セキュリティ

データセンター反対運動やAI批判が「反テクノロジー過激主義」として監視対象になる恐れがあることがアメリカ当局の内部資料で明らかに


アメリカの法執行機関や情報機関がデータセンター反対運動やAIへの反発を「反テクノロジー過激主義」という新たな脅威カテゴリとして扱い始めていることが、WIREDの報道で明らかになりました。

US Law Enforcement Warns of ‘Anti-Tech Extremism’ as AI Hatred Grows | WIRED
https://www.wired.com/story/us-law-enforcement-warns-of-anti-tech-extremism/


AIサービスの普及に伴い、大量のサーバーを動かすデータセンターの建設がアメリカ各地で進んでいます。データセンターはクラウドサービスや生成AIを支える重要施設ですが、建設予定地の住民からは電力消費、水の使用量、騒音、地域インフラへの負担などを理由に反対の声が上がっています。


WIREDは情報公開請求によって、アメリカ国土安全保障省、FBI、情報融合センターが作成した1000ページ超の未公開資料を入手したとのこと。なお情報融合センターは、連邦政府の情報機関と州・地方の警察をつなぎ、治安上の脅威に関する情報を共有する拠点です。

WIREDによると、入手資料にはニューヨークの情報・対テロ部門による報告書が含まれていました。報告書では、AI技術の急速な普及によって今後5年で大規模な抗議活動が起き、都市部で社会不安や「反テクノロジー暴力的過激主義」につながる可能性があることが警告されています。WIREDは「反テクノロジー暴力的過激主義」という表現が記事作成時点で公開されている国土安全保障省やFBIの国内過激主義関連資料に見当たらず、広い思想や活動をひとまとめにする新しい分類だと指摘しました。


また、北バージニア地域情報センターの報告書ではデータセンターなどの重要インフラが標的になる可能性を警告する一方で、疑わしい活動の例として「脅威を示す発言」「施設の観察」「写真撮影」「セキュリティの調査」「侵入の試み」などが挙げられており、暴力や破壊活動以外の行動も文脈によって疑わしい活動として扱われ得ることが示されています。写真撮影や施設の観察は平和的な抗議活動や住民調査でも起こり得るため、弁護士からは無害な行動まで監視対象に入りかねないとの懸念が出ています。

データセンター反対運動はすでにアメリカ全土で広がっています。WIREDはData Center Watchの情報を基に、42州で数百の団体が地域のデータセンター建設を止めようとしていると報じています。町議会や予算委員会、学校区の会合などは住民がデータセンター建設への反対意見を述べる主要な場になっているとのこと。一部の州では、データセンターに批判的な発言者が住民集会から退去させられたり逮捕されたりした例も報じられています。


民間の公開情報調査会社も反テクノロジー過激主義の監視に関わっています。WIREDによると、法執行機関と契約するSITE Intelligenceは「ネオ・ラッダイト系のDiscordサーバーでテック企業CEOや発電所への暴力を呼びかける投稿があった」として情報融合センターに警告を流していました。ラッダイトとは19世紀イギリスの機械打ちこわし運動に由来する言葉で、現代ではテクノロジーに強く反発する立場を指す文脈で使われます。

一方で、暴力を呼びかけていないテクノロジー批判まで脅威情報として扱われる例もありました。WIREDによると、進歩派非営利団体More Perfect Unionがジョージア州の住民に対するデータセンターの影響を取り上げた動画について、SITE Intelligenceの報告書が警戒対象として扱っていました。WIREDは「動画内に人や財産への暴力を促す内容はなかった」としています。

FBIはWIREDに対し、捜査対象は連邦犯罪に当たる暴力や犯罪行為を実行した人物、実行する意図がある人物、国家安全保障上の脅威となる人物だと説明しました。一方、国土安全保障省はWIREDのコメント要請に回答しなかったとのことです。

反テクノロジー過激主義を研究するマウロ・ルブラノ氏は「反テクノロジーを掲げた暴力は許されない」とした上で、「AIや新興技術を安全保障問題として扱うことが技術の進む方向に批判的な声を封じる口実になってはならない」と述べています。NAACP Legal Defense Fundのスペンサー・レイノルズ氏も、「反テクノロジー過激主義」というカテゴリは、平和的なデータセンター反対運動、AI懐疑派、生活に入り込むテクノロジーに不満を持つ人々まで巻き込むほど広く描かれかねないと述べました。

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