鳥海浩輔&水樹奈々が出演する『バジリスク~甲賀忍法帖~』BD-BOX特典映像「愛念懐古」収録密着レポート
『バジリスク~甲賀忍法帖~』は、せがわまさきの同名漫画をもとにして制作され、2005年に放送されたテレビアニメ。原作はさらに遡ると忍者小説の大家・山田風太郎が昭和33年に発表した『甲賀忍法帖』。想像を絶するとんでもない忍術を駆使するキャラクターたちが所狭しと暴れまくる、現代のチームバトル物、異能力物の元祖といわれる傑作にして、悲恋の要素を軸に据えた「忍者版ロミオとジュリエット」といえる名作です。アニメ版は、ドラマ・アクションともにこの「二つの原作」の魅力を最大限に活かす形で映像化されています
この『バジリスク~甲賀忍法帖~』がBD-BOX化され、2010年2月24日に発売されるわけですが、映像特典として、木﨑文智監督、シリーズ構成/脚本のむとうやすゆきさん、主人公・弦之介役の鳥海浩輔さん、ヒロイン・朧役の水樹奈々さんがバジリスクへの熱い思いを語る座談会、名づけて”愛念懐古”が収録されることになっており、今回はその収録風景に立ち会うことができました。作品自体はすでに放送から4年が経過していますが、キャストやスタッフの中では今でもホットな作品として残っているようで、当時の収録秘話やエピソードなどがまるで収録直後のようにすらすら出てくる様子には驚きました。
詳細は以下から。
◆都内某所・某月某日:『バジリスク~甲賀忍法帖~』BD-BOX映像特典”愛念懐古”の収録現場にて
出演者はシリーズ構成/脚本を担当したむとうやすゆきさん、監督の木﨑文智さん、朧役の水樹奈々さん、弦之介役の鳥海浩輔さん。第1巻に収録されている映像特典では「バトルアクション」についての興味深い談義がかわされています。
水樹:
毎回誰かが死んでいくので、いろいろ印象的なシーンはありますけど、やっぱりクライマックスの天膳戦が印象深いですね。そこに至るまでのシーンが、全体を通して印象的です。争いを好まない朧が自ら動いたところでもあるので。
第22話から第23話にかけて、物語でも最大の盛り上がりを見せた甲賀弦之介と薬師寺天膳のすさまじい剣劇シーン。弦之介は目をふさがれ、必殺の“瞳術”が使えない。
鳥海:
第1話の夜叉丸のワイヤーアクションなんか、ここまで動かして大丈夫?と思いました。
夜叉丸の必殺武器“黒縄”(こくじょう)と糸の壮絶な動きはもちろん、風待将監の不気味な走りが1コマ撮影の”フルアニメーション”で表現された、駿府城での御前試合シーン。
木﨑:
確かに、当時「枚数を使いすぎじゃないか」と言われたりしました。でも、静かなドラマでもあるので、トータルでは2000枚以内に収まった話数もあって、意外と使っていないんですよ。
アニメ『バジリスク~甲賀忍法帖~』の直接の原作となっているのは、せがわまさき氏の漫画版。これ以上のビジュアルは考えられないというほどのキャラクター造形と緊迫感満点のコミカライズに、スタッフ、キャストともに強烈なインパクトを受けたようで、いかに原作の持ち味を活かしていくかというのが命題になっていたようですが、どのようにしてこの命題をクリアしていったのかがこの特典映像で披露されています。第22話からの天膳戦から終局に向けてはシナリオ、コンテともにより気持ちが乗って感情が高ぶっていたためそうで、あがりたての第23話絵コンテを木﨑さんから受け取った時むとうさんは、いつもは急行を利用するところを各駅停車に乗ってじっくり絵コンテを読みながら帰り、車中でボロ泣きだったとのこと。木﨑監督も気持ちがかなり作品にリンクしていたそうです。
ハードな話が続くところもあるため、一服の清涼剤として雨夜陣五郎がコメディリリーフのような形になっていて、現場では陣五郎役の魚建さん共々マスコットキャラクターとして愛されていたとか。
