「毎日同じトレーニングをしてはいけない」と専門家が言う理由とは?
健康には運動が欠かせないため、一定のメニューを定期的にこなすのは体にいいように思えます。しかし、そのようなトレーニング法ではかえって逆効果になりかねないと、スポーツ科学の専門家らが主張しました。
Why you should avoid doing the exact same workout everyday if you want to get fit
https://theconversation.com/why-you-should-avoid-doing-the-exact-same-workout-everyday-if-you-want-to-get-fit-245387
◆そもそもトレーニングはどう体を変えるのか?
イギリスのアングリア・ラスキン大学で運動生理学を研究しているダン・ゴードン教授らによると、健康を改善するにはあえて体の「恒常性」を乱す必要があるとのこと。恒常性とは、生物の体が外部環境の変化にかかわらず安定した内部環境を維持することです。
ジムでのトレーニングなどで体にかかる負荷もある種の外的な要因であり、身体にストレスを与えて内部環境を変化させ、恒常性を乱す効果を持っています。そして、トレーニングが恒常性を乱すストレス要因となった結果、平常運転だった体の内部環境が変化し、疲労という形で反応が表れます。
運動が身体に与えるストレスが大きいほど疲労も大きくなり、逆に運動の合間に休息日を設けるなどしてストレスがなくなると、疲労もなくなっていきます。
実は、この疲労こそ身体の適応の極意であり、疲労が大きいほど適応の可能性が高まって体力が向上すると、ゴードン氏らは話します。一方、運動によるストレスが恒常性を乱さなければ、身体の適応を引き起こすほどの疲労も発生しません。
このようなことが起きるのは、適応により恒常性の「セットポイント」が調整され、疲労反応を起こすのに必要な最小限のストレスが増加するからです。
この現象があるため、フィットネスレベルを継続的にアップさせるためには、トレーニングに変化を付けて体にストレスと疲労を起こし続ける必要があります。この原理は「漸進性(ぜんしんせい)過負荷の原理」として知られています。
ゴードン氏らは「身体に新たな課題が課せられると、最初のうちは適応反応が起きます。しかし、漸進性過負荷の原理を適用しない限り、そうした変化はせいぜい現状維持にとどまります。しかも、場合によっては向上したフィットネスレベルが失われ、最後には元の木阿弥になってしまう可能性すらあります」と述べました。
◆効果的にトレーニングする方法と注意点
漸進性過負荷を達成する基本的な方法は「運動の強度を上げる」「頻度を増やす」「トレーニングの時間を長くする」の3つです。
トレーニングに漸進性過負荷の原理を適用することには、心理的なメリットもあります。例えば、トレーニングに新鮮味がなくなるなどして楽しめなくなると、モチベーションが失われて、運動をやめてしまうことがよくあります。そこで新しいエクササイズを取り入れたり、慣れてしまったルーチンに変化をつけたりすると、モチベーションを維持したりトレーニングを楽しんだりするのに役立ちます。
ただし、注意点もいくつかあります。まず、疲労しすぎるとパフォーマンスが低下し、ケガなどの原因になるおそれもあるので、疲れすぎないようにしなくてはなりません。
その人の体力次第ですが、急に負荷がかかりすぎるのを防いで効果的に運動するには、4~8週間に1回トレーニングの強度を上げれば大抵は十分とのこと。
また、適応反応が起きるのはトレーニング中ではなく回復期間中だというのも重要で、トレーニングの強度を上げていく際は全体的なトレーニング時間を短くすることを目指すと、疲労の弊害を回避することができます。
さらに、単純に強度の高い運動をするだけではフィットネスレベルと健康の改善にはつながらないため、多様な生理的適応を促すには低・中・強度の運動を組み合わせる必要があります。
◆まとめ
ゴードン氏らは締めくくりに「同じトレーニングを続けるのが、身体活動を継続する最も簡単な方法のように思えるかもしれませんが、長期的には逆効果になる可能性があります。健康を維持したい場合は、強度を上げたりエクササイズを調整したりして4~6週間ごとにトレーニングを変化させ、ウエイトトレーニングや有酸素運動などさまざまなアクティビティを組み合わせるようにしてください。いつトレーニングを変えればいいかを知るために、運動の記録をつけるといいでしょう」と述べました。
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