サイエンス

NASAの太陽探査機データを使って「太陽の境界」を初めてマッピングすることに科学者らが成功

by CfA/ Melissa Weiss

太陽はコロナという高温のプラズマを吹き出しており、このコロナに対して太陽の磁力が作用しなくなり、太陽風に変わる境界はアルヴェーン面と呼ばれます。新たに、NASAの太陽探査機であるパーカー・ソーラー・プローブなどのデータを用いて、科学者らが「太陽の磁力が及ぶ境界」をマッピングすることに成功しました。

Multispacecraft Measurements of the Evolving Geometry of the Solar Alfvén Surface over Half a Solar Cycle - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ae0e5c


Astronomers Create First Map of the Sun's Outer Boundary | Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian
https://www.cfa.harvard.edu/news/astronomers-create-first-map-suns-outer-boundary

The First-Ever Map of The Boundary of The Sun Has Just Been Revealed : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-first-ever-map-of-the-boundary-of-the-sun-has-just-been-revealed

2018年に打ち上げられたNASAのパーカー・ソーラー・プローブは、2021年に初めて太陽大気の外層であるコロナに到達して以降、繰り返し太陽に接近して貴重な科学データを地球に送信しています。ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)の天体物理学者であるサム・バッドマン氏は、「アルヴェーン面の深部から得られたパーカー・ソーラー・プローブのデータは、太陽コロナがなぜあれほど熱いのかといった、太陽コロナに関する大きな疑問を解くのに役立つ可能性があります。しかし、これらの質問に答えるには、まず太陽の境界がどこにあるのかを正確に知る必要があります」と述べています。


天体物理学的には、天体の境界は「その領域の挙動を支配する物理学が変化する点」として定義されます。アルヴェーン面の場合、太陽磁気の影響が弱まり、流出するプラズマが太陽と磁気的に結びつかなくなる点です。このアルヴェーン面を超えると、プラズマなどの物質は太陽に戻ることはできません。

太陽のアルヴェーン面がどのように膨張・収縮しているのかを知ることは、地球や他の惑星との相互作用を理解し、通信技術や電力網に太陽などが及ぼす影響を予測する宇宙天気予報にとっても重要です。

バッドマン氏らの研究チームは、パーカー・ソーラー・プローブが太陽の大気圏深くに突入した際のデータや、より安全な距離から太陽を観測するソーラー・オービター、そして太陽と地球の相互作用によって重力的に安定したラグランジュ点(L1)にある3機の宇宙探査機のデータを相互参照し、太陽のアルヴェーン面を示す地図を作成しました。

以下の図は、パーカー・ソーラー・プローブの太陽接近時のアルヴェーン面を二次元的にプロットしたもの。黒色がラグランジュ点(L1)の宇宙探査機が収集したデータ、青色がソーラー・オービターのデータ、赤色がパーカー・ソーラー・プローブのデータに基づいて推定されたアルヴェーン面の形状です。


データを基に作成されたアルヴェーン面のイメージ図が以下。6年間にわたる観測では、太陽活動が活発化するにつれて、アルヴェーン面の中央値の高さが約30%も拡大したことも示されました。


分析の結果、パーカー・ソーラー・プローブは太陽の付近を通過した際のほとんどで、激しく揺れ動くアルヴェーン面の隆起部分をかすめていたことが判明。一方で、アルヴェーン面より深く潜ったのは太陽極大期の真っ最中に行われた2回の接近時のみだったこともわかりました。

バッドマン氏は、「太陽が活動サイクルを経るにつれ、太陽の周りのアルヴェーン面の形状と高さが大きくなり、よりとがった形状になっているのがわかります。これは以前から私たちが予測していたことですが、今では直接確認できるようになりました」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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