第2巻は「絵作り」について。実際にロケハンに行ってみてイメージが膨らんだというシーンもやはり多いそうで、冒頭、駿府城で戦う風待将監と夜叉丸のバトルで瓦が吹っ飛ぶ様子などは、木﨑監督らが姫路城をロケハンした成果の一つ。むとうさんは当時開催されていた『愛・地球博』を観た足で訪れた名古屋城で天守を見上げ、別の城郭ではあるものの「将監と夜叉丸ってすごいところで戦っていたんだな」と実感。
むとうさんの頭に実写で浮かんだ屋根上のバトル。
『ヒメムラサキ』(作品のエンディングテーマ)のデモバージョンを聴きながら半蔵門を眺めていると「絶対、あそこに人別帖がある!」という気持ちが膨らみ、原作には存在しない豊臣秀吉が登場するシーンや大阪夏の陣の合戦シーンまで書いてしまったというむとうさん。木﨑監督には「無理(笑)」と削られたそうですが、この話を聞いた鳥海さんは「映像特典で入れちゃえばいいんじゃないですか?」、水樹さんも「観たいですね!」と乗り気なコメントが飛び出しました。ちなみに、木﨑監督とむとうさんはこの作品がそれぞれ初監督・初シリーズ構成というコンビで、「当時はほんと、いっぱいいっぱいでした」(木﨑監督)、「若い力で一気に行っちゃったってところもありますね」(むとうさん)と、若さが大きな原動力だったと語りました。
第3巻は「音楽」についての話。水樹さんは朧役のほか、エンディングテーマ2曲の歌唱と作詞を担当。その秘話を下記のように語っています。
水樹:
『バジリスク』を最初に読んだときに、絶対自分で詞を書きたいと思ったんです。作品の時代などを考えると言い回しも大事になってくるので、音楽とうまく融合させるような形になるように、原作、漫画、脚本だけでなく、本屋へ行って古き良き日本語を自分で調べて、いろんな本を読みあさって、そこから詞を書きました。陰陽座さんのOPが『バジリスク』愛に溢れていたので、それに負けないよう”水樹奈々なりの愛”を全力で表現しました。『ヒメムラサキ』は、1話の川の最後のシーンを見せていただいた時に、その情景に沿って言葉が生まれてきたんです。また、詞の中で“雨夜の月”や“胡蝶の夢”など、キャラクターの名前や技をちょっとずつ入れてみたりして…、キャラクターとのリンクも考えました。さらに、予告のナレーションの中で歌詞を抜粋してもらったりして…
『ヒメムラサキ』の歌詞「情熱(あい)の河はさえさえと」のイメージ元になった、第1話ラストシーン。
むとう:
“ゆずれぬ未来”とかですよね。『バジリスク』の予告コメント執筆は作詞に限りなく近い感覚だったと思うのですが、「これしかない」という言葉を楽曲の中の詞からいくつかいただいてリンクさせています。また、役者さんたちとお話できる時間も決して多くはなかったので、『水樹さんがやってくれていることを、ちゃんと受け止めていますよ』というサインを込めたという意味合いもありました。収録後に飲みに行ったときに、鳥海さんと話したことを、後の話数にさりげなく盛り込んでみたり、打てば響く人がたくさんいた作品なので、いろいろなことが掛け算というか、キャッチボールになっていたと思います。
物語を彩る劇伴音楽を担当したのは作曲家・中川孝さん。週に一本ずつ作るTVアニメだというのに、毎回映像に合わせてリアルタイムで新曲を生み出してゆくという驚異の音楽制作プロセスの裏話や、それゆえ楽曲数が膨大になり、サウンドトラックCDが3枚リリースされたにもかかわらず全てを収録しきれていないこと、全スコアの中で木﨑監督が一番気に入っている楽曲とは何なのか?などなど、特典映像にて確認してみて下さい。
第4巻のテーマは「宿命を背負った忍者」でキャラクターのお話。『バジリスク~甲賀忍法帖~』には魅力的なキャラクターが多く、水樹さんも「……一人は選べない!」と語る中、どうやってこの魅力的なキャラクターたちの設定を膨らませていったのか、オリジナル要素をいかに生み出していったのかが語られました。
アニメでもちょっと異色のエピソードとなった第16話のお見合い。むとうさんはこのお見合い話が、アニメにおけるキャラクター掘り下げのキーポイントの一つになっていますと語っています。
