ゾンビ×アイドル×佐賀に宇宙人まで加わった劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』宇田鋼之介総監督インタビュー

アイドルを夢見ていた高校生・源さくらをはじめとした伝説の少女たち7人がゾンビィとして復活し、佐賀のご当地アイドル「フランシュシュ」として奮闘する姿を描いたアニメ『ゾンビランドサガ』が映画になり、2025年10月24日(金)から劇場で公開されています。
ゾンビィがアイドルをやっているというアイデアの時点でかなりぶっ飛んだ作品ですが、この劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』は、佐賀万博アンバサダーとしてフランシュシュが盛り上げる準備を進めていたところに宇宙人が襲来、これまでまったく自我のないゾンビィだった山田たえが覚醒するという、さらに突き抜けた内容となっています。いったい、どのようにこの作品が生まれたのか、総監督を務めた宇田鋼之介さんにお話をうかがいました。
劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』公式サイト
https://zombielandsaga-movie.com/
『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』30秒予告_10.24(Fri.)全国公開 - YouTube

GIGAZINE(以下、G):
宇田総監督は本作で音響監督も担当されています。本作は歌、音楽がてんこ盛りの作品で、音に関してはいろいろとこだわった部分が多かったのではないかと思うのですが、音響監督としてこだわったのはどういったところだったのでしょうか。
宇田鋼之介総監督(以下、宇田):
いろいろと要素の多い作品だったので、音楽をどう付けていくかは早い段階から考えていました。ゾンビィであることがバレてしまうというシーンではきっちりとシビアな雰囲気にというのはありつつ、全体的にはどちらかといえば「戦隊もの」のような音楽の付け方にしようと自分の中で決めて、音楽の高梨康治さんには「ここは『メインテーマ』でください」のような形でお願いしました。
G:
なるほど。
宇田:
場所によっては、新規の曲ではなく第1期OPを使おうとか、既存楽曲から持ってこようとか、あるいはゾンビィたちの反撃ターンでは第2期の楽曲を使おうとかについては早めに決めていました。その点は高梨さんにも伝えて、劇伴の方もバランスを見てもらいつつやっていこうと。最初のうちは、高尚というと変かもしれないですけれど、「劇場」感というか、クラシックをばりばりに使うことも考えていたんですが、途中で「それはないな」と思い直して。

G:
そうだったんですか、かなりの方針転換ですね(笑) キャストの方へはなにか細かい指示などはありましたか?
宇田:
キャストの方々はそれぞれ、すでにTVシリーズを2シーズン演じていてキャラクターをつかんでいますから、そこに関してこちらから指示をすることはあまりなかったです。ただ、本作では感情で動かなければいけないシークエンスもありましたので、「今、彼女はこのようなことを思ってしゃべっています」と現場で伝えることもありました。

