なぜ蚊に好かれる人とそうでない人がいるのか?

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マラリアといった病気を人に感染させる原因になることから、蚊を撲滅するための技術が開発されています。一方で、同じ場所にいても「蚊に刺されやすい人」「蚊に刺されにくい人」がいますが、これはなぜなのか?という事についてYouTubeのサイエンスチャンネル「Veritasium」がわかりやすく解説しています。
Why Are Mosquitoes Attracted To You?! - YouTube

自称「蚊に好かれやすい人」であるDerek Alexander Mullerさんがやってきたのはアメリカのニューメキシコ州。なぜ蚊に好かれやすい人とそうでない人がいるのか?を調査したこれまでの研究から、蚊に好かれやすいか否かには、DNAの一部が関係しているとみられています。

Mullerさんが会いに来たのは、ニューメキシコ州立大学で蚊の研究を行うImmo A. Hansen教授。

研究室で出迎えてくれた、画像の男性がHansen教授。

Hansen教授はラボで何種類もの蚊を飼っており、エサとしてHansen教授の血を与えている種もいるそうです。学生たちに「血をわけてくれない?」と聞くわけにはいかないので、自分の血をエサにしているとのこと。

「どうやってエサをあげるんですか?」という問いに対し、「腕を入れてしばらく待つだけだよ」と実践してみせるHansen教授。

蚊が血中のタンパク質を必要とするのは卵を産むためなので、吸血するのはメスの蚊のみ。

研究室には蚊の幼虫がすくすく育つ容器もありました。

「どうやったら自分が蚊に好かれているかわかるんですか?」と本題に入るMullerさん。

その答えとしてHansen教授が取り出したのはY型のチューブでした。

Yの字になっている方と逆の端には、20匹の蚊がみっしり閉じ込められていました。先端にはファンもついており、蚊が解放されるとファンの力で蚊がチューブのY字部分へと押し出されます。この装置を使って自分が蚊に好かれているかどうかを確かめられるとのこと。

まずは最初に手をもんだり、首の後ろについた汗を手の平に移したりします。

閉じ込められている蚊は人間を吸血することに特化された種。

仕切りの網を動かし蚊を解放すると……

Y字チューブの先、Mullerさんがかざす手に向かって蚊が向かい出しました。20匹中20匹の蚊がMullerさんの手元に向かうという状況に、「君はすごく魅力的なようだ」とHansen教授。

このような実験は、蚊に好かれることに遺伝子が関係しているかどうかを調べる研究で実際に行われました。

一卵性双生児18組と、二卵性双生児19組を被験者とした実験では「双子の片割れが蚊に好かれやすい場合、もう片方も蚊に好かれやすい」という調査結果が示されました。しかし、双子は育った場所や食生活が同じであるため、この結果は環境要因によるものだとも考えられます。

そこで二卵性双生児と一卵性双生児の研究結果が比較されたところ、一卵性双生児の方が相関関係が強いことが示されました。これは、「蚊に好かれやすさ」に遺伝的な影響が及んでいることを強く示す証拠だとのこと。

続いて研究室では、Mullerさんとその妻のRaquelさんを比較実験することに。

Y字の端の片方にRaquelさんの手、もう片方にMullerさんの手を置いたところ、Raquelさんの方に向かった蚊はわずか5匹。つまり、他の人と比較してもMullerさんは蚊に好かれやすいことが示されたわけです。

これは遺伝子的に説明できるのか?ということでMullerさんとRaquelさんとDNAの7箇所についてテストを行いました。

2017年の研究で1万6000人の被験者について「蚊に好かれやすいのか?」がゲノムワイド関連解析で調べられたところ、「蚊に好かれやすい」と語る人々はDNAの7箇所で「蚊に好かれない」と語る人々との違いが見られたとのこと。

この7箇所のDNAの違いが、「蚊に好かれやすさ」に関係しているとみられています。そこでMullerさんとRaquelさんは、互いのDNAがどうなっているのかを調べました。

この結果、「蚊に好かれやすい人」と関連するDNA7箇所中4箇所で、2人のDNAは同じ形だったとのこと。つまり2人のDNAの違いは3箇所で、Raquelさんは「著しく蚊に好かれない」、つまり「蚊から身を守る」DNAを持ち、Mullerさんも別の場所に「蚊から身を守る」DNAを持っていたものの、Raquelさんよりも大きな違いではなかったとのこと。そして、Mullerさんはそれに加えて「蚊に好かれやすい」DNA変異が大きかったため、遺伝子的にRaquelさんよりもずっと「蚊に好かれやすい」ことが示されていたそうです。

ただし「蚊に好かれやすいか否か」には遺伝子以外の部分も大きく関係しています。二酸化炭素がその1つで、代謝が高かったり運動を終えたばかりだったり、あるいは体が大きかったりすると、より蚊に好かれやすくなるとのこと。

乳酸、アセトン、アンモニアといった揮発性物質にも蚊は反応します。

また、オクタナール、ノナノール、デカナール、メチルヘプテノンといった物質も、蚊が人間を見つけやすくします。蚊は人間を最も殺している生き物といわれていることから、これらの遺伝的な関係を明らかにすることは非常に重要だとみられています。

「蚊は人間にとって最悪の生き物ですか?」と聞かれて「間違いなく」「マラリアは、人間が殺した人の数よりもはるかに多くの人間を殺しています」と答えるHansen教授。蚊はこれまでに人類の半数以上を殺してきたと主張する人も存在し、この割合は「大きすぎる」として議論されていますが、それでも多くの人が蚊を原因とした病気によって命を奪われているのは事実です。

「人間が蚊を遠ざける匂いを発する形で進化している可能性はありますか?それとも『蚊に好かれない人』がいるのは偶然でしょうか?」と尋ねられると……

「それはすごくいい質問だね!」とHansen教授は答えつつも、答えはまだないようでした。

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