アルツハイマー病が輸血によって「伝染」するリスクはあるのか?

アルツハイマー病は認知症の原因の多くを占める神経変性疾患であり、年齢や遺伝、生活習慣などがリスク要因として認識されています。ところが、医学誌のThe Lancetに掲載された論文では、輸血によってアルツハイマー病が「伝染」する可能性について指摘されています。
Risk of transmission of amyloid β pathology via transfused blood products - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(26)00767-1/abstract
Can we make blood transfusions safer by testing for proteins linked to strokes and Alzheimer’s? | UCL News
https://www.ucl.ac.uk/news/2026/aug/can-we-make-blood-transfusions-safer-testing-proteins-linked-strokes-and-alzheimers
Can Alzheimer's Spread Through Blood Transfusions? Here's What We Know. : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/can-alzheimers-spread-through-blood-transfusions-heres-what-we-know
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのプリオン病研究所所長であるジョン・コリンジ氏らが発表した新たな論文では、アルツハイマー病を引き起こすとされるアミロイドβタンパク質の医学的処置を通じた伝染について、さまざまな証拠を検討しています。
そのひとつが、かつて成長が遅い子どもに投与されていた、死体の脳下垂体から抽出した成長ホルモン製剤です。1980年代には、成長ホルモン製剤に混入した異常タンパク質(プリオン)が原因で希少な神経変性疾患であるクロイツフェルト・ヤコブ病を発症するケースが確認されたことから、死体由来の成長ホルモン製剤は禁止されました。
2015年に発表された研究では、これらの成長ホルモン製剤によるクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった人の脳に、アミロイドβタンパク質が蓄積していることが報告されました。これは、アミロイドβタンパク質が医療処置を通じて人から人へ伝染する可能性を示唆する初の証拠だったとのこと。
そして2016年には、死体由来の硬膜移植を受けてクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった人の脳や血管から、アミロイドβタンパク質が沈着したプラークが発見されました。調査対象となった人々の年齢は28~63歳と比較的若く、プラークが作られるには早いと考えられる年齢です。
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2024年にコリンジ氏らが発表した論文は、幼少期に亡くなった人の脳下垂体から抽出した成長ホルモン製剤の投与を受け、数十年後にアルツハイマー病を発症した5人の患者について研究したものです。これらの患者がアルツハイマー病を発症した年齢は38~55歳と非常に若く、アミロイドβタンパク質が薬剤を通じて伝染した可能性が示唆されています。
さらにデンマークとスウェーデンで行われた2023年の大規模調査では、後に複数回の脳出血を起こしたドナーから輸血を受けた患者は、自身も脳出血を起こすリスクが高いことがわかりました。脳出血は脳アミロイド血管症(CAA)という病気の特徴的な症状であり、CAAはアルツハイマー病と同じくアミロイドβタンパク質に関連しています。
この研究結果についてコリンジ氏らは、「まだCAAに発展していないアミロイドβタンパク質の初期段階」がドナーの血液中に含まれており、輸血の際に患者へ伝達された可能性があると主張しています。とはいえ、「輸血によってアミロイドβタンパク質が伝染した」という明確な証拠はない点に注意が必要です。

なお、2024年に発表されたイギリス感染血液調査報告書では、イギリスにおける輸血を通じたHIVやC型肝炎の感染は、事前の予防によって大部分が回避可能であったと結論付けられています。この調査報告書では、献血された血液中の白血球を迅速かつ予防的に除去することで、クロイツフェルト・ヤコブ病のリスクを低減できたことも報告されています。
コリンジ氏は「感染血液調査報告書は、患者の安全に関する決定を下す前に絶対的な確実性を待つことの危険性を警告する事例です。また、アミロイドβタンパク質の伝達リスクについてオープンかつ透明性のある情報公開を行うことが、患者に対する潜在的なリスクを事前に軽減するために重要だと考えています」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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