G:
本作は宇田さんが総監督で、監督を佐藤威さんと石田貴史さんが務める3人体制になっていて、わりと珍しいシステムなのではないかと思うのですが、どのような役割分担が行われたのでしょうか。
宇田:
確かに、座組としては珍しいと思います。まず自分の「総監督」という位置ですが、自分としては、監督という立場の人がいるのでそれを補佐する役割だと思っていました。業界歴40年と経験値だけは結構ありますから(笑)
G:
おっ、なるほど。
宇田:
その経験に基づいて「こうした方がいいよ」「ああした方がいいんじゃないか」というアドバイスをしたり、とにかく、監督2人がやりやすいように環境を整えていくのが自分の仕事だと思っていました。監督が2人というのは、石田くんは初監督ですし、佐藤くんもキャリアとしてはかなり若いというのもあるし、1人でやるには分量が多いということもあります。それに、2人はそれぞれ得意分野がちょっと違うんです。
G:
それぞれ、どういったことを得意とされているんですか?
宇田:
佐藤くんはどちらかといえばキャラクター芝居において力があり、石田くんはアクションや画面作りに特に長けています。昔、撮影をしていたという経験もあるので、これはそれぞれの役割を果たした方が映画として面白いんじゃないかと。MAPPAの大塚社長のアイデアもあったと思いますが、シナリオが上がったときに2人にやりたいところを出してもらったらうまく分かれて重ならなかったんです。分量もだいたい半分ぐらいになったので、「じゃあそれでやっていきましょう」ということになりました。僕はそれをバラバラにならないように調整する役回りを担当しました。
G:
なるほど、それでこの総監督+2人の監督という体制で制作されたと。
宇田:
シナリオはすごくボリュームがあって、まともにやったら2時間30分ぐらいかかりそうだったんですが(笑)、トータルで見て調整して、編集時にいろいろと手を加えて、なんとか2時間にまとまる形に仕上げました。
G:
まさに、実際に拝見してみて、きっちりと2時間に収まっていてすごいなと感じました。
宇田:
かなり思い切って削ったところもありますが、見てもらって自然に感じていただけたのなら、編集の武宮さんの力が大きいと思います。「ここをこう削りたいんだけどな……」と思ったところを「じゃあ、こうしましょうか」とすごくうまく編集してくれて、僕はとても楽させてもらいました。無理くり短くしたという感じが出なかったのは、武宮さんのおかげです。
G:
この2時間がまた型破りな展開だったのですが、これは企画に取り掛かった初期から構想されていた内容なのでしょうか。それとも、いろいろと考えに考えてたどりついたものなのでしょうか。
宇田:
劇場版をやると決まった時点では、まったくノープランでした。第2期『ゾンビランドサガ リベンジ』の最終話の最後、ラスト2カットになって宇宙船が出てきたんですよ(笑)
G:
あれはびっくりしました(笑)
宇田:
なので、まずは「ここからどうするんだ」というところから始まりました。スタッフみんなで、ああでもないこうでもないと案を持ち寄って。
G:
それはめちゃくちゃ大変なところからですね……。
宇田:
それでちょっと時間がかかってしまって、ファンの皆さまをお待たせしてしまったところはあると思います。
G:
いやー、それは時間がかかると思います。まさかそんな悪戦苦闘の末に生み出されたものだったとは……。
宇田:
プロデューサーからライターからみんな集まって「どうしよう」、そして「『ゾンビランドサガ』らしさとはなんぞや!?」と(笑)
G:
(笑)
宇田:
「こういうアイデアもあるよね」というのを詰め込んでいったら、最初はとてもこれじゃ終わらないぞという話になり、そこを脚本の村越くんがなんとかまとめてくれたんですが、シナリオはすごい分量になって。
G:
そんな中で、本作はまさに『ゾンビランドサガ』らしく、佐賀県の実在の名所や建物などがいろいろと出てきました。
宇田:
はい、全部ロケハンで回らせてもらいました。まず、制作さんに作中で使えそうなところをリストアップしてもらって、候補をできるだけ多く回って。まだシナリオはできていなかったので、ある意味では「ノープランロケ」で。ロケハンする中で「ゆめぎんが(佐賀県立宇宙科学館)」など、これは使えそうだという場所が複数見つかったので、シナリオ会議に反映していったという感じです。

