サイエンス

リモートワークは生産性を向上させる、新型コロナウイルスのパンデミック以降もリモートワーカーがパンデミック以前と比べて5倍増加


2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、さまざまな企業でリモートワークが普及しました。パンデミックの収束に伴って、次第にオフィス勤務に回帰しようとする動きも強くなっていますが、国際通貨基金(IMF)は、在宅勤務の割合がパンデミック前の約5倍に増加しているほか、在宅勤務は時間やお金を節約できることを指摘しています。

Working From Home Is Powering Productivity
https://www.imf.org/en/Publications/fandd/issues/2024/09/working-from-home-is-powering-productivity-bloom


約3万人を対象としたこれまでの調査で、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降リモートワークに切り替えた人々は急増しており、パンデミックが発生した2020年にはリモートワークを行う人々の割合がパンデミック以前にリモートワークを実施していた人々の約10倍となる60%を突破。パンデミックが収束傾向にある2021年以降もパンデミック前の約5倍、3万人中約30%の会社員がリモートワークを続けていることが(PDFファイル)報告されています。

以下のグラフはパンデミック前後でリモートワークを行うようになった人の割合です。パンデミックが発生した2020年に急増したリモートワーカーが2021年以降もリモートワークを続けていることが示されています。


また、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッドワーク」を取り入れると、給与が8%増加することも(PDFファイル)明らかになっています。IMFによると、一般的な労働者は週5日勤務する場合、週平均約8時間を通勤に費やし、約45時間をオフィスで過ごしているとのこと。そのため、週に3回リモートワークを行うだけで、約5時間の時間の節約につながるだけでなく、1週間の勤務時間と通勤時間の合計を約10%節約することが可能です。

さらに、ハイブリッドワークは家事や子育ての分担を可能にするため、出生率が向上する可能性も示唆されています。これまでの調査では、夫婦が週に1日以上リモートワークを行っている場合、1家庭あたり子どもを0.3~0.5人多く希望することが報告されています。

加えて、リモートワークが普及すると、企業が必要とするオフィススペースは小規模なものとなります。この結果、住宅や小売業などに余ったオフィススペースを貸し出すことが可能になり、そのスペースをほかの用途に活用できるようになります。また、リモートワークの普及で都市の交通量が減っていることも明らかになっており、(PDFファイル)2024年1月の調査では、朝の通勤ラッシュの時間帯ではパンデミック前から車の速度が時速2~3マイル(約3.2~4.8km)上昇しているとのことで、IMFは「一般的な会社員は1日に数分の節約につながります」と述べました。


長期的には、従業員が部分的または完全にリモートで作業できるようにすることで、十分に活用されていない土地を住宅用に開放し、使用可能な土地供給を効果的に増やすことが可能です。また、出社の必要性の低下から、都市中心部から外れた郊外の住宅用地の需要が高まることも示唆されました。

これまでの研究で、ハイブリッドワークは従業員の生産性を低下させないことが明らかになっています。また、リモートワークの普及で会社のポジションに適合した従業員をこれまで見つけられなかった国や地域でも手軽に見つけられるようになります。IMFは「リモートワークは、従業員と企業のグローバルなマッチングを可能にし、労働生産性を向上させます」と語っています。

さらに、リモートワークの普及によって在宅勤務という新たな働き方に対応するための新たなテクノロジーが数多く生み出されており、アメリカ特許商標局における(PDFファイル)新規特許出願のうち、「リモートワーク」や「在宅勤務」に関する製品の割合は2020年以降急速に増加しています。


IMFは「リモートワークの普及により、より優れたウェブカメラやモニター、拡張現実、仮想現実、ホログラムなどのテクノロジーが生まれています。将来的にはハイブリッドワークやリモートワークの生産性がさらに向上するでしょう。これにより、生産性の向上とリモートワークの間に正のフィードバックループが生じる可能性があります」と述べました。

スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授は「新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降におけるリモートワークの普及は、パンデミック前の生産性の鈍化を全体的に相殺しています。私の経済学者としての生活の中で、これほど広範囲に広がる有益な変化はみたことがありません」と語っています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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