インタビュー

6月26日公開「宇宙ショーへようこそ」の舛成孝二監督と脚本・倉田英之さんインタビュー、「映画館へ行き始めたころのワクワク気分で観られる」映画を作るまで


6月26日に公開を控えたアニメ映画「宇宙ショーへようこそ」で監督を務めた舛成孝二さんと、脚本を務めた倉田英之さんにインタビューを行うことができました。舛成さんと倉田さんは、プロデューサーの落越友則さんを含めた3人で「ベサメムーチョ」というクリエイターユニットのようなものを作っており、本作品を手がける以前には文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を受賞した「かみちゅ!」を制作しています。

「宇宙ショーへようこそ」は、その「かみちゅ!」が終わってからすぐに取りかかった作品で、本作からベサメムーチョにキャラクターデザインの石浜真史さんが加わって4人となったそうです。舛成監督も倉田さんも初の映画ということで作り方に戸惑いながらもいいフィルムを完成させたとのこと。今回は作品をどう作ってきたのかを中心に、いろいろと楽しい脱線トークなどを踏まえつついろいろなお話をうかがってきました。

質問に答えてくれた舛成監督(左)と倉田さん(右・手のみ)。


舛成孝二監督は2001年のOVA「R.O.D -READ OR DIE-」で高い評価を受け、2003年に同作の続編「R.O.D -THE TV-」を全力で制作。その後、「何か仕事をしなければ」ということで倉田さんや落越さんとともに「ベサメムーチョ」を結成し、「かみちゅ!」を監督しました。「宇宙ショーへようこそ」は、舛成監督が「かみちゅ!」直後から取りかかっていた作品であり、初の劇場版監督作品でもあります。

倉田英之さんは「R.O.D -READ OR DIE-」で舛成監督とコンビを組んだほか、アニメのシリーズ構成・脚本家、さらに作家として活躍。現在は「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」でシリーズ構成を担当しているのをはじめ、超多忙な毎日を送っているとのこと。

インタビューは阿佐ヶ谷のA-1 Picturesで行われました。


GIGAZINE(以下、G):
「R.O.D」が終わって「かみちゅ!」を始めるときは、倉田さん、舛成さん、落越さんの3人がそれぞれ企画を持ち寄って、その中から舛成さんの企画が通ったそうですが、「宇宙ショーへようこそ」はどのような形でこの作品に決まったんですか?

舛成孝二監督(以下、舛成):
「かみちゅ!」が一段落したので、次の仕事決めなければ!というわけでですね。わりとナチュラルに、メシを食いながら話していて「次、どうしよう。TVかOVAか…」という流れで、タイミング的に劇場でできそうみたいなところがあったので、「劇場にする?」みたいな感じです。

脚本・倉田英之さん(以下、倉田):
「かみちゅ!」が文化庁の賞(文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞)を取ったので、今ならできるだろう!みたいな。

舛成:
「R.O.D」で疲弊しきっていたのでリハビリで「かみちゅ!」を作り、そこで一区切り付いたので、全員劇場をしたことがなかったのでチャレンジしてみようかって話ですね。

倉田:
本当、大変だった……。「海が広いのを知った!」みたいな感じですよ。

舛成:
やってみたら本当にすごかったですね。「TVの長さの話を4本作ればいいんだろう?」みたいな考えがあって、あるいはOVAみたいなノリでいけるかな、と思ったんですが……うん、どう作ってみればいいか全然わからないわけですよ。

倉田:
完全に手探りでやるしかなかった。

舛成:
いろいろな映画とかを観てあんな風にしよう、こんな風にしようって最初は言ってたんですが、後半へ行くと段々口数が少なくなってきて……(笑)

G:
「かみちゅ!」から本作まで4年の間がありますが、この4年間はどういった作業を行っていたのでしょうか?