G:
なるほど、現地でインスピレーションを得てシナリオに反映されていったと。それで、いろいろな場所が登場しても自然にストーリーに組み込まれていたというわけなんですね。
宇田:
そういうことになります。
G:
結構、いろんなところがぶっ壊れまくる怪獣映画のような作品ですけれど、どこを壊すかというのはどのように決まったのですか?
宇田:
たとえば佐賀県庁だと「壊しますけどいいですか?」とロケのときに聞いたら「どうぞどうぞ」とのことだったので、遠慮なく壊させてもらいました。
G:
(笑)
宇田:
ゆめぎんがなんて完全破壊ですからね(笑)
G:
本当に、完膚なきまでに壊されていて、すごいなと思いました。ちなみに先ほど、総監督として監督たちが仕事をする環境を整えたというお話がありましたが、それはどういった作業なのでしょうか。
宇田:
自分が劇場版を制作したときの実感として、とにかく「問題を後回しにしてもいいことは何もない」というのがあるんです。あとで倍になって返ってくるだけで。それに、劇場版を制作するとなると、TVシリーズに注ぎ込むのとはまた別のエネルギーを出さなければならないことがあって。監督2人にはできるだけ本編に集中してもらいたいので、そういった本編以外の部分はできるだけ自分が担当するようにしました。
G:
なるほど、確かに「環境を整える」役割なんですね。
宇田:
あと、作りたい映像のイメージがあるのであれば、なるべく早くみんなと共有できるようテーブルに載っけて、「それだったらこうした方がいいんじゃないか」と解決策をできるだけ前に持ってくるようにしました。先に素材を用意しておくこともできますし、そういうお手伝いをさせてもらいました。
G:
難しくなりそうなシーンは早めに処理しておこう、という感じでしょうか。
宇田:
監督に限らず、制作に関わるスタッフみんなにそういう意識についてなるべく話をしていました。
G:
宇田総監督としては、このあたりは苦戦しそうだと思った部分はありましたか?
宇田:
分かりやすいところだと、各種デザインですね。たとえば宇宙船とか宇宙人のデザインは、本作のテーマに関わることになりそうなので早めに決めようと考えていました。ただ、この点については僕が言い出す前にスタッフが動いてくれていて、苦しむことはありませんでした。
G:
これまでに、後回しにして大変になったのはどういったことがありましたか?
宇田:
それはもう、毎度のようにあるんです。劇場版だけではなくTVシリーズでも「後でどうにかなるだろう」と思っていたことがどうにもならないという。40年も業界にいるといろいろな作品に関わってきましたが、見切り発車で進めると大変な目に遭うというのは身に染みています。
G:
劇場版を制作するというのは、TVシリーズを作るのとは大きく違うものですか?
宇田:
僕の中では、実はあまり大差はないと感じています。むしろ、劇場版の方が自分でコントロールできる範囲が広くて楽なとこもあります。TVシリーズだと、完全に自分の手を離れて任せなければいけない部分が出てきますが、劇場版だと手を出そうと思えば出せますから。
G:
なるほど。今回、W監督である石田さんと佐藤さんに宇田総監督からなにか働きかけをするようなことはありましたか?
宇田:
監督の2人、石田くんと佐藤くんには全幅の信頼を置いていました。『ゾンビランドサガ』のTVシリーズを一緒にやってきた仲間なので、もともと作品への解像度は高いですし、「こうした方がいい」というアイデアも持っていましたから、とにかく、彼らが好きなようにやらせてあげなければと思ったぐらいです。
G:
監督2人から結構やりたいアイデアが出てきて、詰め込んだ結果、こうして2時間みっちりの作品になったというイメージでしょうか。
宇田:
そうですね、大変な面もありましたけれど(笑)、まずは彼らがノってやってくれるのが大事な要素だと思いました。
G:
後半にかけてすさまじいドライブ感のある作品だと感じて、何をどうしたらこんな次から次へと繰り出されるものが作られるのかと思って見ていました。
宇田:
脚本の村越くんやプロデューサーも含めて、シナリオ段階から携わってくれたスタッフのみんなの頑張りのおかげです。みんなが面白いアイデアを出してくるから「よし、入れよう」「それもいいね」とやっていたら「これ……まとまらないのでは?」となって(笑)、最後には「この構成でいいのか会議」も開かれました。それぐらい、村越くんはよくまとめてくれたと思います。でも、『ゾンビランドサガ』の作り方というのはそうなんです。作っている側の感覚としては、スピンオフとかそういうものではなく、完全にTVシリーズの続編という作り方でした。
G:
最後に、ここまでインタビューを読んで、まだ映画を見に行こうか迷っている人向けに、背中を押す言葉などいただければと思います。
宇田:
本当に、真面目に気を付けたこととして、『ゾンビランドサガ』を初めて見る人でもちゃんと楽しめる映画にしたいというのがありました。もちろん、2本のTVシリーズを見てもらったり、キャラクターデザインの深川可純さんが描いているマンガ『ゾンビランドサガ外伝 ザ・ファースト・ゾンビィ』を読んでもらったりするともっと楽しめると思いますが、初見でも楽しめるというのがコンセプトです。なので、遠慮なく映画館に足を運んでもらえたらうれしいです。
G:
いろいろとお話をいただき、ありがとうございました。
宇田:
ありがとうございました。
劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』は2025年10月24日(金)より絶賛全国ロードショー中です。
【クライマックスPV】劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』10.24(Fri.)映画館で公開 - YouTube

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©劇場版ゾンビランドサガ製作委員会
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