イギリス政府によるAppleへのバックドア提供要求は「すべてのユーザーのセキュリティとプライバシーを危険にさらすもの」と109の組織・専門家らが共同書簡を公開

イギリスの内務省が、2016年捜査権限法に基づいて、Appleに対して「iCloudにアクセス可能なバックドアを設置するように」と求めている一件について、Global Encryption Coalition(グローバル暗号化連合)のメンバーを含む合計109の組織やサイバーセキュリティ専門家らが、要求を撤回するよう求める共同書簡を公開しました。

Joint Letter on the UK Government's use of Investigatory Powers Act to attack End-to-End Encryption – Global Encryption Coalition
https://www.globalencryption.org/2025/02/joint-letter-on-the-uk-governments-use-of-investigatory-powers-act-to-attack-end-to-end-encryption/

英国政府によるエンド・ツー・エンド暗号化を標的とした捜査権限法の使用に関する共同書簡 | JCA-NET
https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/436

U.K. call for a back door to Apple devices threatens Americans, senator says - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2025/02/13/apple-uk-security-back-door-adp/

イギリス内務省が求めているのは、エンドツーエンド暗号化されているクラウドサービス・iCloudへのバックドア作成と、そのアクセスだと報じられています。

イギリス政府がAppleに「全ユーザーのデータを取得できるバックドア」を設けるように求めていたことが報じられる - GIGAZINE

サイバーセキュリティ専門家によれば、「施されているエンドツーエンド暗号化を損なうことなく、エンドツーエンド暗号化されているデータにアクセスする方法」はないため、イギリス内務省の求める内容を実現するためには、すべてのユーザーのセキュリティとプライバシーが危険にさらされるとのこと。

グローバル暗号化連合は、2025年1月にイギリスの会計検査院が、「イギリス政府に対するサイバー脅威が深刻なものであり急速に進展している」という報告書を出していると述べ、イギリスの政府や市民、企業が安全とセキュリティを確保するために、エンドツーエンド暗号化に頼る度合いは高まっていると指摘しています。

Cyber threat to UK government is severe and advancing quickly, spending watchdog finds - NAO press release
https://www.nao.org.uk/press-releases/cyber-threat-to-uk-government-is-severe-and-advancing-quickly-spending-watchdog-finds/

その上でグローバル暗号化連合は、イギリスの国家と経済の安全保障を確保するために、Appleに対してエンドツーエンド暗号化を解除するよう求めるような通達はやめなければならないと、強く述べています。

なお、同じ件に関して、アメリカでも上院情報委員会のロン・ワイデン上院議員(民主党)や下院司法委員会のアンディ・ビッグス下院議員(共和党)らが、「暗号化されたAppleユーザーのデータへのアクセスを求めるイギリス政府の命令は、アメリカ人を危険にさらすものだ」として、国家情報長官のトゥルシー・ガバート氏に対してイギリスに命令撤回を要求するよう、書簡を送っています。

U.K. call for a back door to Apple devices threatens Americans, senator says - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2025/02/13/apple-uk-security-back-door-adp/