舛成:
作業自体はもっと前から入っているのですけど、作画だけなら3年ぐらいです。

倉田:
地球編とか月編とかとにかく一区切りつくたびに回収して、割と「撮って出し」みたいな、本当にTVアニメ作るのと変わらないようなノリでした。決定稿出る時ってどうでしたっけ?

舛成:
設定とかボードにしてもらってたね。

倉田:
1コ終わるごとに次と言うよりも、できた分から順に見ながら転がしていって、最終的に4年かかったという感じです。結局、どうやって映画って作ってるのかわからずじまいですね。

4年間の苦労が伝わってくるような資料の数々。


舛成:
そうそう、「クレヨンしんちゃん」とか一体どうやって作ってるんだろう?って話ですよ。「劇場版NARUTO」とかはわかるんですよね(注:舛成監督は2006年公開の「劇場版 NARUTO-ナルト- 大興奮!みかづき島のアニマル騒動だってばよ」に絵コンテで参加)。あれはもっとライトな作り方で、絵コンテは5人とかで回してるはずなんです。そこへいくとたぶん宮崎監督のスタジオジブリ作品とか、Production I.G作品とかは絵コンテ一人でやってるわけですよね。なのによくあんな時間で上がるなと思いました。

倉田:
コンテ一人で描いたってのもすごいなと思いました。映画って、テレビシリーズの1本目作る時と比べると、よく似てるんですよ。

舛成:
テレビアニメの第1話というのは何もないところから決めて作るので、とにかく時間がかかるわけなんですよ。あとはさらにバリエーションを作るための2話・3話になるとちょっと短縮できて、そこからあとの話については絵コンテは早くできるんですよ。この話数のここみたいにしておいてとか、そういう指示が出せる。でもそのもとになる第1話、それを作るまでが時間かかる。

倉田:
あと発見と言えば、(舛成さんが)一人で全部描くから悩まずに済むかな~と思ったら、ずっと悩んでましたね。「今月こそはできるはずだ!」というのを毎月毎月繰り返すわけです(笑)

舛成:
描けない時には描けないですよ!

G:
そういうときはどうするんですか?

舛成:
うーんうーんと机の前で一人で考え続けるか、自転車乗って気晴らしにどこかへ行くかですね。

舛成監督を悩ませた絵コンテ。


こんなにも分厚い。


G:
監督のTwitterでのつぶやきを拝見していると、けっこう映画をご覧になっているようなのですが、あれは制作が終わったからですか?

舛成:
そうですね、制作中は映画は1本も見ていなかったですね。見るとやっぱり怖いですよね、影響されるのが。だから気分転換に何か他の作品を見るというのはしないです。

倉田:
気分転換でネットを見るってのもダメですね。特にTwitterだと舛成さんが「今日は文学少女見た」「今日はトライガン見た」とか書いてるから、もう、ね(笑)

舛成:
Twitterと言えば、否定的なことは正直には書きにくいですよね。「宇宙ショーへようこそ」を作り終わってからやっといろいろな作品を見たのだけど、その作品について好き放題は言いにくい……そう、評論家にだけは絶対になりたくないんです。何かを見て評論するっていうのを個人的にはしたくないので、その作品のいいところを見て、いいところを言いたいと思ってるので。

倉田:
やっぱり本音はつぶやけませんね。ちょろっと書いただけで、Twitterとかだとガーッと広がりますよね、その書いたことが。だから僕はネットは見るオンリーで、自分で情報発信はしないんです。仕事で文章を書いているのに、ブログとか絶対無理ですね。ブログ書く時間があったら本を読みたいとか、そっちの方に気を取られます。それこそ3年とか4年とかぶっ通しで仕事して時間かかって、それが終わったあとにようやく「今は充電期間だ~」と思いながらネットをちょろちょろ見るという感じです。あとネットしてると時間のロスが大きいと感じてしまいますね。

舛成:
そうそう、全然関係ないんだけど、ネットと言えば、新宿バルト9で「アリス・イン・ワンダーランド」見ようと思ってネットで予約したんだけど、メールが来たのを見たら間違って横浜ブルク13(バルト9と同系列の劇場)のを購入してしまっていて……仕方ないので電車代2000円ぐらい払って横浜まで行きました。うん、ネットのせいで時間のロスが大きくなった(笑)

倉田:
いやー、本当にもったいない時間の使い方をしてしまいますよねー。「宇宙ショー」のときもそうだったんですけど、最初は手探りでやったから時間がかかったんですよね?次からはもうちょっとうまく回りますよね?

