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反ユダヤ主義的なWikipedia編集者を特定・標的にする計画を保守系シンクタンク・ヘリテージ財団が推進していることが判明


アメリカの保守系シンクタンクであるヘリテージ財団が「Wikipedia編集者の標的化」という計画を推進していることを、アメリカ最大のユダヤ系新聞・The Forwardが明らかにしました。

Scoop: Heritage Foundation plans to ‘identify and target’ Wikipedia editors – The Forward
https://forward.com/news/686797/heritage-foundation-wikipedia-antisemitism/


The Forwardは独自入手したという資料も公開しています。

Wikipedia Editor Targeting
(PDFファイル)https://forward.com/wp-content/uploads/2025/01/Heritage-Wikipedia-Oversight-Project-Forward.pdf

資料によると、作戦概要は「データ侵害の分析やフィンガープリンティング、HUMINT、技術的ターゲティングを通じたテキストパターンやユーザー名、技術データの分析を通じて、地位を乱用するWikipedia編集者を特定し、標的にする」となっています。ヘリテージ財団は寄付希望者に対して「計画は反ユダヤ主義と戦う活動の一環」と説明していたそうです。

この取り組みが具体的にどのような「反ユダヤ主義」に対処するものなのかは不明ですが、一部のユダヤ人団体からは、2023年10月に発生したイスラエルとハマスの戦争の影響を受ける形で更新されたWikipediaの記事の内容に対する不満の声が上がっていました。


また2024年6月、Wikipediaの編集者らはアメリカ最大のユダヤ人団体である名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League:ADL)を、ソースとしての利用を禁止あるいは部分的に禁止する対象リストである「一般的に信頼できない情報源」に分類しました。決定にまつわる議論に参加した編集者らは、「ADLが親イスラエル団体として活動し、イスラエルに対する正当な批判を反ユダヤ主義だとレッテル貼りをする傾向があるため、反ユダヤ主義に関する事実情報として引用されるべきではない」と意見を述べています。

ADL faces Wikipedia ban over reliability concerns on Israel, antisemitism - Jewish Telegraphic Agency
https://www.jta.org/2024/06/18/united-states/adl-faces-wikipedia-ban-over-reliability-concerns-on-israel-antisemitism

さらに2024年秋には「シオニズム」の記事内に「植民地化」についての言及が追加されて、ユダヤ人学者や親イスラエル活動家らが反発していました。

記事作成時点でWikipedia日本語版にはありませんが、英語版など7言語で「Wikipediaとイスラエル・パレスチナ紛争」という独立した記事が作られています。

Wikipedia and the Israeli–Palestinian conflict - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia_and_the_Israeli%E2%80%93Palestinian_conflict


The Forwardはヘリテージ財団に「標的化とはどういうことなのか?」などの質問を送付したものの、返答はなかったとのこと。

なお、Wikipediaの編集者であるタムジン・ハダサ・ケリー氏によると、編集者を狙って身元を特定しようとする「ドキシング」は珍しいものではなく、編集者が匿名性を維持するのは難しいところがあるとのこと。Wikipedia編集者を狙ったドキシング手法としては、偽のユーザーアカウント経由で個人情報を共有する方法や、個人を特定可能な追跡リンクを送りつける方法などがあります。ただ、今回のような、身元特定を試みる大規模な動きは初とみられています。

ジャーナリストのモリー・ホワイト氏はThe Forwardに対して「標的にしたあとどうするか、資料では具体的に記載されていませんが、あまりいいことは思い浮かびません」とコメントしています。

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in ネットサービス, Posted by logc_nt

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