FacebookではURLを含む投稿の75%が「リンク先のコンテンツを読まないままシェアされている」ことが判明
FacebookをはじめとするSNSには誰かの投稿を「シェア(共有)」する機能があり、目を引きやすいニュースや話題はたくさんシェアされて多くのユーザーの目に留まります。ところが、ペンシルベニア州立大学のシャム・スンダー教授らの研究チームが行った研究では、「FacebookではURLを含む投稿の75%がリンク先のコンテンツを読まないままシェアされている」ことが判明しました。
Sharing without clicking on news in social media | Nature Human Behaviour
https://www.nature.com/articles/s41562-024-02067-4
Study finds 75% of Facebook shares are made without reading the content
https://www.psypost.org/study-finds-75-of-facebook-shares-are-made-without-reading-the-content/
SNSは一般の人々がコンテンツのURLを共有し、特定のニュースや話題を拡散することを可能にしていますが、SNS上で拡散されるニュースの中にはフェイクだったり偏ったりするものも含まれます。また、投稿を数回タップするだけで投稿を共有可能なため、時にはニュースの見出しや「いいね」の数だけを見て信頼度や重要性を判断し、リンク先のコンテンツを見ずに拡散しているケースもあるとのこと。このような行動は、特に政治的な分野でのフェイクニュースの拡散につながる可能性があると懸念されています。
そこでスンダー氏らの研究チームは、SNSで行われるシェアについて調査を行いました。スンダー氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「私の考えでは、シェアはソーシャルメディア上で最も影響力のある行動のひとつです。シェアは個人のネットワークを通じて広がる情報の相乗効果をもたらすだけでなく、近年はオンラインの誤情報のまん延に拍車をかけています」「ほとんどの人が気付いていないのは、ソーシャルメディアの友人や家族は発信する前に事実を吟味し、ダブルチェックするジャーナリストとしての訓練を受けていないということです。私たちは彼らがシェアするものなら何であれ、それに左右されてしまいがちなのです」と述べています。
スンダー氏らは「リンクをクリックしないままURLをシェアする」という現象について理解するため、Facebookとハーバード大学の学術組織・Social Science Oneのコラボレーションでリリースされた膨大なデータセットを分析しました。このデータセットには、2017年から2020年にかけてFacebookでシェアされた3500万件以上のURLに関する、数十億件ものインタラクションが含まれていました。
まず研究チームは、政治的なキーワードを特定するように訓練された機械学習分類器を使用して、URLを政治的なコンテンツと非政治的なコンテンツに分類しました。政治的なコンテンツには選挙やその候補者、その他の党派的なトピックに関連するURLが含まれており、非政治的なコンテンツにはエンターテインメントや一般的なニュースまで多岐にわたったとのこと。
さらに、Facebookのユーザーをリベラル派・中立派・保守派といった政治的傾向で分類し、それぞれのユーザーの政治的イデオロギーとコンテンツの内容が「shares without clicks(クリックしないでシェアする)」に関連しているのかどうかを分析しました。また、ファクトチェックが行われたURLを具体的に調査し、誤情報の拡散パターンについても特定したそうです。
研究の結果、FacebookにおけるURLを含む投稿のシェアのうち、なんと約75%がリンク先をクリックしないまま行われていることが判明しました。つまり、多くのユーザーはリンク先のコンテンツを読んで確認しないまま、投稿の見出しや発信者、いいねの数といった表層的な情報だけを参考にして、URLを含む投稿をシェアしているというわけです。
この傾向は特に政治的なイデオロギーが極端な投稿で強くなり、コンテンツがリベラルだろうと保守的だろうと、中立的なコンテンツと比較してクリックなしでのシェアが多くなりました。また、ユーザーは自分の政治的イデオロギーに沿ったコンテンツをクリックせずにシェアすることが多く、これはユーザーが既存の偏見を裏付ける見出しに引きつけられていることを示唆しています。さらに、ファクトチェックによって虚偽だと特定されたURLは、事実のコンテンツよりもクリックされずにシェアされる可能性が高いことも報告されました。
スンダー氏は、「重要なポイントは、Facebookでシェアされているリンクのほとんどは、シェアしている人がコンテンツを読まないままシェアされているということです。これは、ソーシャルメディアのユーザーがニュースのリンクを自分たちのネットワークに発信することを決定する際、見出しや宣伝文句をちらりと見るだけで済ませることを示しています。このような拡散は相乗効果をもたらし、オンラインの数百万人もの人々に情報が急速に広まる可能性があります。その結果、誤報が活発となって、フェイクニュースや陰謀論が広まる可能性があります」と述べました。
なお、今回の研究はあくまで集計データに依存していたため、個々のユーザーの行動を直接観察していない点には注意が必要です。たとえば、ユーザーは別のところで読んだニュースのリンクをSNSで見つけ、すでに中身を知っているからクリックせずにシェアした可能性もあります。また、この調査ではFacebookのみに焦点を宛てているため、X(旧Twitter)やInstagramなど、他のプラットフォームにも同様のパターンがあるのかどうかは不明とのこと。
研究チームは今回の研究結果を基に、ソーシャルメディアがユーザーに対して「シェアする前にリンク先の投稿を読むように促す」ことで、誤情報の拡散を減らせるようになる可能性があると主張。スンダー氏は、「コンテンツが虚偽の可能性があるという警告をプラットフォームが発し、ユーザーにその危険性を認識させれば、人々がシェアする前に考えるのに役立つかもしれません」と述べました。
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