天の川銀河を観測する宇宙望遠鏡「ガイア」がスカイスキャンフェーズを完了
天の川銀河の詳細な三次元地図を作成することを目的としてヨーロッパ宇宙機関(ESA)が2013年12月に打ち上げた宇宙望遠鏡「ガイア」は、これまでに約3兆回以上にわたって、約20億の星やその他の天体の観測を行いました。しかし、冷却ガス推進剤の不足を理由としてガイアの天体観測フェーズを終了することをESAが発表しました。
ESA - Last starlight for ground-breaking Gaia
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Last_starlight_for_ground-breaking_Gaia
ESA - Sky-scanning complete for Gaia
https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2025/01/Sky-scanning_complete_for_Gaia
ガイアにはアストロメトリック機器や半径方向速度スペクトロメーター、測光装置という3つの科学機器が搭載されており、2013年12月19日の打ち上げ以来、何度も星の位置や距離、動き、明るさの変化、組成など多くの特性を図表化してきました。
また、天の川銀河のスキャンの過程でガイアはさまざまな小惑星や銀河、ブラックホール、クエーサーなどの天体を発見しました。ESAは2022年6月に、ガイアが観測したデータを解析したデータセット「Data Release 3(DR3)」を公開しました。DR3には、天の川銀河に存在する約20億個の恒星のデータや太陽系内の小惑星、恒星の化学組成や温度、色、質量などの情報が含まれています。
国際大学協会で教育天文学オフィスの科学ビジュアライザーを務めるステファン・ペイン・ウォーデナール氏は「ガイアは私たちの天の川に対する印象を大きく変えました。ガイアの観測により天の川銀河中心の回転や渦巻腕の詳細な構造、太陽の近くの星間塵など、基本的な考え方までもが見直されました」と述べています。
ガイアは1日あたり約12gの冷却ガス推進剤を用いて回転していますが、ESAによると、長年にわたる観測の中でガイアの冷却ガス推進剤が不足しつつあるとのこと。そこでESAは2025年1月15日に、ガイアによる天体観測を終了したことを発表しました。
ESAの科学ディレクターであるキャロル・マンデル氏は「本日をもってガイアによる科学観測は終了しますが、ガイアは当初の予測寿命のおよそ2倍の時間働いてくれました。私たちは期待を超える今回のミッションの成功を祝っています。ガイアが収集したデータの宝庫は、天の川銀河の起源と進化についての知見を私たちに与えてくれました。また、天体物理学と太陽系科学を大きく変革してくれました。ガイアが残した観測データは、将来の世代への長期的な遺産となるでしょう」と述べています。
ESAによると、天体観測フェーズが完了したガイアは重力的に安定している「ラグランジュ点2」にとどまっている間にさまざまな技術試験を実施する予定とのこと。その後、ガイアは地球の影響圏から遠く離れた太陽を中心とする周回軌道に入り、他の宇宙船との衝突や干渉を防ぐために2025年3月27日をもってシャットダウンされます。
今後ガイアの運用チームは2026年半ばに「Data Release 4(DR4)」、2020年代末までに全ミッションを解析したデータセット「Data Release 5(DR5)」を発表する予定で、ガイア科学運用チームリーダーのロシオ・ゲラ氏は「シャットダウンまでの数カ月間で、私たちはガイアが収集したデータの最後の一滴まで解析を続けていきます。同時に、私たちは2020年代の終わりに公開されるDR5に向けて準備を進めていきます」と報告しました。
ガイアプロジェクトサイエンティストのヨハネス・サールマン氏は「宇宙で11年間を過ごしたガイアは幾度となく微小な隕石との衝突や太陽嵐にさらされ、本日科学データの収集という役目を終えました。そして我々は次のデータリリースの準備に目を向けています。ガイアのミッション成功と我々を待つ新たな発見に興奮しています」と語っています。
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in サイエンス, Posted by log1r_ut
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