サプリメントが「健康的な老化」への近道にならない理由とは?

現代では各種ビタミンやミネラルなどの栄養素を補給するサプリメントが豊富で、足りない栄養素をサプリメントで補給する人も増えています。特に栄養素が不足しがちな高齢者にとって、サプリメントはうってつけの健康習慣のように思われますが、サプリメントは決して「健康的な老化」への近道ではないと、スペインのナバーラ大学で老年医学コンサルタントを務めるミゲル・ボルダ氏らが解説しました。
Why supplements aren’t a shortcut to healthy ageing
https://theconversation.com/why-supplements-arent-a-shortcut-to-healthy-ageing-277291
サプリメントの摂取は有益な健康習慣だと思っている人は多いかもしれませんが、すでに十分な栄養素を取っている人に対しては、多くのサプリメントは目立った効果をもたらさないとのこと。不必要なサプリメントは余計な出費につながるどころか、特定のビタミンやミネラルを過剰摂取すると毒性を示したり、薬の効果を妨げたり、意図しない健康被害を引き起こしたりする場合もあるそうです。
高齢者の場合はさらに問題が複雑であり、高齢者が栄養不足に陥っている原因を見極め、栄養不足の解消にサプリメントが効果的なのかどうかを判断する必要があります。そもそも高齢者は加齢に伴う食欲の低下、歯の喪失や歯周病といった口腔(こうこう)環境の悪化、慢性疾患の増加、栄養素の吸収などに影響する薬の服用などにより、栄養不足を起こしやすくなります。
また、高齢者は「食べる量を減らせ」「体重を抑えろ」「重い食事は避けるべき」「柔らかい食べ物を増やせ」といった、食事に関するさまざまな情報に惑わされがちです。しかし、多くの情報は結果的に食事量を減らすことにつながりやすく、タンパク質・ビタミン・ミネラルといった栄養素のニーズを満たせなくなってしまうリスクを高めます。
こう聞くと、「高齢者の栄養不足を解決する上で、やはりサプリメントは有用なのではないか?」と思うかもしれません。しかし、単に食事の量が減ったせいで栄養素が不足しているだけなのであれば、食事の量を増やすだけで十分な栄養素を摂取できる可能性があります。ボルダ氏らは、サプリメントの服用は「実際に栄養不足が確認された場合」「明確なリスク因子がある場合」「薬を服用している場合」「何らかの理由で食事から栄養素を摂取できない場合」など、対象を絞って行うべき対処法だと主張しています。

ボルダ氏らは高齢者で不足しがちな栄養素について、その原因やサプリメントの効果などをまとめています。
・ビタミンB12
高齢者はビタミンB12欠乏症になりやすいことが知られていますが、これは食品からビタミンB12を遊離させる胃酸の分泌量が減ることも一因です。ビタミンB12欠乏症になると貧血・疲労感・神経障害・しびれ・記憶障害などが生じる可能性があり、一部の薬は状況を悪化させるとのこと。そのため、ビタミンB12が不足した高齢者にはサプリメントの摂取や、場合によっては注射による補給が推奨されています。
・葉酸
ビタミンB群の一種である葉酸は赤血球やDNAにとって重要な栄養素であり、葉酸が不足すると心血管疾患や認知機能低下との関連が指摘されているホモシステインの値が上昇します。葉酸やその他のビタミンB群のサプリメントは、ホモシステイン値が高い人や軽度の認知障害がある人などに有効な可能性がありますが、葉酸を単独で処方する前にまずはビタミンB12欠乏症を考慮する必要があるとのこと。根本的な原因がビタミンB12欠乏症の場合、葉酸を単独で処方すると血液所見の一部が改善されるものの、神経損傷は進行してしまう可能性があるとボルダ氏らは述べました。
・ビタミンD
ビタミンD欠乏症は日光への暴露が少なかったり、運動能力が低下していたり、肌の色が濃かったり、ビタミンDを含む食品の摂取量が少なかったりする高齢者に多くみられます。ビタミンD欠乏症になると骨粗しょう症や筋力低下のリスクが高まるため、ビタミンDサプリメントの摂取は有効な対処法となりますが、大規模な調査ではすでにビタミンDが十分な中年がサプリメントを服用しても、骨折リスクの低下などに大きな影響はみられませんでした。
・カルシウムとマグネシウム
カルシウムとマグネシウムは骨・筋肉・神経の機能にとって重要な栄養素ですが、可能な限り食品から摂取するべきだとボルダ氏らは主張。どうしても食事からの摂取量が不足してしまう場合はサプリメントが役立つこともありますが、過剰摂取は避けるべきだと警告しました。
・マルチビタミン
マルチビタミンは複数のビタミンをまとめたサプリメントであり、食事量が非常に少なかったり、食事内容が偏っていたりする高齢者にとっては有益です。しかし、アメリカで行われた大規模研究ではマルチビタミンの日常的な摂取と死亡率の間に関連性はみられず、マルチビタミンが具体的な健康状態の改善や寿命の延長につながるかどうかは不明です。
・タンパク質
高齢者が最も見落としがちな栄養素のひとつがタンパク質です。高齢者は肉・魚・卵・乳製品・豆類といったタンパク質豊富な食品を避ける場合が多く、タンパク質の摂取量が不足した結果、加齢に伴って筋肉量や筋力が低下するサルコペニアになりがちです。専門家グループは、腎臓病などの疾患のためにタンパク質摂取を制限するよう指示されている場合を除き、体重1kgあたり1~1.2gのタンパク質を毎日摂取するよう推奨しています。

サプリメントの中には医薬品と相互作用を起こすものがあるほか、大量摂取が有害な結果をもたらす場合もあり、ビタミンDやビタミンAを過剰摂取すると毒性を示すことが知られています。また、βカロテンやビタミンEなどの高用量の抗酸化サプリメントが、一部の人々における死亡リスクを増加させるとの研究結果も報告されています。
ボルダ氏らは、不足する栄養を補う上でサプリメントが有効だと認めつつ、まずは食生活の改善から始めるのが賢明なアプローチだと主張。「サプリメントは健康的な老化においてサプリメントは健康的な一定の役割を果たすことはできますが、決して近道ではありません。基本となるのはバランスの取れた栄養摂取、筋力トレーニング、十分な睡眠、社会的なつながり、そして良質な食品へのアクセスです」と述べました。
・関連記事
オメガ3脂肪酸とビタミンDサプリで老化が遅くなることが判明 - GIGAZINE
安価なサプリメントを摂取することで高齢者の脳機能が高まることが判明、腸内改善にも効果的なサプリとは? - GIGAZINE
「マルチビタミンサプリを毎日服用することで高齢者の記憶力が向上する可能性がある」という研究結果が発表されるも効果はごくわずか、被験者の偏りや食生活の影響を鑑みないことから批判の的に - GIGAZINE
マルチビタミンのサプリを飲むと記憶力と認知能力の低下を防ぐことができる可能性 - GIGAZINE
「葉酸」の摂取量を減らすと寿命が延びる可能性があるとの研究結果 - GIGAZINE
健康的な老後を過ごすために自分へ問いかけるべき「5つの質問」とは? - GIGAZINE
社会的つながりを保つことが生物学的な老化を遅らせるカギかもしれない - GIGAZINE
人間の老化は「44歳頃」と「60歳頃」の2回に分けて劇的に進むと判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Why supplements are not a shortcut to 'h….







