「毒入り精液」を出すようにオスの蚊を遺伝子組み換えして感染症媒介を防ぐ試み
蚊は人間から吸血する際にデング熱やジカ熱、マラリアといった感染症を媒介するため公衆衛生上の脅威となっており、人間を最も多く殺している生物であるともいわれています。近年は感染症を媒介する蚊を撲滅する試みが進められており、新たに「毒入り精液」を出すようにオスの蚊を遺伝子組み換えする方法が提案されました。
Recombinant venom proteins in insect seminal fluid reduce female lifespan | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-024-54863-1
'Toxic' Semen Could Turn Mosquito Mating Deadly to Curb Disease Spread : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/toxic-mosquito-semen-could-turn-mating-deadly-to-curb-disease-spread
Male mosquitoes to be genetically engineered to poison females with semen in Australian research | Health | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2025/jan/07/male-mosquito-semen-poison-females-australian-research
マラリアなどの感染症を媒介する蚊を撲滅するため、近年は子孫が繁殖できないように遺伝子組み換えしたオスの蚊を野生に放つ実験も行われています。この技術を開発したバイオテクノロジー企業のOxitecは2022年、野生での実験から「オスと交配して致死遺伝子を受け継いだすべてのメスが成体になる前に死亡した」という有望な結果を報告しました。血を吸うのは交尾後のメスの蚊のみであるため、メスの数を減らすことで感染症の媒介を防ぐことが可能とみられます。
蚊を撲滅するために「子孫が繁殖できないように遺伝子組み換えした蚊を野生に放つ」という実験の結果は? - GIGAZINE
しかし、蚊の子孫をターゲットにした従来の方法では、遺伝子組み換えしたオスの蚊と交配したメスの蚊は、交配後も数週間ほど生き続けます。その間、メスの蚊は人間から血を吸うことができるため、すでに病原体を持っている場合は引き続き感染症を媒介するおそれがあります。
そこでオーストラリア・マッコーリー大学の研究チームは、危険なメスの蚊の寿命を直接減らすために、オスの蚊が「毒入り精液」を出すように遺伝子組み換えする方法を考案しました。
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