リモートワークを廃止して週5日の強制出社に切り替えるAmazonが「オフィスのスペース不足」で出社日を延期する事態に
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの中で多くの企業がリモートワークを導入しましたが、リモートワークは生産性が落ちると考えている経営幹部は多く、Googleやテスラなどはリモートワークを廃止しています。Amazonも2025年1月から週5日のオフィス出社を基本とする方針を打ち出しましたが、「従業員がオフィスで働くのに十分なスペースがない」ことを理由に、少なくとも7都市では従業員の出社を最大4カ月遅らせることが判明しました。
Amazon (AMZN) Delays Return-to-Office Mandate for Thousands of Workers - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-12-18/amazon-delays-return-to-office-mandate-for-thousands-of-workers
Amazonも他の大手企業と同様にパンデミック下でリモートワークを導入しましたが、アンディ・ジャシーCEOはリモートワークを廃止して、従業員を徐々にオフィスへ回帰させる方針を強めています。2023年8月には、リモートワークの継続を訴える従業員に対して「週3日の出社を拒否し続けるのであれば、おそらくAmazonではうまくいかない」とジャシーCEOが警告したことも話題となりました。
AmazonのCEOがリモートワークを続ける従業員に「おそらくAmazonではうまくいかない」と警告 - GIGAZINE
そして2024年9月には、Amazon従業員に対して週5日のオフィス出社を基本とする方針を打ち出しました。これに伴い、障害のある従業員がリモートワークの許可を得るためのプロセスが厳格化されており、申請に数週間もかかるようになってしまったとのこと。
Amazonが「週5日のオフィス出社」への方針転換を断行 - GIGAZINE
ところがアメリカのオースティンやダラス、フェニックスを含む7都市にあるAmazonのオフィスでは、従業員が週5日出社したら全員が働くのに十分なスペースが確保できないとして、出社日を最大4カ月遅らせることが従業員に通知されたとのこと。
すでにAmazonは多くの従業員に対して週3日の出社を義務づけていますが、この状態でさえオフィスのスペース不足が問題になっていると指摘されています。最近のインタビューでは、従業員らは共有デスクで仕事をしていることや食堂が混雑していること、機密性の高い電話やチームミーティングのための会議室が不足していることなどに不満を漏らしました。
パンデミックに伴うリモートワーク推進からの揺り戻しにより、テクノロジー企業は高品質のオフィススペースを借りるのに苦労しています。Amazonはここ数週間にわたり、ニューヨークとシリコンバレーでコワーキングスペースのWeWorkからオフィススペースを借りているとのことです。
アメリカの大手企業ではオフィスへの復帰(Return-to-office:RTO)が盛んとなっていますが、代表的な株価指数であるS&P 500を構成するハイテクおよび金融企業の労働者300万人以上を追跡した調査では、RTOが従業員の離職率を上昇させて新規採用を難しくすることが示されています。
Return to Office Mandates and Brain Drain by Yuye Ding, Zhao Jin, Mark (Shuai) Ma, Betty (Bin) Xing, Yucheng (John) Yang :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5031481
Companies issuing RTO mandates “lose their best talent”: Study - Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2024/12/companies-issuing-rto-mandates-lose-their-best-talent-study/
調査では企業がRTOポリシーを発表した後、平均離職率は14%増加することが判明し、特に女性従業員やスキルの高い上級従業員で離職率が高いことがわかっています。スキルの高い従業員は他の企業とのつながりが多く、新しい仕事を見つけやすいことから、RTOが義務化された場合に転職しやすいのではないかとみられています。
また、RTOを義務づけている企業では、それ以前と比較して新しい人材の雇用に苦戦することも示されています。調査によると、企業がRTOを義務づけると求人枠を埋めるのにかかる時間が約23%増加し、採用率が17%減少したとのことです。
テクノロジー系メディアのArs Technicaは、RTOが従業員の離職や採用に悪影響を及ぼす理由について、RTOによって「経営陣による従業員の監視を奨励する文化への不信感」や「経営陣の意思決定能力への疑念」が増すのではないかと指摘。また、事前のコミュニケーションが不十分だった場合、RTOの発表は従業員にとって不愉快な突発イベントとなるため、転職といったネガティブな反応を引き起こしやすいとのことです。
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