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アマゾンのジャングルに少なくとも26年間1人で住み続けた部族の生き残り「穴の男」が死去


アマゾン南西部の小さな村に1人で暮らし、謎めいた大きな穴を掘っていたことから「穴の男」と呼ばれた先住民族が亡くなりました。26年間も1人で生き続けた男の人生と、先住民族と現地政府の関係性について、イギリス大手紙のThe Guardianが掘り下げています。

Brazil’s mysterious ‘man of the hole’ is dead. Should his land remain protected? | Indigenous peoples | The Guardian
https://www.theguardian.com/global-development/2024/dec/24/brazil-man-of-the-hole-dead-land-protected-indigenous-uncontacted-people-amazon

The coveted legacy of the ‘Man of the Hole’ and his cultivated Amazon forest
https://news.mongabay.com/2023/11/the-coveted-legacy-of-the-man-of-the-hole-and-his-cultivated-amazon-forest/

穴の男の素性は謎に満ちており、何らかの理由で非先住民からの援助を拒み続け、調査団の接触があっても言葉すら発さなかったといいます。そのため穴の男は名前すら明らかになっておらず、形式的に「タナル」という名前が与えられていました。タナルはいわゆる未接触部族(アイソラード)に当たる人間で、現地職員いわくタナルの家族は入植者により虐殺された可能性があり、先住民族の最後の生き残りだと考えられているそうです。


以下が、タナルを捉えた映像です。

Fresh footage released of last survivor of Brazilian Amazon tribe - YouTube


タナルは少なくとも26年間、森の中で1人で暮らしており、自分のテリトリーを移動し、いくつもの家を建て、作物を植え、狩りをしたほか、家の中に謎めいた大きな穴をいくつも掘っていたことで知られています。穴が何のために使われたのかは明らかになっておらず、調査団は信仰と関係しているのではないかと推測しています。


1996年にブラジル政府機関の国立先住民財団(Fundação Nacional dos Povos Indígenas:FUNAI)の調査チームがタナルに出くわしたとき、タナルは抵抗し、木々の間からFUNAIに矢を放ちました。2007年、FUNAIのチームは再び接触を試みましたが、またしてもタナルはこれを退け、チームの1人が矢でひどい傷を負いました。


2022年、タナルはハンモックに横たわったまま息を引き取りました。タナルの死は1つの民族の絶滅を意味し、また80平方キロメートルにおよぶジャングルの土地権利問題という新たな火種を生むことにもなりました。

ブラジルの憲法では、先住民族の土地は先住民族のものであると定められており、法的には政府が土地を所有して先住民族が土地の権利を有していることになっています。ところが、タナルは先住民族の最後の生き残りであり、タナル自身が外界との接触を拒んだことから、タナルが属していた民族の土地は法的に認められていたものの、その境界が定められることはこれまでありませんでした。このため、他の土地とは違い、タナルには一時的な土地の使用制限が与えられるという特別な措置が執られていました。

タナルが亡くなったことから、周辺の土地を所有している人々はタナルが住んでいた土地を解放するよう政府に訴えていますが、政府はタナルの死後も土地は先住民族のものとして守られるべきだと考え、改めて正しく境界を定め、政府の土地のままとしておくのが適当だと反論し、訴訟に発展しています。タナルの土地の保護は、政府が過去に先住民殺害を奨励したことへの反省としての意味合いも強く、生きている先住民族の繁栄のためでなく賠償のために土地の保護が求められるのは初めてのことだそうです。

ブラジルでは1964年から1985年までの軍事独裁政権時代に白人入植者や牧場主が住民から森林を奪うことが奨励されており、さまざまな証言によれば、先住民族は毒殺され、意図的に天然痘を投与され、時にはヘリコプターで追跡されるなどの迫害を受けた過去があったことが明らかになっています。

そのため、多くのアイソラードは21世紀以降も他人との接触を拒む者が多いといいます。ブラジルはアイソラードとの不要な接触を禁止する政策をとっていますが、接触を避けるべき民族が存在することを証明するためには、誰かが接触して彼らの存在を証明しなければならないため、FUNAIなど政府機関がその役割を担っています。


先住民人権監視団のファビオ・リベイロ氏は「土地の境界画定のプロセスは何年も泥沼の状態です。未接触部族の特定は難しく、まず最初に集団の存在を証明しなければならないのです。これまでに114の異なるグループが報告されていますが、そのうち85はFUNAIによる体系的な調査が行われていません。これは非常に多いです」と指摘しています。政府もFUNAIに対して進行を要請していますが、FUNAI側も「人員、予算、訓練が大幅に不足している」と不満を訴えているのが現状だそうです。

The Guardianは「タナルの死により、先住民の土地権利争いをめぐる複雑さ、歴史的な残虐行為の影響、そして未接触部族に対する継続的なリスクが浮き彫りになった」と伝えました。

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in Posted by log1p_kr

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