舛成:
どうかな~。今回は劇場公開アニメとしては本当にMAX的な時間のかけ方をしました。作業自体はどこも止まっていないくて、動いているのに、なぜか時間がたくさんかかってる。今回は次回以降いかにスマートにできるかというのを学んだんだよね!とみんなで言ってますね。

倉田:
本当にアニプレックスも勉強代たくさん使いましたね~(笑)

G:
次の作品は、もう何か考えているのでしょうか?

舛成:
次は……まだ何もないです(笑)

倉田:
今の間に新作のネタを考えておけばいいのに!と思うので、今はちょうどそういう意味ではひどい時期ですね。僕は次は「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」ですね。

G:
関係者もいろいろTwitterとかやってますが、この流れはいかがですか?

倉田:
もうみんな一斉にネットをやめてくれればいいのにと思います(笑)。ちょうどGWにモデムが壊れてネットに接続できなくなって、仕方なくネット無しで過ごしたんですけど、ネットがないだけでもうこんなに心静かなものかと思ってびっくりしました。

舛成:
うん、ネットで自分の作品の反応とかは見ちゃいけないね!

倉田:
見てはいけないというか……。まったく見ないか、さもなくば見ても心が傷つかないぐらいの覚悟を持つか、もうどっちかですね。

舛成:
なので、普段は見ないですねー。

倉田:
僕は波があって、ネットを見る時と全然見ない時とがあります。時間に余裕がない時にネットを見て、そこで僕をけなすようなことが書かれているとへこむので、最近は見ていないですね。何をやってもどこを見ても「R.O.Dの続きを書け!」と言われるので(笑)

舛成:
そうそう、僕らも普通の人間なので、けなされると傷つくんですよ。

G:
そういう意味では、時代の先端の事情も知っているし理解しているなという印象を持つのですが、作品にもそのあたりのことは反映されるのでしょうか?

倉田:
いや、逆に現代の流行の最先端がわからないからこそ、こういうフィルムになるのですよね。もう心も身体もオッサンですから「デュラララ!!」とかは絶対に描けませんよ。自分たちにできることを細々とやってくだけです。

G:
昔の雰囲気を出す感じを意識しているそうですが、どういった感じで意識しているのでしょうか?

倉田:
「かみちゅ!」は心の中の中学生、「宇宙ショー」は小学生ですからね。きれいなところを出したいわけですよ!

舛成:
でも現実としては、例えばうちの姪っ子は過疎化して全校生徒5人ぐらいの所に通っていたんですけど、そんなところでもいじめがあったって言ってましたね。

倉田:
実際は全校生徒5名でも裏サイトとかあるかもしれませんよ……とまぁ、そういう現実はあるこということを踏まえつつ、きれいなところを出そうと上手に4年かけてまとめていった感じですね。やっぱり映画館に行ってお金払って観るからには、気持ちよく映画を観たいし、観てもらいたいなぁと思っているので。

舛成:
本作品では涙を流すシーンがたくさんあるのですけど、ネガティブなところでの涙はないです。基本的に前向きなところで涙が出る。悲しくて出る涙とは種類の違う涙が出るんです。

