食品や飲料はますます甘くなっている、特に飲料から摂取する人工甘味料はわずか十数年で36%も増加


多くの人々は甘いお菓子やドリンクを好んで飲食していますが、近年は砂糖の過剰摂取による健康問題が懸念されています。そこでオーストラリア・ディーキン大学の研究チームが、2007年~2019年に販売された飲食物に含まれる砂糖や人工甘味料の量を調べたところ、「世界中で販売される食品や飲料はますます甘くなっている」ことが明らかになりました。

Global trends in added sugars and non-nutritive sweetener use in the packaged food supply: drivers and implications for public health | Public Health Nutrition | Cambridge Core
https://doi.org/10.1017/S1368980022001598

Food and drinks are getting sweeter. Even if it's not all sugar, it's bad for our health
https://theconversation.com/food-and-drinks-are-getting-sweeter-even-if-its-not-all-sugar-its-bad-for-our-health-187605

食糧供給が不安定な時代に生きていた昔の人間にとって、甘みは「多くのカロリーが含まれており毒がない」ことを意味するシグナルとして機能しており、栄養補給や無毒性といった理由から人間は甘い物を好むようになったといわれています。しかし、現代では甘い飲食物はとても簡単かつ安価に入手可能で、砂糖の過剰摂取による健康への悪影響が問題視されています。推奨される1日分の砂糖摂取量は男性で小さじ9杯未満、女性で小さじ6杯未満となっていますが、多くの人々がこの推奨摂取量を上回っているのが現状です。

そこで近年では、政府が砂糖に税金をかける「砂糖税」や「不健康なお菓子の広告を禁止する」といった政策で介入したり、食品業界が砂糖を低カロリーまたはノンカロリーのnon-nutritive sweetener(NNS/非栄養性甘味料)に置き換えたりする動きが強まっています。これらの動きについて、ディーキン大学の博士課程に在籍するシェリー・ラッセル氏らの研究チームは、「世界中で販売されている食品に含まれる『甘み』はどれほど増加しているのか?」を調べる研究を行いました。


研究チームは、国際的な市場調査会社のユーロモニター・インターナショナルが持つ2007年~2019年の市場販売データを使用し、包装食品と飲料に含まれる砂糖・人工甘味料の添加量を調べました。

分析の結果、飲料による1人当たりの人工甘味料の摂取量は2007年~2019年にかけて36%も増加し、包装食品からの砂糖摂取量も9%増加していることが判明しました。飲料に含まれる砂糖の量は高所得国家では22%減少したものの、中所得国家では13~40%増加しており、食品業界が「高所得国家ではより健康を重視した飲料を販売し、中所得国家ではより砂糖の多い飲料を販売する」という戦略を使い分けていることもわかっています。


また、砂糖の過剰摂取を防ぐために政府が教育キャンペーン・砂糖税・広告制限といった政策介入を行った地域では、飲料に含まれる人工甘味料が有意に増加していることも判明。人工甘味料は確かにカロリーをほとんど含まないものの、人工甘味料の摂取が2型糖尿病や心臓病と関連しているという研究結果や、人工甘味料が腸内細菌叢を乱す可能性があるという研究結果も報告されていることから、研究チームは砂糖の代替として人工甘味料に頼ることにもリスクがあると主張しています。

加えて、人工甘味料によって甘さが増した飲食物を摂取することで味覚に影響が及び、より甘い物を好むようになってしまう可能性もあるとのこと。この影響は、特に味覚の好みを発達させている途上にある子どもにおいて大きいとみられています。さらに、特定の人工甘味料は環境汚染物質となることや、人工甘味料を含む超加工食品はエネルギー・水・包装材料などの資源を大量に消費することも研究チームは指摘しました。


研究チームは、「公衆衛生の栄養改善のために政策を作る場合、意図しない結果を考慮することが重要です。特定の栄養素に注目するのではなく、文化的重要性・加工度・環境への影響など、食品の幅広い側面を考慮した政策を提唱することにはメリットがあります。そのような政策は、栄養価が高く加工度の低い食品を促進するべきです」と述べました

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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