科学者たちが「無限の進化のタイムループ」にとらわれたバクテリアを発見
冬は氷に閉ざされ、夏は藻に覆われるなど季節による環境の変化が著しい湖で見つかったバクテリアの遺伝的な特性が、1年ごとにリセットされて元に戻っていることがわかりました。
Two decades of bacterial ecology and evolution in a freshwater lake | Nature Microbiology
https://www.nature.com/articles/s41564-024-01888-3
Some Bacteria Evolve Like Clockwork With the Seasons - UT News
https://news.utexas.edu/2025/01/03/some-bacteria-evolve-like-clockwork-with-the-seasons/
Scientists Discover Bacteria Trapped in Endless Evolutionary Time Loop : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-discover-bacteria-trapped-in-endless-evolutionary-time-loop
アメリカのウィスコンシン州にあるメンドータ湖は季節による環境の変化が激しく、冬には氷が湖面を覆い、夏には藻が繁茂します。メンドータ湖には複数のバクテリアが生息していますが、同じ種類のバクテリアでも菌株によって適応する条件が異なり、夏に活性化するものもあれば冬に活性化するものもあるなどさまざまな特徴が見られるといいます。
by trevorklatko
テキサス大学オースティン校のロビン・ローワー氏らは、メンドータ湖から20年にわたって採取された471個の水サンプルを調査し、それぞれのバクテリアが時間経過に伴ってどのような遺伝形質を獲得しているのかを確認しました。
その結果、メンドータ湖に生息するバクテリアのほとんどの種が1年の間に急速な進化を遂げていることがわかったとのこと。個々のバクテリアの寿命はわずか数日であったためかその進化スピードはめまぐるしく、1年間で何千世代もの進化が起こっていたのですが、季節が移り変わるとほとんど1年前と同じ状態に戻ることがわかったとのことです。
ローワー氏らは「遺伝子の変異は何世代にもわたって増減を繰り返し、季節が巡るとまた元に戻りました。まるで再生されたビデオが逆再生されて元に戻っているかのようです」と述べました。
遺伝的変化は、平年より暑く乾燥した夏を経験した2012年に特に顕著でした。この年、湖に流れ込む水の量が減った結果、窒素を産生する藻類の量が低下したためか、バクテリアの窒素代謝を司る遺伝子が大幅に変化していました。
ローワー氏らによると、研究対象となった2855種のバクテリアは周囲の環境に合わせて進化し、うち20%は数十年にわたる持続的な遺伝的変化が見られたそうですが、残り80%は毎年ほぼ同一の遺伝的状態に戻っていたそうです。
この研究の共著者である海洋科学者、ブレット・ベイカー氏は「この研究は、微生物が時間とともにどのように変化するかについての我々の理解を大きく変えるものです」と述べました。なお、この研究には膨大な計算能力が必要で、ノートPCでは解析に34年かかると見られていましたが、テキサス先端コンピューティングセンターのスーパーコンピューターを使って数か月で完了したそうです。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1p_kr
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