倉田:
そうそう、イメージボードのタイトルにあった「発動編」というのを見た時には、イデオン的に「コレは全員死ぬ!!」と思いましたね(笑)。あーあーやっちまったー!みたいな。考えてみれば、「宇宙ショーへようこそ」というのも、そういう「イデオン 発動編」的なものをイメージしても割と合ってるような気はするんですよ。本当はこの映画のタイトル、最初は「ザ☆宇宙ショー!」だったんですが、色々あってタイトルが変更になったんです。たぶん、最初のタイトルだとあまり内容がわからないからですかね。


倉田さんが驚いたという美術設定・イメージボードの「発動編」(真ん中のもの)。他2冊を見るとわかるように、特にイデオンとは関係ありません。


舛成:
発動編っていう名前を付けたのは、特にイデオンとは関係なく、僕の気持ち的なものを表現しただけです(笑)。タイトルが「ザ☆宇宙ショー!」のままだったら、ちょうど公開時期の近い「ヒーローショー」と被ってましたね。


倉田:
もういいじゃないですか、誰と被ろうが。結局ジブリですよ、ジブリと公開時期がかぶったんですよ(笑)


舛成:
Twitterで「SWっぽいね」と言われてるんだけど、SWってスターウォーズなのか、サマーウォーズなのかわかんないんだよね……というか、宇宙を舞台にしたら何でもスターウォーズっぽいとか言われそうだ(笑)

倉田:
宇宙が出てくる映画はほとんどそうなりますよ!

G:
そういえば、舛成監督は男が主人公だとやる気にならないそうですが……

舛成:
いえいえ、仕事ならやりますよ!そういえば、最近は「男の娘」が流行ってますよね、ああいうのならもう全然おっけーです。

舛成監督に、仕事中の様子を再現してもらいました。ここから生き生きとした(主に)女の子の姿が生み出されているんですね。


倉田:
男が主人公だと「ジョジョ」(OVA第3話の絵コンテ・演出を担当)ぐらいかな、やったのは。そう、この監督はこの間はなぜか「NARUTO-ナルト-疾風伝」のEDを担当していて「男が主人公なのに珍しいな~」と思って見てみたら、EDはヒナタばっかり出てた(笑)

舛成:
ヒナタ、好きだしね。

倉田:
これはこうするしかないよね!みたいないつもの感じですよ!R.O.Dとぜんぜん変わらない(笑)

舛成:
いやいや、男の子もやればできますよ、うん、やればできる子!でも、女の子の方がやっていて面白いかな。男って、基本的に妄想するじゃないですか。で、妄想した時に女の子を妄想した方が夢が広がるじゃないですか。でも男を妄想したらどこかで壁にぶつかるしかない。

倉田:
男だったら下半身に向かうしかないからね。下ネタになっちゃう。

舛成:
「宇宙ショー」は下ネタがないですね、そういえば。

G:
4年前のインタビューで「みんな女の子の新しい魅力にそれぞれが気付いてもいいんじゃないかな」と倉田さんは言ってましたが、その後、視聴者は新しい魅力に目覚めたと思いますか?

倉田:
属性で分類したりとか、嗜好がひとつの方向にはめられるのがイヤだなと思ったんです。本当に普段見過ごしているような仕草とか、クセとか、そういうのに気づいてしまって、相手に対する見方が変わる……みたいなのが恋の始まりじゃないのかなと僕は思っています。

G:
今の視聴者はだんだん目覚めてきている?

倉田:
そうですね。特に「男の娘」とかすごいですよね!もうちょっと、なんというか、そこまでホームランじゃなくて、バントでもいいんじゃないかなと思います。まんま見た目が美少女の「男の娘」ではなく。そう考えると世代って、ジェネレーションってすごいなと思います。それだったら僕はまだまだ普通の嗜好でいいかな、みたいなところになりますね。

G:
ところで、お二人ともアニメは色々ご覧になっているかと思いますが、ドラマもけっこうご覧になるんですか?

