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ミニゲームをプレイして水中ドローンのAIをトレーニングし海洋探査プロジェクトに貢献できる「FathomVerse」


水中ドローンで海の生き物を追跡して観察する研究プロジェクトを推進しているモントレー湾水族館研究所(MBARI)が、モバイル向けのゲームアプリ「FathomVerse」をリリースしました。このゲームをプレイすることで、プレイヤーは深海生物の画像の分類や、ドローンに搭載された自動追跡AIのトレーニングを通じて、MBARIによる海洋生物の研究に貢献することができます。

FathomVerse | mobile game
https://www.fathomverse.game/

FathomVerse mobile game inspires a new wave of ocean exploration • MBARI
https://www.mbari.org/news/fathomverse-mobile-game-inspires-a-new-wave-of-ocean-exploration/

AI Sea Creature Robot
https://www.bloomberg.com/features/2025-ai-sea-creature-robot/

「私たちの目標は、海の生き物を最大24時間追跡し、動物の行動や生態に関する疑問に答えることです。休むことなく海を監視し、私たちがまだ知らないものや見たことがないものに遭遇すると行動を変える自動探査機があったらどんなにいいか、想像してみて下さい」と話すのは、MBARIの主任エンジニアのカカニ・カティヤ氏です。

MBARIの研究船レイチェル・カーソン号に乗っているカティヤ氏。


カティヤ氏は、カリフォルニア沖に遠隔操縦の無人潜水機「MiniROV」を投入し、海中や海底に生息する珍しい生き物を観察する研究プロジェクトに携わっています。


MiniROVにはチームのメンバーから「エージェント」と呼ばれているAIが搭載されており、MiniROVを自動操縦して水中の生き物を追跡する機能を持っています。

こうしたロボット工学や水中カメラ、センサーなどの技術の進歩により、研究者らは深海の生物の画像を何百万枚も収集していますが、それらの多くは未知の生物です。例えば、これまでの海底調査で発見された深海の生き物5580種類のうち、生物種がはっきりと特定できているものは約8%に過ぎないとのこと。

専門家らは、機械学習モデルの手を借りながら収集されたデータの分類を行っていますが、海の生き物の見た目は光の加減、水の透明度、カメラの角度、海の乱流などの環境条件によって大きく変わってしまうため、難航しています。


宇宙船や地球外生物のようにも見えるものも少なくない未知の深海生物の分類となれば、なおさらAIには荷が重い仕事と言えます。

そこで、MBARIはゲーマーや海洋生物愛好家たちの力を借りるべく、モバイルゲームアプリ「FathomVerse」を開発しました。


FathomVerseには、MBARIのデータベースに保存されている深海生物や海洋生物の画像が収録されており、その中には科学者によって確認済みの写真や、AIがタグを付けた画像、まだ誰によっても分類されていない画像などが含まれています。

ゲームを開始したプレイヤーは、まずトレーニングダイビングに参加し、47種類の海洋生物の特徴を見分ける訓練を受けます。そして、アマチュア海洋生物学者としての訓練を修了したプレイヤーは、海流に乗って漂いながら画面をタップし、表示された動物を既知の生物種に分類したり、未知の生物としてタグ付けしたりします。


1回のダイブが終了すると、アプリはプレイヤーによる分類が他のプレイヤーの意見と一致しているかを元に採点し、成績に応じてポイントを付与します。特に、AIが識別できなかった未知の生物は高得点で、未知の生き物に正しく未知とラベル付けできた場合はボーナスポイントが支給されます。また、分類した画像が後で他のプレイヤーや研究者によって精査され、その結果次第で追加のポイントが付与されることもあります。

そして、十分なポイントを獲得したプレイヤーは次のレベルに進み、また新しい海の生き物たちの分類に挑戦することになります。


FathomVerseは記事作成時点で約1万7500回ダウンロードされており、プレイヤーたちの意見によって分類が確定された未確認海洋生物の画像は2025年1月21日の時点で4万7799枚に達しているとのこと。これは、MBARIの研究者たちが過去35年間におよぶさまざまな研究プロジェクトで収集した画像のデータベース「FathomNet」内のラベル付き画像の約14%に相当します。

プレイヤーたちの貢献により分類作業が進むことで、深海ミッションに臨む水中ドローンのAIエージェントはより多くの生き物をより正確に認識できるようになります。例えば、AIはこれまでイソギンチャクやクロサンゴを誤って扇状のサンゴであるウミウチワと認識していましたが、トレーニングの改善により正しく識別できるようになりました。

カティヤ氏は「FathomVerseのプレイヤーは、これまで識別されていなかった動物を特定してくれています。彼らはおそらく、これらの動物を見た最初の人たちでしょう」と話しました。


FathomVerseはiOSとAndroid向けにリリースされており、言語は英語のみです。

「FathomVerse」をApp Storeで
https://apps.apple.com/jp/app/fathomverse/id6469854247


FathomVerse - Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=org.mbari.fathomverse

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in サイエンス,   生き物,   ゲーム, Posted by log1l_ks

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