第5巻は、作品の根底に流れる「愛」、そして描かれた「悲恋」についての話。『バジリスク』では、弦之介と朧はもちろん、甲賀弾正と伊賀のお幻、夜叉丸と蛍火といった男女、そして兄妹ながら如月左衛門とお胡夷など、様々なキャラクターの深い絆を描いたエピソードが数多く存在します。特に、弦之介と朧については、演じたお二人から下記のようなお話が披露されています。
鳥海:
原作を読んでいたので、先を知っているというのはありましたが、こう盛り上がるからこうしようみたいに逆算してはやりたくなかったですね。その時のピュアな思いを大事に演じていました。
水樹:
朧は駆け引きなどができない、目の前にあることを必死にクリアしていこうとするキャラクターだったので、常に全力でいこうと思っていました。その先に何が待っているかは考えないで、毎回リセットして…。「絶対に最後は弦之介様と幸せになるんだ!!」ということだけを信じて演じていました。
第6巻(最終巻)では、これらのトークを経て、それぞれが感じる『バジリスク』の魅力が語られました。以前、DVDが出たときにもコメンタリー的な映像特典を収録している鳥海さんは、同じ作品について今回の収録で何をしゃべれるだろうかと懸念していたそうですが、実際は話題がとめどなく続いたことに驚いていました。そして、もし今の自分たちが演じたとしたら、当時よりテクニカルに上手く演じてしまうかもしれないけれど「そうではないものがあの時の芝居にはある」「あのタイミングで『バジリスク』という作品に出逢えたのが良かった」と異口同音におっしゃっていました。
4人全員が“バジリスクは自分にとって転機となった作品”とお話されているように、それぞれに本作終了後、めざましい活躍を見せています。この作品がスタッフ、キャストへ大きな影響を与えた作品だったことが伝わってきました。
そんな4人が一堂に会して収録された75分の熱い映像特典収録を振り返って、主役を演じたお二人にあらためてインタビューしてみました。
ーー久々に木﨑監督、むとうさんたちとお話をされて、いかがでしたか?
鳥海:
収録していた頃も、お酒を一緒に飲んだりして熱い方たちだと思っていたので、話していて楽しかったです。
水樹:
同じくです。毎週、終わったあとの飲み会でお二人のアツさを感じました。あんなにキャストの飲み会参加率が高い現場はないですよね。作品や曲についての想いなどを熱く語れて良かったです。想いが監督に伝わっていたのも嬉しかったし、その返事を私たちに届けてくれていたというのも嬉しかったですね。
ーーBD-BOXの発売が2/24です、楽しみにしているファンの人へ一言。
鳥海:
ただでさえすごい映像、すごい音楽だった『バジリスク~甲賀忍法帖~』を、さらに高いクオリティでお届けできるということで、一度見たという人もまたご覧になっていただければと思います。
水樹:
本編もですが、特典映像を観て「あのシーンはこうだったんだ」という秘話も楽しめ、より深く『バジリスク~甲賀忍法帖~』の世界に入れると思います。これから10年、20年経っても色褪せない作品だと思うので、それをハイクオリティな色褪せない映像で楽しんでもらえればと思います。
「バジリスク~甲賀忍法帖~ Blu-ray BOX」は完全予約限定生産。収録時間は本編が約550分、映像特典として木﨑文智監督、シリーズ構成/脚本のむとうやすゆきさん、甲賀弦之介役の鳥海浩輔さん、朧役の水樹奈々さんが作品への熱い想いを語る「愛念懐古」が75分。収納BOXイラストはキャラクターデザイン/総作画監督の千葉道徳さんによる完全新規描き下ろしで、封入特典は氷川竜介氏による木﨑文智監督、むとうやすゆきさん、千葉道徳さんのインタビューを収録した解説書。希望小売価格は4万7250円(税込)となっています。
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