倉田:
見ますね。BSで放送している「CSI」とか録画しているんですけど、もうどれがどれだけわかんないです(笑)。「CSI」と「NY」と「マイアミ」と3本あって、それぞれ字幕版と吹き替え版と再放送と、1日に3回もするからもうどれがどれだかわかんないんですよ!

舛成:
僕はオンエア中のは見ないので、今はTSUTAYA DISCASで見てますね。テレビはつけてても同じようなバラエティ番組ばかりなので、「クローズアップ現代」と「ガイアの夜明け」みたいなものばっかり見てます。

倉田:
作り手の人たちが気づいたと思うんですよ。実は、映画とテレビとを比べると予算ではあんまり差がないわけです。でも映画のDVDは売れないテレビよりもそこそこ売れるんですよ。それに4年前、みんな気づいたんです。

舛成:
僕らが映画を作り始めたその1年後に同じように「テレビ向けじゃなくて劇場向けを作ろう」ってのが増えたんですよ。それがちょうど今頃になって続々と完成して、今、上映されているんですよね。だからここ最近、アニメの劇場版が続々と出てきているわけです。

倉田:
例えば「トライガン」とか、ちょうどいい具合に作り手側の世代的にずらっと並んだなと思います。あと、お客さんが映画館に来るようになってますね。「ワンピース」とか「銀魂」、「ハルヒ」、「なのは」というようにして、映画館へ行くのがスタイルとしてできたというのはありますね。劇場向けの映画と比べると、テレビのアニメは切り捨てられるの早いですよね。

舛成:
テレビはたぶん「けいおん!!」がひとりでがんばってるのかな。

G:
「いつもスタートを切るのは早い」と以前おっしゃってましたが、今回も企画は割と早く動いていたのですか?

舛成:
ですね。

倉田:
まさか、我々がビリになるとは(笑)

舛成:
「サマーウォーズ」は自分たちと一緒の時期から動いていたんですけどねー。

倉田:
ちょうど作っているときに「ゲド戦記」が夏公開だったので、なんと僕らが「宇宙ショー」1本作る間に、ジブリは「ゲド戦記」と「崖の上のポニョ」の2本作っていて、しかも今年、もう1本(「借りぐらしのアリエッティ」)来て、すごいですよね。あと押井さんは「スカイ・クロラ」作りましたし、みんなすごい働いているじゃないですか!

舛成:
こんなにかかるとは思わなかった……次回はもっとスピードアップしてできたらいいなーと。

倉田:
3ヶ月で作れますかね?3ヶ月で(笑)

G:
今回、大人の声優に子どもを演じてもらうのではなく、子役を選んだ理由は?

舛成:
劇場版は1回モノなので、できるだけひっかかりがない状態で本物にしていきたいなと思ったからです。声優でも演技がうまい人はうまいんだけど、やっぱり大人の人が子どもを演じる時に「子どもを演じる」というフィルタを通っていて、それが気になりました。今回は主人公が5人、実際には6人いて、子どもをきちんと演じられるプロの声優を6人も集められるのか?というのもありました。なので、できれば子どもを使いたいという考えが最初からありました。芝居さえできればオッケーだったので、音響監督らと相談して、大丈夫じゃないかな?と思いながらオーディションをしてみたら、もうみんなすごく芝居がうまかったのでびっくりしました。150人ぐらい来たらしいのですけど、こどもたちは「そんなにいたっけ?」と言ってましたね。たぶん100人ぐらいかな?

