健康的な食事をしているADHDの青少年は集中力の問題が少ないとの研究結果

注意欠如多動症(ADHD)は不注意や衝動性を特徴とする発達障害であり、治療には行動管理に役立つ薬物が用いられることが多いほか、日常生活の円滑化に役立つ生活習慣の改善策がアドバイスされることもあります。オーストラリアの10代の若者を対象にした研究で、より健康的な食事をとるADHDの若者は集中力の問題が少ないことが示されました。
Diet quality, nutrient adequacy, and symptom associations in ADHD: A case-control study of Australian adolescents - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S3051156926000122
Better diets are linked to sharper focus in teens with attention disorders
https://www.psypost.org/better-diets-are-linked-to-sharper-focus-in-teens-with-attention-disorders/
近年は食生活や栄養が脳に与える影響についての注目が集まっており、特定の栄養素の不足が行動上の症状を悪化させる可能性を示唆する証拠もあるとのこと。そこで、オーストラリアのサンシャインコースト大学の研究チームは、適切な栄養摂取が不可欠な10代の子どもを対象に、食生活がADHDの症状に及ぼす影響を調査しました。
研究には13~19歳の青少年39人が参加し、このうち18人はADHDの診断を受けていました。研究チームは青少年とその両親から詳細な健康情報と人口統計情報を収集し、4日間にわたる食事記録データも収集しました。
被験者の青少年は平日の3日間と週末の1日にかけて、標準的な計量カップとスプーンを使って食べたものと飲んだものをすべて記録しました。研究チームは専用のソフトウェアを使って青少年が食べたものを分析し、摂取したビタミン・ミネラル・脂肪の正確な量を測定したとのこと。
研究チームは青少年の栄養データをオーストラリアの国家食事ガイドラインと比較し、食習慣が地中海式ダイエットにどれだけ近いのかに基づいてスコアを算出しました。地中海式ダイエットとは、野菜・果物・ナッツ類・魚・オリーブオイルなどを中心とした食生活であり、健康にいいことが知られています。
そして青少年は認知能力を測定するため、コンピューターを使った視覚テストを受けました。21分間のテストでは、青少年は画面上の特定の画像に迅速かつ正確に反応することが求められ、注意の持続時間や反応時間、衝動制御能力などが測定されたとのこと。また、青少年とその保護者は集中力や多動性に関連する行動についての標準的な質問にも回答しました。

データを分析したところ、ADHDの診断を受けていた青少年はそうでない対照群と比較して、不注意や衝動性といった項目で高いスコアを獲得しました。また、研究チームが食習慣を調べたところ、10代の若者たちは両グループとも比較的不健康な食事をとっていることが判明。多くの青少年は飽和脂肪酸・ナトリウム・糖分の推奨摂取量を日常的に超えており、食物繊維・カルシウム・長鎖オメガ3脂肪酸を十分に摂取していませんでした。
両グループの総栄養摂取量を比較したところ統計的に有意な差はみられず、ADHDの診断を受けた青少年はそうでない青少年とほぼ同じ食事をとっていました。唯一の違いは、ADHDを持つ青少年がキャンディーや甘いお菓子をより頻繁に摂取している点でした。
また、年齢によって食習慣には明確な傾向があり、対照群の青少年は年齢が上がるにつれて食生活がわずかに改善されていった一方、ADHDの青少年は年齢が上がるにつれて食生活が悪化する傾向がみられました。
研究チームはこうした年齢による食生活の違いは、10代の若者がより多くのお金と自由を得るにつれて、食生活における自立度が高まるためだと指摘。ADHDのある青少年はより衝動的で報酬を求める行動を示すことがあり、親の監視が弱まったことにより、加工食品や甘いものを選びやすくなった可能性があるとのこと。

そして、食生活と視覚タスクのパフォーマンスについて調べたところ、ADHDの診断を受けたものの地中海式ダイエットに近い食事をとっていた青少年は、集中力や多動性に関する問題が少なかったことがわかりました。これらの青少年は視覚タスクでより良い成績を収め、より速い処理速度や安定した反応時間を示したとのことです。
研究チームは視覚テストの成績向上に関連するいくつかの栄養素も特定しています。まず、青少年は脳の発達に不可欠であるビタミンB12の摂取量が多いほど、テストの反応時間が著しく速くなりました。ビタミンB12は肉・乳製品・卵といった動物性食品に豊富な栄養素です。
また、植物油や加工食品に多く含まれるオメガ6脂肪酸と比べて、魚や種子などに含まれるオメガ3脂肪酸の摂取量が多いほど、注意力と衝動制御能力が向上することも示されました。オメガ3脂肪酸には脳細胞膜の形成を助け、炎症を軽減する働きがあります。
ADHDを持つ青少年の症状プロファイルに着目したところ、注意欠陥のみに悩む青少年よりも注意欠陥と多動性を併せ持つ混合型の青少年の方が、1日の栄養必要量をより多く満たしていました。なお、ADHDの治療薬の服用状況は、全体的な食習慣に大きな変化をもたらさなかったとのことです。
今回の研究は39人という比較的少ないサンプルを対象にしたものであり、「不健康な食生活がADHDの症状を悪化させる」「ADHDが不健康な食生活を引き起こす」といった因果関係を証明することもできません。今後の研究ではより多くの被験者を数年間追跡調査して、血液検査なども組み合わせることで、食事が脳に与える影響をより正確に知ることができると期待されています。
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in サイエンス, 食, Posted by log1h_ik
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