40歳未満のアメリカ人の間で記憶力や思考力の問題が急増していることが判明

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2013年~2023年にかけて収集した450万件以上の回答を分析した研究により、「何らかの認知障害がある」と自覚している人の割合がアメリカ全体で増加していることがわかりました。特に40歳未満のアメリカ人で認知障害を自覚する人が急増しており、反対に70歳以上の高齢者では減少傾向にあったとのことです。
Rising Cognitive Disability as a Public Health Concern Among US Adults | Neurology
https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000214226

Sharp rise in memory and thinking problems among US adults, study finds: Neurology Resources | AAN
https://www.aan.com/PressRoom/home/PressRelease/5286
Memory Problems Are Surging in Adults Under 40, Large US Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/memory-problems-are-surging-in-adults-under-40-large-us-study-finds
アメリカの研究チームは、CDCが運営する大規模調査・行動リスク因子監視システム(BRFSS)で2013年~2023年に収集した、合計450万件以上のアメリカの成人に関するデータを分析しました。被験者は「身体的・精神的・感情的な状態により、集中力・記憶力・意思決定に深刻な困難を感じていますか?」と質問され、これに「はい」と回答した人は認知障害があると分類されました。なお、分析では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響が大きい2020年のデータと、うつ病であると回答した人のデータが除外されたとのこと。
分析の結果、アメリカにおける認知障害を持つ人の割合は、2013年の5.3%から2023年の7.4%へと増加していることが判明。最初の増加傾向が現れたのは2016年であり、パンデミックを挟んでも増加傾向は維持されました。以下のグラフは、認知障害を持つ人の割合の推移を年ごとに示したものです。

論文の共著者で、イェール大学の血管神経科医であるアダム・デ・ハベノン氏は、「記憶力と思考力の低下は、アメリカの成人が報告する主要な健康問題として浮上しています。私たちの研究は、こうした問題が特に若年成人の間でまん延している可能性があり、社会的および構造的な要因が重要な役割を果たしている可能性が高いことを示しています」と述べています。
認知障害を持つ人の割合の推移を、年齢層別に示したグラフが以下。最も大きな増加率がみられたのは18歳~39歳の若年層で、認知障害を持つ人の割合は5.1%から9.7%へとほぼ倍増しました。一方、70歳以上の高齢者では割合がわずかに減少し、2013年には7.3%だったのが2023年には6.6%となりました。

認知障害を持つ人の増加は、人種や経済状況にかかわらずほとんどのグループで確認されましたが、増加率や割合にはさまざまな要因が影響していました。特に経済状況が与える影響は大きく、世帯収入が3万5000ドル(約540万円)未満のアメリカ人では、調査期間中に8.8%から12.6%へと上昇していました。一方、世帯収入が7万5000ドル(約1160万円)を超えるアメリカ人では、同期間中に1.8%から3.9%の上昇にとどまりました。
また、高校卒業資格のない成人では、認知障害を持つ人の割合が2013年の11.1%から2023年の14.3%に増加し、大学卒業者では2013年の2.1%から2023年の3.6%に上昇しました。人種別に見ると、最も認知障害の割合が高かったアメリカ先住民では7.5%から11.2%に増加し、ヒスパニック系では6.8%から9.9%、黒人では7.3%から8.2%、白人では4.5%から6.3%、アジア系では3.9%から4.8%の増加となりました。
デ・ハベノン氏は、「これらの調査結果は、すでに社会構造上不利な状況に直面している人々において、記憶力や思考力の問題が最も急激に増加していることを示唆しています。この傾向を引き起こしている可能性のある根本的な社会的・経済的要因をより深く理解し、対処する必要があります」と述べました。
研究チームはアメリカの成人における認知障害が増加している理由として、「人々が精神的な健康問題を報告しようとする傾向が強まったこと」「COVID-19のパンデミックの影響が長引いていること」「仕事に対する不確実性の高まり」「デジタルツールへの依存度の高まり」など、複数の要因が重なっている可能性を示唆しています。

AIやデータサイエンスの研究者であるコリン・ルイス氏は自身のブログで、人々の注意力を奪うソーシャルメディアや、記憶をアウトソーシングする検索エンジンなどが認知障害の原因だと主張しています。
Under 40's Declining Memory - The One Percent Rule
https://onepercentrule.substack.com/p/under-40s-declining-memory
ルイス氏は、「これらの装置が誕生する前の世界を知らない最年少世代は、もはや集中も記憶も決断もできなくなったと報告しています」「かつては何時間も文章に没頭できた規律正しい小説家の友人でさえ、最近はもう本を読めないと話しています」「彼女の失敗はもはや道徳的なものではなく、体系的なものです。彼女は弱いのではありません。常にオンラインであることの付随的な被害者なのです」と述べています。
その上で、集中力や記憶力、決断力を失った国民は単に非生産的なだけでなく、政治体制にも影響を及ぼすとルイス氏は指摘しています。民主主義は何段落にもわたる文脈を持った議論を理解し、投票する時に候補者が過去にした約束を思い出せるような市民の存在を前提としていますが、認知能力が失われるとこうした理性的な判断が難しくなります。
ルイス氏は、「記憶を失った人々は過去の行いを繰り返すだけでなく、『過去に何があったのか』を教えられて、それを信じる運命にあります。今世紀の政治的課題はもはや『生産手段を支配するのは誰か?』ではなく、『認識の手段を支配するのは誰か?』という点です」と主張しました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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