サイエンス

重度の感染症になった人はその後の人生で認知症になるリスクが高いとの研究結果


医療専門家は以前から、感染症と認知症リスクには関連性があるのではないかと考えてきました。フィンランド国民の膨大な医療記録を分析した研究により、重度の感染症で入院治療を受けた人々は、後の人生で認知症を発症するリスクが高いことが示されました。

The role of noninfectious comorbidities in the association between severe infections and risk of dementia in Finland: A nationwide registry study | PLOS Medicine
https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1004688

Severe infections independently amplify the risk of dementia later in life
https://www.psypost.org/severe-infections-independently-amplify-the-risk-of-dementia-later-in-life/

重度の感染症は全身に持続的な炎症を引き起こし、これが血液中の毒素や病原体から脳を保護する血液脳関門に影響を及ぼす場合があります。血液脳関門が損傷すると有害なタンパク質や炎症細胞が脳組織に侵入し、脳内の神経炎症を促進して、認知症リスクを高めるという説があります。また、重度の感染症は全身の血管系にも問題を引き起こし、脳に酸素や栄養を補給する血管を損傷させる可能性もあるとのこと。

これらの点から、医療専門家らは「重度の感染症は認知症リスクを高めるのではないか」と考えてきました。しかし、一般的に認知機能低下が進行する70~80代の高齢者は糖尿病や心血管疾患など、心身のさまざまな疾患を抱えています。


これらの加齢に伴う疾患の多くは、重度の感染症と認知症の両方のリスク因子であるため、同じ要因が感染症と認知症の両方に影響を与えている可能性もあります。つまり、「感染性の肺炎後に認知症を発症した患者」がいた場合、肺炎が認知症リスクを高めたのか、それとも既存の心臓疾患が肺炎と認知症の両方を引き起こしたのかがわかりにくいというわけです。

そこで、ヘルシンキ大学の疫学者であるピリ・シピラ氏らの研究チームは、感染症が独立して認知症リスクに及ぼす影響を調べました。研究チームはフィンランドの全国的な健康登録データにアクセスし、2017~2020年に認知症と診断された65歳以上の6万2555人を、認知症のない31万2772人の対照群と比較しました。

今回の分析では、認知症患者1人に対して性別・出生年・追跡期間が同じ5人の対照被験者をマッチングさせました。これにより、年齢や時間経過といった一般的な変数が結果に影響を与えるのを防ぎ、特定の健康事象に限定された変動を特定できるとのこと。


研究チームは各被験者について最大21年分の医療記録を精査し、被験者らが入院する原因となった170種類の病気や症状をリストアップしました。そして、認知症の診断に先行する疾患を調べたところ、合計で29種類の疾患が特定されました。このうち27種類は脳梗塞などの心血管疾患や、2型糖尿病などの代謝性疾患、うつ病などの精神疾患、頭部外傷などの外傷を含む非感染性疾患でした。

そして残る2種類は、尿路感染症のひとつである膀胱(ぼうこう)炎と、感染部位が特定されていない一般的な細菌感染症でした。認知症患者の約半数は、認知機能が低下する前の20年間に、これら29種類のうち少なくとも1つの病気で入院しており、多くの被験者は長年にわたって複数の疾患を経験していたとのことです。

これらの疾患がどのように相互作用しているのかをマッピングしたところ、「脳卒中の初期診断が尿路感染症の診断につながることが多い」など、相互に関連する疾患のネットワークが発見されました。研究チームは感染症が認知症リスクに及ぼす影響を分離するため、27種類の非感染性疾患を考慮に入れるよう数理モデルを調整しました。

その結果、たとえ27種類の非感染性疾患を考慮に入れた場合でも、依然として2種類の感染症と認知症との関連性は強固であることがわかりました。膀胱炎で入院した人はそうでない人と比較して、最終的に認知症を発症する確率が約19%も高く、一般的な細菌感染症でも同様のリスク増加がみられました。

さらに研究チームは、65歳以下で認知症を発症した早期発症型認知症についても同様の分析を行いました。すると、若年層では早期認知機能低下のリスク増加に関連する感染症の種類がより多岐にわたり、胃腸疾患や細菌性肺炎、重度の虫歯なども含まれることが判明。高齢者の場合と同様に、他の併存疾患を考慮に入れたモデルでも感染症と早期発症型認知症との関連性は変わりませんでした。


今回の研究はあくまで観察結果に基づいたものであり、「感染症が認知症を引き起こす」という因果関係を証明したものではありません。今後の研究では、大規模なワクチン接種プログラムの長期的な認知機能への影響を分析するなど、感染症の予防や治療が認知機能に与える影響を調べる必要があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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