倉田:
多ければ多いほどすごそうだから、もう1万人とか言っちゃえばいいよ(笑)

舛成:
いやいや(笑)。とにかくみんなうまくて、本当にレベルが高かったです。

台本は3冊にわたりました。


倉田:
あと、声優さんと子どもたちの演技との差が気になるかなと思っていたのですけど、子どもだけどプロなんだ!と思い知りました。ちゃんとシナリオも覚えてきてましたし、オーディションのときに「他のキャラもちょっとやってくれますか?」と言っても、ちゃんと自分の役以外の台詞も読んできていて、その場ですぐに対応ができるんですよ。事前に読んできました!みたいな感じで。しかも他のキャラもちゃんとできていて、すごいな、と。ただかわいいだけのガキが来るんじゃないかと思っていたら全然違って、中には「え!これで12歳?!」とかいうスタイルのいい女の子とかもいました。もうね、違う生き物みたいだった。僕らとは違う、そう、「アバター」みたいだった(笑)

舛成:
田舎にいたら一生会えないようなのと会えましたね。すごい経験でした。それと、子役を使うなら、できればアフレコ前に合宿させたいと考えていたんです。本当の意味で仲良くさせたいな、と。

倉田:
この合宿させようってアイデアは「ウォーターボーイズ」のメイキング見て思いついたの?

舛成:
いや、見てないけど……子役がたくさん出るドラマか何かで、合宿をやったっていうのを聞いたんですよ。だから、あー、そういうのいいなーと。

倉田:
でも、実際に合宿やろうとしてみたら「この1週間しか取れません、ここの日付を超えたら学校始まるので」と(笑)。子役はみんな学校行きながらですからそんなに長い合宿はできないんですよね。

舛成:
でも合宿しなくても全然平気でした。アフレコの終わりの頃にはみんな仲良くなってて。

倉田:
最後は泣いてましたね。

舛成:
1週間か10日でアフレコが終わって、さらにその1ヶ月後にこっちの抜けチェックとかでもう1回とらせてくださいって言ったら、インク役の子が身長伸びてたのにはびっくりしました。えー!1ヶ月でー!って。

倉田:
マイクとかも、端から身長順に5本とか6本並んでいてそこに子どもたちが並んでいたんですけど、その端っこだった子が身長で追い抜いているんですよ。そういう意味では濃度がすごい濃かったですね。

舛成:
子どもたちはオンリーマイクだったんです。

倉田:
そういうところの助け合いとか見ていると面白かったですね。音響関係の人は大変だったと思います。でも演技とかもばしっと決めてくるし、リテイクしても同じ演技が何回もできるし、ああ本当に役者なんだと。

舛成:
周囲もガッチリ芝居ができる声優さんを選んで呼んだのですけど、子どもたちの芝居を見て「すごいね!すごいね!」とみんな言うんですよ。

倉田:
みんな子供なんで、脇は温厚な声優さんでお願いしていたんですけど、熱心さに感化されたという方もいました。でも、そうですね、ものすごいプロを見せつけた人もいましたね。誰かというと斎藤千和。もうまったく容赦なく演技して帰って行きました。かわいいウサギに食らいつくライオン!みたいな感じで帰っていきました(笑)

舛成:
千和が終わったあとに子役がみんな「すごいねー!」って言いながら拍手してましたよ。外にいた子役のお母さんも「あの方はどなたですか?」と聞いてくるぐらい。プロってこういうことよ!みたいな感じでしたね。うん、10歳にガチケンカかよ!みたいな(笑)

倉田:
中尾隆聖さんが録り終わって、最後に「バイバイキーン!」と言うと子どもたちがすごい喜んでました。いやー、やっぱり大御所は違うな~と思いましたね。僕らのことは、子どもたちわかんないもんなー。

舛成:
でも「かみちゅ!」見ましたとともよちゃん(夏紀役)に言われましたよ。ケンジよかったです!って。

倉田:
あの年齢でケンジの良さがわかるとは……!あと子役はパワーがありましたね。ずっと走り回ってましたし。

舛成:
録音は10日近く押さえてやりましたが、普通は劇場版だと2日間で録音するので、映画としては長いですね。ヌキやトバシで撮ることはなくて、順番に、順繰りにできました。

