Googleの親会社は世界中の蚊を撲滅するための技術を開発中
Googleの親会社であるAlphabetの研究者たちが、蚊を媒介とする病気を根絶するため、蚊の卵が孵化しなくなる技術を開発しています。
Why Google Is Killing Off Fresno’s Mosquitoes
https://www.bloombergquint.com/business/how-to-kill-mosquitoes-google-and-verily-have-a-plan
黄熱病を媒介する攻撃的な蚊の一種である「熱帯シマカ(アエデス・アエギプティ)」は、わずか数ミリメートルの翼幅しか持っていません。そんな熱帯シマカを、Alphabetのバンがカリフォルニア州ブレズノの町中に散布しています。
Alphabet傘下のVerily Life Sciencesで上級科学者として勤めるヤコブ・クラウフォード氏によると、町に放たれた熱帯シマカはサウスサンフランシスコから200マイル(約320km)離れた場所にある自動化された蚊飼育システムの中で飼育されたもの。この飼育システムで育てられた熱帯シマカはボルバキアという細菌に感染しているそうです。Verily Life Sciencesが散布した「ボルバキアに感染したオスの熱帯シマカ」は8万匹で、これらが野生のメスの蚊と交尾すると、メスの蚊が生んだ卵は決して孵化しなくなるので、時間が経過するごとに町から蚊は消えていくことになります。
カリフォルニア・セントラルバレーの乾燥した気候では、熱帯シマカは病気を感染させることはありませんが、害虫として非常に嫌われています。しかし、熱帯地域ではデング熱やチクングニア熱といった世界中で広がりをみせる致命的な疾病を媒介することで知られています。これらの疾病は年間何百万人が感染しており、感染した何万人もの人々が死に至っているとのこと。
しかし、Verily Life Sciencesが行ったように熱帯シマカにボルバキアを感染させれば、最終的には致命的な病気の媒介となる蚊を病気と一緒に撲滅することができる可能性があります。なお、カリフォルニアで行われているフィールドテストでは、所定の位置でアルゴリズムにより自動で計算された「散布に適した数の熱帯シマカ」が放出されています。
蚊を撲滅することで感染病などを防ごうとしているのはVerily Life Sciencesだけではありません。Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏も、マラリア撲滅のために媒介する蚊に「遺伝子ドライブ」技術で手を加えるという研究に取り組んでいます。
ビル・ゲイツがマラリア撲滅のために有効な「遺伝子ドライブ」技術は5年以内に登場すると発言 - GIGAZINE
蚊が繁殖しないようにするために、雄の熱帯シマカにボルバキアを感染させるわけですが、ボルバキアは元々熱帯シマカが運ぶ細菌ではなかったため、感染させるための新しい方法が必要でした。最初に蚊にボルバキアを感染させる試みに挑戦していたのはフレズノの「モスキートメイト」という企業。このモスキートメイトの取り組みをVerily Life Sciencesがスケールアップし、より高度な繁殖および放出技術を作り出したそうです。
Verily Life Sciencesは既にボルバキアに感染した熱帯シマカをブレズノの町中に2度散布しており、過去6か月で散布した数は1500万匹を超えています。その結果、2017年にはメスの蚊の数が3分の2程度に減少しており、さらに2018年には蚊全体の数が95%も減少したことが調査により明らかになっています。Verily Life Sciencesはアメリカだけでなくオーストラリアでも同様の実験を行っており、ここでも蚊の数を80%減少させることに成功しました。
なお、Verily Life Sciencesの蚊を繁殖するための飼育システムは、自動化がかなりのレベルで進んでいます。ひとたび卵が飼われると、ロボットは蚊を大人になるまで育てる「水と空気で満たされた容器」に詰め込みます。容器の中では機械が自動で蚊にエサを与え、温度は暖かく保たれています。さらに、他のロボットが光学的な独自技術を使用して蚊の性別を判断し、それらを分類します。加えて、卵の状態から孵化・育成され最終的に屋外に放出された蚊には、特定のGPS座標まで追跡することが可能になるデジタル識別子が与えられているそうです。
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