サイエンス

知能が高い人ほどエコな車に乗るという研究結果


他者や社会全体に利益を生む行動は向社会的行動と呼ばれ、この中には不特定多数への援助や寄付、選挙での投票といったものが含まれます。新たな研究では、知能指数が高い人ほど投票や寄付、環境に優しい車の購入といった向社会的行動をする可能性が高いことが明らかになりました。

inquiry into the relationship between intelligence and prosocial behavior: Evidence from Swedish population registers | The Economic Journal | Oxford Academic
https://academic.oup.com/ej/article/135/668/1141/7914156

Intelligence found to predict prosocial behaviors like voting and charitable giving in massive study
https://www.psypost.org/intelligence-predicts-prosocial-behaviors-like-voting-and-charitable-giving-in-m/

人間は多くの他人と協調して生活しており、日常的に見知らぬ人々と資源を共有し、経済学者が「公共財」と呼ぶものに貢献しています。公共財は誰かを排除したり何かと競合したりせず、費用負担や維持管理に貢献しない人も含めたすべての人に利益をもたらす公共財産のことです。

現代社会においてこれらの公共財や社会システムの維持は重要ですが、なぜ人々が公共財や社会システムに貢献する向社会的行動を取るのかについては、よくわかっていませんでした。提唱されている理論の中には、「人々は自分の行動に伴う個人的なコストを見誤っているため寛大な行動ができる」というものや、「知能が高いほど他者の視点を理解する『倫理的推論』の能力が高まり、結果として倫理的な行動ができる」というものもありました。


今回、スウェーデンのウプサラ大学の経済学者らは、人間の知能が向社会的行動を予測できるかを調査しました。このテーマに関する過去の研究の多くは、自己申告や実験室内でのゲームに基づくことが多くありましたが、こうした研究には被験者が見栄を張ったり、現実世界の行動を反映できなかったりする可能性があります。

そこで、研究チームはスウェーデンの行政登録簿に登録された合計120万人に及ぶ被験者について、認知能力テストの結果と現実世界の行動を照合しました。被験者のほとんどは1951~1979年に生まれた男性で、10代後半に兵役に就く際に義務づけられた認知機能テストを受けていました。


軍の認知能力テストでは論理的思考力・言語能力・空間認識能力・技術的能力が測定され、これは成人期を通じた個人の認知能力を高い精度で予測できるとのこと。また、研究チームは政府の検証済みデータベースを用いて、被験者の寄付や投票、環境に優しい車の購入といった向社会的行動を数十年にわたって追跡しました。

スウェーデン政府は承認された人道支援団体への寄付に対して税額控除を提供しており、一定額を超えた寄付が自動で記録される仕組みになっているため、被験者がどれだけ人道支援団体に寄付したのかがわかります。また、欧州議会選挙の投票率も記録されているほか、国の車両登録簿からどのような車を購入しているのかも調査可能です。

データを分析した結果、認知能力テストのスコアと3つの向社会的行動のすべてに、強い正の相関関係があることが判明しました。男性の場合、認知能力の標準偏差が1つ上昇すると寄付を行う可能性が40%、投票する可能性が31%、環境に優しい車を所有する可能性が14%も高くなりました。女性でも似たような傾向がみられましたが、環境に優しい車の購入のみ統計的に有意ではなかったとのことです。


研究では、特に論理的思考力と言語能力のスコアが向社会的行動を予測することが示されました。しかし、これだけでは「知能が高いと向社会的行動をする可能性が高まる」という直接的な因果関係を示すことはできません。たとえば、知能が高い人は裕福な環境で生まれ育つ可能性が高く、結果として寄付する経済的余裕が生まれやすいだけかもしれないためです。

そこで研究チームは、被験者の中に含まれていた5786組の双子のペアを抽出。生い立ちや通った学校、遺伝的背景を共有した人物同士を比べることで、家庭環境を排除した上で知能と向社会的行動の関係性を分析しました。

その結果、数学的な推定値は低下したものの、依然として知能と向社会的行動にはプラスの関係がみられました。認知能力テストで双子の弟よりも高いスコアを取った兄は、弟よりも慈善団体への寄付や投票をする可能性が高かったのです。なお、環境に優しい自動車の所有との関連性も正の相関関係を示しましたが、兄弟間の差は統計的に有意ではありませんでした。

さらに、研究チームが成人期の収入・教育レベル・婚姻状況・居住地といった要素を考慮して統計モデルを調整したところ、高等教育を受けた経験が、知能の高い人がより向社会的な行動をする理由を部分的に説明できることが判明。学校では市民としての義務を教え、生徒に幅広い社会問題を明確に認識させる機会があるため、結果として寄付や投票をする可能性が高まるのではないかと考えられます。

意外なことに、成人後の収入は知能レベルと向社会的行動の関係性を説明しませんでした。一般的には、知能の高い人は収入も多く、慈善活動への寄付や環境に優しい高価な車も購入しやすいと考えられがちです。しかし、今回収集されたデータはこの説を裏付けるものではありませんでした。


なお、今回の研究は寄付や投票、環境に優しい車の購入といった行動に焦点を当てましたが、これはすべての向社会的行動を網羅したものではありません。そのため、被験者が地域社会でのボランティア活動や近隣住民への直接的援助など、測定されていない他の方法で人々を助けている可能性もあります。

心理学系メディアのPsyPostは、「今後の研究では、共感性などの関連する精神的特性が、一般的な知能とどのように相互作用するのかを詳細に探究すべきです。こうした精神的メカニズムを理解することで、政策立案者はより効果的な啓発キャンペーンを設計できるようになるでしょう。認知能力が気候変動のような社会問題への取り組み方を左右するのであれば、政府は人口の異なる層に合わせて介入策を調整する必要があるかもしれません」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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