G:
以前、「かみちゅ!」が到達点だ、みたいなことをおっしゃっていましたが……。

倉田:
「かみちゅ!」は自分の中のきれいなモノを全部吐き出しましたね。「宇宙ショー」はそのさらに前、言うならば映画館に行きはじめたぐらいの、小学生の時の年に1回か2回ぐらいの映画館に行く楽しみみたいなのを入れられたかなと。違う筋肉を使った感じですね。これでまたネタがなくなりましたね(笑)。そうそう、中学生ぐらいの頃にイデオンの接触編・発動編を劇場でやってて、弟と一緒に観に行ったんですけど、劇場の入り口でたまたま学校の友達がいて「ロッキー3観ようぜ!」と誘ってきたので、僕だけロッキー3を観に行ったんですよね。で、あとで弟を見ると複雑そうな顔をして帰ってきているわけ。確かにあの年代であのときロッキー3とイデオン観るのは人生の分岐点だねと思います。

舛成:
僕ならイデオンだね!この業界入るきっかけがイデオンだから。

倉田:
でもロッキー3観てからイデオンでよかったかなと思います。逆だったらきっとロッキー3はすごくつまらなく感じてた(笑)。そういう意味だと宇宙ショーはイデオンではなくてロッキーだね。

舛成:
だね!

倉田:
でも純粋なロッキー3ではないな。でも結果的にはみんなで楽しめるよね。

舛成:
うん、家族全員で楽しめるね。野球のボールで言うなら、ストレートの握り方を知らないんだけど、こういうようにひねらなきゃストレートだと思ってるぐらいのストレート(笑)

倉田:
大正野球娘」の1話か2話で投げてたストレートみたいな感じ。結果的には、いつものモノが4年かかって劇場になってますよと。

G:
では、最後に一言お願いします。

倉田:
僕の作業的には2年半前に終わっているので、劇場にかかっているのを見てようやく実感がわくのかなと思っています。僕が子供の頃「『劇場版999』が観られるんだ!」という気分で映画館にワクワクして行ったのと同じように、楽しみにして来てくれれば嬉しいです。

舛成:
ずっとつい数ヶ月前まで作業して、みんなを巻き込んで大変な思いで作っているので、その分だけいいものにはなっています。映画ではいい映像しか見えなくて、僕らの苦しみは全然見えないので、楽しみにして欲しいです。観て、心を暖かくして欲しいなと思います。

G:
ありがとうございました。

宇宙ショーへようこそ 2010.6.26 ROADSHOW
http://www.uchushow.net/



◆スタッフ
監督:舛成孝二
脚本:倉田英之
キャラクターデザイン・作画監督:石浜真史
場面設計:竹内志保
メカニック作画監督:渡辺浩二
プロダクションデザイン:okama、神宮司訓之、竹内志保、渡辺浩二
サブキャラクターデザイン:藪野浩二、森崎貞
演出:畑博之
色彩設計:歌川律子
美術監督:小倉一男
CG監督:那須信司
撮影監督:尾崎隆晴
編集:後藤正浩
音楽:池頼広
音響監督:菊田浩巳
録音調整:名倉靖
音響効果:倉橋裕宗
原作:ベサムーチョ
制作:A-1 Pictures
製作:「宇宙ショーへようこそ」製作委員会
配給:アニプレックス

◆キャスト
小山夏紀:黒沢ともよ
鈴木周:生月歩花
佐藤清:鵜澤正太郎
西村倫子:松元環季
原田康二:吉永拓斗
ポチ・リックマン:藤原啓治
ネッポ:中尾隆聖
マリー:五十嵐麗
ボグナー:小野坂昌也
ヘストン:竹田雅則
ロビー:宮本充
インク:飯野茉優
ルビーン:江川央生
ヤブー:斎藤千和
タロー:伊藤和晃
ハナコ:日髙のり子
ゴーバ:銀河万丈
トニー:飛田展男

◆主題歌
スーザン・ボイル「フー・アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ビー(Who I Was Born To Be)」

©A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会

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in インタビュー,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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