サイエンス

「大昔の昆虫が巨大だったのは酸素濃度が高かったから」という定説を覆す研究結果が示される


これまでに発見された化石などから、数億年前の地球には現在のハトよりも大きい昆虫が飛び回っていたと考えられています。こうした巨大な種が生息できたのは大気中の酸素濃度が今よりも高かったためというのが通説ですが、これを覆す可能性のある証拠が新たに示されました。

Oxygen supply through the tracheolar–muscle system does not constrain insect gigantism | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-026-10291-3


Massive insect body size 300 million years ago may not have been due to high atmospheric oxygen
https://phys.org/news/2026-03-massive-insect-body-size-million.html

現代の大気中の酸素濃度は約21%ですが、3億年前は約30%以上でした。昆虫は飛行中に多くのエネルギーを消費するため、高濃度の酸素があればより豊富なエネルギーを確保可能であり、3億年前の昆虫は現代のものより巨大だったと考えられています。言い換えると、「酸素濃度が高くないと昆虫は巨大化できない」ということです。


ところが、プレトリア大学のエドワード・P・スネリング氏らの研究で、昆虫の巨大化と酸素濃度の関連性は低い可能性があるという証拠が提示されました。

昆虫は気門という穴と気管という管を通じて呼吸します。スネリング氏らが電子顕微鏡を用いて現代の昆虫44種を調査したところ、そのほとんどにおいて、体の大きさに関わらず気管の末端部位に当たる気管小枝は筋肉空間の1%以下しか占めていないことが明らかになりました。この割合は3億年前に生息した体長60cmを超えるような種でも同じだったと考えられています。

比較すると、鳥類や哺乳類の心筋における毛細血管はもっと割合が大きいとのこと。体が大きければその分、気管を増やす進化的余地はあるはずで、酸素濃度が体の大きさに影響しているという主張、ひいては現代の昆虫が酸素不足でサイズが制限されているという主張は弱いとスネリング氏らは指摘しました。本当に酸素濃度が巨大化の理由であれば、現代の昆虫でも気管小枝を増やせば巨大化できるはずで、そうなっていないということは酸素濃度が直接の要因ではない、というのがスネリング氏らの考察です。


代わりに昆虫が巨大化していた理由として考えられるのは、鳥類などの捕食者がいなかったということです。時代が移り変わるにつれて脊椎動物の捕食者が生まれると、その体の大きさが不利になり、絶滅に向かった可能性があります。

一部の科学者は、気管小枝より上流の酸素の流れ、あるいは体の他の部位が依然として体サイズを制限している可能性があると反論しており、酸素による昆虫の最大サイズ制約説はまだ完全に否定されたわけではありません。

スネリング氏は「もし大気中の酸素濃度が本当に昆虫のサイズの制限を決めているのであれば、別の器官が働きを代行している証拠が気管にあるはずです。大型の昆虫ではある程度の補償は見られますが、全体としては取るに足らないものです」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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