病気で声を失った女性が「雑音混じりのたった8秒のホームビデオ」からAIの力で25年ぶりに声を取り戻す

運動ニューロン疾患(MND)と診断されて声を出す能力を失ったイギリスの女性が、「雑音混じりのたった8秒のホームビデオ」の映像を元にAIの力で自分の声を取り戻し、25年ぶりに自分の声で話せるようになったと報告されました。
Elevating communication in Grid with the ElevenLabs Impact Program | Smartbox
https://thinksmartbox.com/news/elevating-communication-in-grid-with-elevenlabs/

AI helps UK woman rediscover lost voice after 25 years
https://techxplore.com/news/2025-08-ai-uk-woman-rediscover-lost.html
MNDは運動に関連する神経細胞(ニューロン)が侵される疾患であり、中には舌や口、喉の筋肉が衰弱して完全に話せなくなってしまう患者もいます。イギリスに住む芸術家のサラ・エゼキエルさんも、息子のエリックさんを妊娠していた34歳の頃にMNDと診断され、やがて話すことができなくなってしまったとのこと。
そんなエゼキエルさんは診断から数年後、コンピューターと人工音声テクノロジーを使ってコミュニケーションを取ることができるようになりましたが、人工音声はもともとの声とはかけ離れたものでした。
そこで、拡大代替コミュニケーション(AAC)テクノロジーの開発企業であるSmartboxが、音声関連のAIスタートアップであるElevenLabsと協力して、エゼキエルさんの声を取り戻すプロジェクトに取り組みました。
どのようにしてエゼキエルさんが声を取り戻したのかは、以下の動画を見るとわかります。
Meet Sarah, an artist, performer, and AAC user - YouTube

エゼキエルさんは、「私は自分の声を取り戻せたことを愛しています。最初にその声を聞いた時は、ほとんど泣いていました。これはとても感動的な体験でした」と自分の声で語ります。

息子のエリックさんは2000年に生まれましたが、その時点でエゼキエル氏はMNDと診断されていました。

エリックさんが生まれた後、エゼキエルさんのMNDは急速に進行し、声が出せなくなったほか手も使えなくなり、結婚生活は破綻したとのこと。

しかし、エゼキエルさんはコンピューターの補助デバイスを手に入れたことで、再び自分の人生をやり直すことができました。

エゼキエルさんは2012年から、視線の動きとコンピューターソフトウェアを使った芸術作品の制作を開始。

エゼキエルさんの作品の売上は、MNDの啓発およびチャリティー活動に使われています。

そんなエゼキエルさんはMNDになってつらかったことのひとつに、声を失ったことを挙げています。声を失ったことは自分のアイデンティティを失ったようなものだったとのこと。

声を失う前の録音データが豊富であれば、そのデータを元にかつての声を復元することも可能です。ところが、エゼキエルさんの手元にあったのは、背景に雑音が多いわずか8秒のホームビデオだけであり、声を復元することは難しいと思われていました。

しかし、SmartboxはAIスタートアップのElevenLabsと協力して、エゼキエルさんの声の復元に取り組みました。まずは1つ目のAIツールを使い、ホームビデオからエゼキエルさんの音声のみを分離。そして2つ目のツールを使用して、最終的な音声を生成したとのこと。

こうしてエゼキエルさんは、25年ぶりに自分の声を取り戻すことができました。この声はエゼキエルさんがもともと持っていたロンドンなまりや、昔は嫌っていた舌足らずな部分も含め、オリジナルにとても近いものだったそうです。

エゼキエルさんが声を取り戻したことは、母の声を忘れていたエリックさんにとってもエキサイティングな出来事でした。

エゼキエルさんは、「私は自分のアイデンティティを取り戻すことができて幸せです。SmartboxとAIに感謝しています。ロボットのようではない自分の声を持てたことは本当に素晴らしいことです」と、取り戻した声で語りました。

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