サイエンス

殺虫剤に耐性を持つ蚊が登場、殺虫成分を含む蚊帳の効果は?

by Christian Haugen

熱帯・亜熱帯地域では、マラリアが疾病・死亡の主要な原因となっていることから、マラリアを媒介する蚊の対策として、殺虫成分を練り込んだ蚊帳が導入されています。殺虫成分を含む蚊帳を長期間使っていると蚊が殺虫成分に耐性を持つようになり、かえって局地的なマラリアの再流行をもたらす恐れがあると指摘されていましたが、最新の研究では「殺虫剤への耐性を持つ蚊に対しても、殺虫成分を含む蚊帳は有効である」ということが判明しています。

Delayed mortality effects cut the malaria transmission potential of insecticide-resistant mosquitoes
http://www.pnas.org/content/early/2016/07/05/1603431113

Insecticide-resistant mosquitoes still fall victim to bed nets | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/07/insecticide-resistant-mosquitos-still-fall-victim-to-bed-nets/


殺虫成分を含む蚊帳は、熱帯・亜熱帯地域でマラリアの患者数減少とマラリアを媒介する蚊自体の減少に大いに役立っています。このような蚊帳を使うことで、ほとんどの蚊は殺虫剤の効果で数時間以内に死にますが、中には殺虫成分に耐性を持ち24時間以上も生き続ける蚊も現れています。

蚊帳の効果で蚊の数は減少傾向にあるため、殺虫成分を含む蚊帳を使っていてもなお生き延びている蚊について研究することで、さらなるマラリア対策につなげることができるとのこと。そこで、グラスゴー大学で疾病について研究しているMafalda Viana博士と獣医学者のAngela Hughes氏らは、殺虫剤の耐性を持つ複数の種類の蚊を対象に実験を行いました。実験では、蚊を殺虫剤にさらしたり、殺虫剤と血粉(乾燥させた血液)を同時に与えたりして、蚊の生存率を調査。実験結果とベイズ確率を用いて、殺虫剤にさらされてもなお生き残る蚊の数を予測し、殺虫剤の効果が現れるのが遅い蚊や、マラリアが伝染する可能性を推定しました。

Viana博士とHughes氏らが発表した論文によれば、「殺虫剤の耐性を持つ種類の蚊であっても、殺虫剤にさらされていると寿命が縮んだり死亡率が上がったりする」ということが判明したとのこと。死亡率は蚊の種類によって異なるものの、どの蚊についても殺虫剤の効果は認められたそうです。つまり、殺虫成分を含む蚊帳によって、殺虫剤に耐性を持つ蚊が登場していますが、このような蚊帳はそれでもマラリア予防に非常に効果的であると言えるとのこと。論文では、「殺虫成分を含む蚊帳は効果的ですが、マラリア予防を完全に行うには、蚊帳に加えて他の予防策も講じるべき」だと結論づけています。

by InOutPeaceProject

なお、過去には蚊のゲノムを編集することでマラリア原虫に耐性を持つ蚊を生み出し、マラリア予防に役立てる取り組みも行われています。

ゲノム編集でマラリア原虫に耐性を持つ蚊が誕生、マラリア克服の決め手になる可能性 - GIGAZINE

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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