ技師である友人から興奮気味の電話がかかってきました。彼が営むカメラ店で雑多なパーツを放り込んであった箱の中に、少なくとも1908年以前のものと推定される35mmレンズを発見したというのです。


試行錯誤の末Civan氏愛用のキヤノン EOS 5D Mark IIにマウントされた1世紀前のレンズで撮影された写真や映像は、独特の古びたような雰囲気のある実に味わい深い作品となっています。

写真は以下から。T.STOPS: 102 year old lens on 5D mkII

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知らせを聞いて友人の営むカメラ店「Panorama Camera Center」へ駆けつけたCivan氏を待ち受けていたのは、真ちゅう製の枠の中に小さなガラスがはまった、古い顕微鏡の接眼部のような奇妙な物体。ほかのレンズの中に閉じ込められて隠れていたというこの小さなパーツは、1908年製もしくはそれ以前のものと推定されるウォレンサックのレンズ「35mm Wollensak Cine-Velostigmat F5」、サイレント映画の撮影用に使われていたような手回しカメラ用のレンズで、1世紀以上眠っていたことから予想されるほどホコリやカビはひどくなく、壊れてもいなかったとのこと。

ゴクリとつばを飲むCivan氏に、友人は強いロシアなまりで「僕ならこれをEFレンズマウントにフィットできるよ」とにやりと笑い、Civan氏が手に汗握って見守るなか、6時間後にマウント作業は完了したそうです。


かくして1世紀前のレンズと21世紀のデジタル一眼で撮影された写真がこちら。


撮影してみるまでは、どんな性格のレンズなのか、どんな写真が撮れるのか、まったく予想がつかなかったそうです。


何はともあれ、と街へ出て撮影するCivan氏の構える奇妙なカメラに、マンハッタンを歩く写真好きはみな足を止め、「そのレンズは一体なんなんだ?」と声をかけてきたとか。


ビニール袋をかぶって雨を避ける女性も、映画のワンシーンのように絵になってしまいます。


写真はすべて、色調補正などをまったくかけていない、撮ったままの状態です。


シャープなフォーカスと豊かなコントラスト、重いヴィネット(周囲が暗くなる効果)が出る写真もあれば、露出オーバーで白くとんで、ソフトフォーカスな写真に仕上がったものもあります。


特徴的なヴィネットは、35mmフィルム用のレンズを、本来画面に収まっていたはずの範囲より大きなフルフレームのデジタルカメラにマウントさせているため、中心に明るい「ホットスポット」ができ、周辺の光量が低くなっています。中心に合わせた露出だと四隅が露光不足になり、周辺に合わせた露出だと真ん中が白くとぶというわけ。


狙いどおりの写真を撮ろうと細心の注意をはらって露出を調整しても、レンズフレアが起きると内部で反射した光により設定はすべて水の泡になってしまいます。しかし、フレアの起き方がまたこのレンズの面白いところで、信号やヘッドライト、人のおでこに反射した光で意図せぬフレアが起きることもあれば、太陽を直接狙ってもフレアが起きないこともあるとか。光の強さより入射角度に強く左右されるのだろうとCivan氏は推測しています。


こちらは郊外へ撮影旅行へ出たときの、車窓からの風景のようです。


絞りによっても露光は強く左右されます。開放状態だとフレアが強く起きるのは当然ですが、絞る(暗くする)ごとに効果は劇的に変化し、F5あたりではピントが甘くほとんどコントラストもない写真になるのに対し、F8あたりまで絞ると突然別のレンズに変わったのように、かみそりのように鋭いフォーカスとリッチなコントラストの、ディテールに富んだ鮮やかな写真が撮れるそうです。F11やF16になるとまたぼんやりとしたソフトフォーカスな写真になるのですが、今度はヴィネットが強く出て、これもまた独特の味わいに仕上がるとのこと。


露出の問題を棚に上げても、非常に小さなレンズのためピントを合わせるのは至難の技で、さまざまな条件を考慮し、撮影状況に合わせて細かく設定を変える必要があります。当然ながら「シャッターチャンスを逃さない」タイプの撮影には向いていないと言え、使いこなすのはプロのカメラマンでもなかなか難しいようですが、それだけにこのレンズでしか撮れない作品が撮れ、使いがいもあるレンズのようです。


このレンズの金銭的価値は不明なのですが、Civan氏は映像作品のプロジェクトのため、ロシア人の友人の厚意で貸してもらっているそうです。そのプロジェクトのための試し撮りとして撮影された映像を以下から見ることができます。

102 year old lens on 5D mkII - Video Footage by Timur Civan on Vimeo

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in アート, Posted by darkhorse_log

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