人類は宇宙の特別な場所にいるのだろうか?
人類は長い間、地球は宇宙にふたつとない世界の中心だと思ってきましたが、観測技術の発達により太陽以外にも無数の恒星があることや、そうした恒星の多くに地球のような惑星があることを知りました。しかし、新しい観測データにより「世界はどこも同じだ」という考えが実は間違っている可能性が浮かび上がってきています。
Do We Live in a Special Part of the Universe? | Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/do-we-live-in-a-special-part-of-the-universe/
宇宙は均質で、どの方向を向いても同じに見えるという考えは、宇宙原理という形で宇宙論の根幹に組み込まれています。
実際に宇宙を観測すると、銀河の集まりである銀河団でできた超銀河団や、さらにその超銀河団でできたフィラメントなどの大規模構造などがあることがわかりますが、それらさえ宇宙のスケールからすれば「どこにでもある普通の場所」だというわけです。
イギリスにあるセントラル・ランカシャー大学のアレクシア・ロペス氏は、宇宙の星々を海辺の砂浜に例えて、「一握りの砂を顕微鏡でのぞくと、形や大きさが違う色とりどりの砂粒が見えますが、砂浜を歩きながら眺めると均一なベージュ色にしか見えません」と説明しました。
この均質性があるからこそ、人類は近くの天体を観察して得た知識を宇宙の果てにある天体に当てはめたり、宇宙の一部を観測して宇宙全体についての確かな推測を打ち立てたりできます。
宇宙を単純化できる宇宙原理は便利で、天文学者はダークマターが銀河団に及ぼす影響の計算から、生命に適した条件が宇宙全体でどのくらい一般的なのか推測することまで、さまざまな場面でこの法則を足がかりにしています。
ロペス氏は「すべては宇宙原理が真実だという考えに立脚していますが、これは非常にあいまいな仮定でもあります。ですから、検証は非常に困難です」と話しました。
宇宙原理はまだ天文学者たちから見限られていませんが、疑いの目を向けられつつあります。1つのアプローチは、非常に大きなスケールから見ても宇宙の均質さが疑わしくなるほど巨大な構造を見つけることで、具体的には約12億光年よりも広大なものが見つかれば、均質さは破綻するだろうと予測されています。
その候補は既にいくつか見つかっており、例えばロペス氏は2021年に約33億光年にわたって銀河が弧を描く「ジャイアントアーク」を発見しているほか、2024年には直径13億光年、長さ40億光年に達する巨大な「ビッグリング」も見つけています。
宇宙論の研究自体も、宇宙原理に疑問を投げかけるきっかけとなっています。例えば、ビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射には、完全なランダムには見えない謎の大規模変動があり、これには満足のいく説明がなされていないと、ミシガン大学の宇宙学者のドラガン・フテラー氏は述べています。
科学者の中には、宇宙原理に対するこのような試練は「宇宙論的分散」という別の原理で説明できるかもしれないという人もいます。宇宙論的分散とは、宇宙を観測したデータに内在する統計的な不確実性のこと。人類には観測可能な範囲という限界があり、限られたサンプルから導き出す結論には常に不確実性が伴います。
つまり、天文学者が観測した変動は、宇宙の本質的な性質の表れなのではなく、単なるデータの揺らぎによるものの可能性があります。そう考えると、宇宙の均質さに疑問を投げかけるような異常な場所が見つかったとしても、観測可能な範囲の向こうに広がる未観測の領域も含めてみれば、十分に均質だと言えるかもしれません。
宇宙の非常に大きい範囲に関する研究では、特にサンプル数が限られます。フテラー氏は「『銀河の形を研究したい』という研究者は幸せです。宇宙には数十億の銀河があり、統計を駆使して疑問を解決することが可能で、サンプル中の分散は非常に小さいからです」と話しました。
一方、観測可能な宇宙は約930億光年しかないので、数十億光年ものサイズの構造はほんの数例しか見つけることができません。
このように、宇宙原理の課題は統計上の問題だと考える天文学者もいれば、宇宙原理には再考の余地があると考える天文学者もいます。
フテラー氏は「原理の破綻を裏付ける決定的な証拠はありませんが、非常に興味深い例外はいくつかあります。しかし、宇宙原理を支持するせよ否定するにせよ、これは難しい問題です。何度でも繰り返し行える実験室でのテストとは違って、宇宙は1つしかありません」と話しました。
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in サイエンス, Posted by log1l_ks
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