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右翼候補からの募金メールをスパムとしてマークしてしまうGmailのスパムフィルターをめぐるGoogleと圧力団体の知られざる攻防


Googleが展開するメールサービス「Gmail」では、迷惑メールや不審なメールを自動的に判断して「迷惑メール」のラベルを付与し、通常の受信フォルダとは別のフォルダに振り分けられるようになっています。しかし、このフィルターにアメリカ共和党が発信する資金調達メールが破棄されてしまい意図した人にメールが届いていないとして、議員らが激しくGoogleに抗議しています。

The GOP went to war against Google over spam — and may win - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/politics/2022/07/29/republican-fundraising-google-spam/

近年、電子メールやテキストで行われる政治資金調達活動の量は爆発的に増加しており、アメリカ人は毎日のようにキャンペーンメッセージを受け取っているとのこと。直近の選挙では、ドナルド・トランプ前大統領の戦略家であるゲイリー・コビー氏が率いる共和党の資金調達組織が小額寄付のための電子メール勧誘を強化。トランプ氏の政治活動委員会は1日に10通以上のメールを送信することもあるとのことですが、その多くは寄付金が宣伝された通りに使われない可能性について細かい字で記載されているなど、透明性に欠けているとも指摘されています。


資金調達のために有権者にキャンペーンメールを発信するという政党の試みは長年継続して行われていますが、共和党の主要な寄付処理ポータルサイトであるWinRedが提出した書類によると、同党のオンライン募金はここ数ヶ月減少しており、2022年第2四半期は2022年第1四半期に比べて約11%減少しているとのこと。

ノースカロライナ州立大学が行った(PDFファイル)調査によると、Gmailでは右派候補の電子メールの77%がスパムに送られたのに対し、左派候補の電子メールでは10%だったとのこと。対照的にOutlookとYahooは、左派候補の電子メールをスパムとして認定する傾向にありました。

しかし、Googleはこの研究に異議を唱え、サンプル数が少なく古いデータが使用され、大量にメールを送信する際にどの候補者がどのようにツールを使用したかを考慮に入れていないと述べまています。Googleは「我々は政治的所属に基づいて電子メールをフィルタリングすることはありません」「ユーザーの入力を含むさまざまな要素を取り入れた人工知能に基づくフィルタリング機能で、ユーザーの受信箱に届くスパム、フィッシング、マルウェアの99.9%以上をブロックできます」と宣伝しました。


Googleのスパムフィルターが党の資金繰りに影響を与えたかは定かではありませんが、共和党はTwitterでの情報発信やGoogleの最高経営責任者であるサンダー・ピチャイ氏との非公開の話し合いなど、Googleに対する圧力キャンペーンを繰り広げています。

コビー氏は「選挙運動の電子メールを受け取るよう登録した有権者は、購読を中止するか電子メールをスパムとしてマークしない限り、100%受け取れるべきである」と主張。しかしGmailではそうはいかず、ユーザーがスパムとしてマークせずとも疑わしいメールは自動的にスパムに振り分けられてしまうのが現状です。

そのため共和党のデビー・レスコ議員らは2022年6月16日に「Political Bias in Algorithm Sorting (BIAS) Emails Act(政治的バイアス電子メール法案)」を提出。ビッグ・テックがアルゴリズムを使用してメールをフィルタリングすることは検閲の一種であるとし、ユーザーが自らメールをスパムと認定しない限り、メールサービスが政治キャンペーンのメールやキャンペーン委員会からのメールをフィルタリングすることを禁止しようとしています。これに応えるかのように、Googleは連邦選挙管理委員会に対し、キャンペーンメールをスパム検出から除外する試験プログラムを承認するよう要請しました。

この対応に、民主党のキャンペーンでコンサルティングを行ったことのあるメール配信の専門家、ブレット・シェンカー氏は「恥ずかしさを覚えた」と主張。「非常に効果的なスパムフィルターを守り、共和党に立ち向かう代わりに、Googleは黙認しているわけです」とシェンカー氏。しかし、Googleの取り組みに詳しい関係者は「この試験プログラムは完全に共和党の苦情に対応したものではなく、大量送信者にとっての選択肢を試すという長年の取り組みに基づくものです。たとえ連邦選挙管理委員会の承認を受けたとしても、このプログラムがうまく機能しなければ、6カ月以上継続することはないでしょう」と語っているとのことです。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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