AI

労働人口が減る中国で「AI搭載の人型ロボット」を働かせる動きが加速している


少子高齢化によって労働年齢人口が減少する中、中国ではAIを搭載した人型ロボットを工場やホテル・物流・小売などの現場で働かせる動きが進んでいます。大手経済紙のFinancial Timesは、中国政府や企業の間で「できるだけ多くの作業に体を持つAIを早く導入する必要がある」という認識が広がっていると報じています。

Robot nation: China’s bid to beat its demographic decline | Financial Times
https://www.ft.com/content/c8731833-10ca-4a12-bfe4-8ebb2584ec68


Moolenaar, Obernolte, McClellan Introduce Legislation to Ban Dangerous Chinese Robots | Select Committee on the CCP
https://chinaselectcommittee.house.gov/media/press-releases/moolenaar-obernolte-mcclellan-introduce-legislation-to-ban-dangerous-chinese-robots


Lutnick privately warned top executives of possible action against imported Chinese robots - POLITICO
https://www.politico.com/news/2026/06/23/lutnick-china-robots-commerce-00972576


China humanoid robot forecast doubles to 50,000
https://thenextweb.com/news/china-humanoid-robot-forecast-morgan-stanley-50000


中国の15歳~64歳の労働年齢人口は2010年代半ばに約10億人でピークを迎え、国連の推計では2100年までに約3億人へ減少する見通し。Financial Timesによると、中国では人型ロボットやAIを搭載したロボットが将来的な労働力不足を補う手段として位置づけられています。

中国政府や企業が重視しているのが、AIを現実世界で動く機械の体に組み込む「エンボディドAI(体を持つAI)」です。エンボディドAIはチャットAIのように画面上で答えるAIではなく、物理的な体を持つAIを指します。中国政府は製造・物流・小売・医療などの分野でエンボディドAIの導入を促しており、実際に中国は2025年に世界の他の国々を合わせたよりも多くの産業用ロボットを導入し、人型ロボットの多くも中国企業が製造しているとのこと。


具体的なロボット導入先の1つが工場です。中国中部・湖南省長沙のトラック工場では車体パネルのプレスや塗装などの工程をロボットが担っており、企業はさらに最終組み立てのような人間の手作業が多く残る工程にも人型ロボットを入れたいと考えているとFinancial Timesは伝えています。

金融大手のモルガン・スタンレーは中国における2026年の人型ロボット出荷予測について、当初の1万4000台から2万8000台へ引き上げた後、6月にはさらに5万台へ引き上げました。モルガン・スタンレーは中国の人型ロボット市場について、2026年に20億ドル(約3100億円)、2030年には150億ドル(約2兆3000億円)規模になると見込んでいるとのこと。この予測に対してテクノロジーメディアのThe Next Webは、「短期間で予測が大きく引き上げられているものの、需要が長く続くかどうかは別問題」だと指摘しています。


また、あらゆる作業をすぐに人間から人型ロボットへ置き換えられるというわけではありません。AIロボット企業「AI² Robotics」の創業者兼CEOであるエリック・グオ氏は、「人型ロボットは簡単すぎる作業にも難しすぎる作業にも向きません」と説明しています。単純な反復作業は従来型の産業用ロボットの方が効率的で、家庭のように予測不能な環境では人型ロボットが安定して働くのはまだ難しいとグオ氏はみています。

そのためFinancial Timesは人型ロボットが導入される場面として、「単純作業より複雑だが、家庭ほど予測不能ではない作業が期待されている」と整理しています。具体例として挙げられているのは精密なネジ締め・接着剤の塗布・オーダーメイド衣服の製作など。こうした作業では人間用に作られた工具や作業環境をそのまま使える点が、人型ロボットの利点になる可能性があります。

人型ロボットが複雑な動きをこなす例として、宇宙・技術関連の話題を発信するXアカウントのSpace and Technologyは、Unitree G1ロボットで動作するAIシステム「Humanoid-GPT」のデモ動画を投稿しています。


さらにサービス業でもロボットの導入は進んでおり、中国のホテルチェーンである華住酒店集団(Huazhu Group)はセルフチェックイン端末や荷物運搬ロボット・食事配達ロボット・一部の清掃ロボットを導入。これにより100室規模のホテルを約10人で運営できる水準まで人員を減らしています。

ロボットの導入が進む一方で、Financial Timesは「人手不足を補う」ことと「人間の仕事を置き換える」ことが表裏一体になっていると指摘しています。中国では若者の失業やギグワーカーの増加が問題になっており、AIやロボットによる自動化が急速に進めば、労働力不足が深刻化する前に多くの人が安定した仕事を失う恐れがあるとのこと。

中国のEC大手「JD.com」の創業者兼会長である劉強東氏は、「将来はロボットが配送を担うようになり、70万人の配送員は基本的に必要なくなります」と述べています。一方でJD.comは配送員をロボットの修理や保守などの別職種へ移すため、学校と提携して再訓練する取り組みも進めているそうです。


ロボットやAIが生み出す経済的な成果は賃金として労働者に分配されるのではなく、ロボットを所有する企業や資本へ集中する可能性もあります。中国の研究者の間ではロボットへの課税・個人所得税の軽減・労働者の再訓練・社会保障の見直しなどについて議論する必要があるとの見方が出ているとのこと。

アメリカでは、中国製のロボットを安全保障上のリスクと見る動きもあります。アメリカ下院の対中国政策を扱う特別委員会、通称「中国特別委員会」は2026年6月3日、中国などで製造されたロボットを審査し、国家安全保障上のリスクがあると判断された製品の輸入を禁じる「Guarding the U.S. Against Adversarial Robotics Dominance Act(GUARD Act)」を提出しました。中国特別委員会は「Unitreeなどの中国のロボット企業がアメリカの安全保障や重要インフラ、労働者に脅威を与える」と主張しています。

さらに同委員会の公式XアカウントはAmazonでUnitreeのロボットが販売されていることにも懸念を示し、「Unitreeは最近、中国軍関連企業に指定されており、その製品はアメリカの国家安全保障に対する脅威です。それにもかかわらず、AmazonはアメリカでUnitreeのロボットを販売しています。この脅威を食い止め、アメリカのロボット産業を支援するには、同委員会のジョン・モーレナー委員長が提出したGUARD Actが必要です」と投稿しています。


政治・政策メディアのPoliticoによると、アメリカのハワード・ルトニック商務長官が非公開の会合で「中国政府の補助を受けたロボットの輸入について商務省が調査しており、見直し後に措置を取る可能性があります」と述べたとのこと。また、ルトニック氏は「中国政府の補助を受けたロボットがアメリカを攻撃するような事態は望んでいません。これは迫り来る軍拡競争です」とも発言し、ロボット製造をアメリカ国内で進める必要があるという認識を示しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
AIとロボット技術を駆使した人間の労働者をほとんど必要としない「ダークファクトリー」が中国の労働市場で賃金の低下と雇用機会の喪失を引き起こしている - GIGAZINE

中国がアメリカを上回ってロボット産業で優位性を確保できる要因とは? - GIGAZINE

ロボットが現実世界のタスクを実行できるオープンソースAIモデル「RynnBrain」をAlibabaのDAMOアカデミーが発表 - GIGAZINE

「ロボットは2025年までに7500万の仕事を奪う可能性があるが心配する必要はない」のはなぜか? - GIGAZINE

in AI,   サイエンス, Posted by log1b_ok

You can read the machine translated English article In China, where the working population i….