サイエンス

常にリモートワークをしている人はオフィスで働く人と比べて二酸化炭素排出量が約半分という研究結果


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、他人との不要な接触を減らすためにリモートワークを推進する企業が増加しましたが、近年は多くのテクノロジー企業がリモートワークの縮小や廃止を進めています。アメリカのコーネル大学やMicrosoftによる研究では、常にリモートワークを行う従業員はオフィスで働く従業員と比較して、二酸化炭素排出量が約半分に減ることが示されました。

Another reason to love remote working: it’s good for the planet
https://www.nature.com/articles/d41586-023-02918-6


Lifestyle impacts green benefits of remote work | Cornell Chronicle
https://news.cornell.edu/stories/2023/09/lifestyle-impacts-green-benefits-remote-work

People who work from home all the time ‘cut emissions by 54%’ against those in office | Greenhouse gas emissions | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2023/sep/18/people-who-work-from-home-all-the-time-cut-emissions-by-54-against-those-in-office

「リモートワークになると電車や車で通勤しなくて済むため、二酸化炭素の排出量が削減できる」という主張に同意する人は多いはずですが、実際のところ仕事と二酸化炭素排出の関係は通勤だけにとどまりません。これを詳しく知るためには、通勤によるラッシュや渋滞の影響、オフィスにおけるエネルギー使用量、在宅勤務時のエネルギー使用量など複数の要因を調べる必要があります。


そこで研究チームは、通勤とテレワークに関するMicrosoft従業員のデータを含む複数のデータセットを使用し、アメリカにおけるオフィスワーカー、リモートワーカー、そしてオフィス勤務とリモートワークを交互に行うハイブリッドワーカーの二酸化炭素排出量を予測しました。

分析の結果、常に在宅で働いているリモートワーカーは週5日出勤するオフィスワーカーと比較して、二酸化炭素排出量が54%減少するという結果が示されました。一方、週2~4日の在宅勤務を行うハイブリッドワーカーが削減する二酸化炭素排出量は11~29%で、週1日の在宅勤務ではわずか2%の排出量削減にとどまることもわかりました。


リモートワーカーやハイブリッドワーカーにおける二酸化炭素排出量の削減は、主にオフィスにおけるエネルギー使用量の減少と、通勤に伴う二酸化炭素排出量の減少が原因でした。また、労働者が通勤しなくなることにより、通勤ラッシュ時の車両渋滞が緩和されて燃費が向上するなど、副次的な効果も得られます。

その一方で、リモートワーカーは仕事に関係ない自動車や飛行機での移動が増加したほか、自宅における家電製品の使用など、オフィスワーカーとは違う場所で二酸化炭素を排出しました。また、住宅設備は必ずしも脱炭素化に最適化されているわけではなく、オフィスと同じ作業でもより多くの二酸化炭素を排出するケースがあるとのこと。

さらにリモートワーカーやハイブリッドワーカーに影響を与えたのが、COVID-19のパンデミックに伴う郊外への移転です。通勤日が減った一部の労働者は、住居を大都市やオフィスに近い都市部から自然に近い郊外へ移しましたが、これによってハイブリッドワーカーの通勤距離が増加し、自家用車の使用が増えるといった影響も考えられるそうです。

論文の共著者でありコーネル大学のエネルギーシステム工学教授を務めるFengqi You氏は、「リモートワークはゼロカーボンではなく、ハイブリッドワークのメリットは完璧な線形を描くわけではありません」「人々は『私は自宅で仕事をしているので二酸化炭素排出ゼロです』と言いますが、それは真実ではありません」と指摘しています。


今回の研究結果は、在宅勤務が不可能な多くの労働者には当てはまりませんが、オフィスを拠点とする雇用主が企業全体の二酸化炭素排出量を削減するための指針となり得ます。また、アメリカだけでなくヨーロッパや日本でも同様の傾向が再現される可能性が高いとのこと。

研究チームは、「リモートワークは二酸化炭素排出量を削減する可能性を示していますが、その環境上の利点を完全に実現するには、通勤パターン、建物のエネルギー消費、車両の所有、および通勤に関係のない移動を慎重に検討することが不可欠です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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