TikTokを利用したルーマニア大統領選挙妨害疑惑について欧州委員会がTikTokをデジタルサービス法に基づき正式に調査開始
欧州委員会は2024年11月に行われたルーマニア大統領選挙に関連して、TikTokが選挙の公正性に関連するリスクを適切に評価・軽減する義務を怠った疑いがあるとして、デジタルサービス法(DSA)の下で正式な調査手続きを開始したと報告しました。
Commission opens formal proceedings against TikTok under DSA
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_6487
EU to investigate TikTok's response to election security risks in Romania | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/12/17/eu-to-investigate-tiktoks-response-to-election-security-risks-in-romania/
ルーマニアでは2024年11月から数週間にわたって大統領選挙が行われました。この第1回投票で、事前世論調査ではランク外だった極右・親ロシア派・無所属のカリン・ジョルジェスク氏が得票率22.94%で1位に躍り出ました。ほぼ無名だったジョルジェスク氏が投票で1位になったのは、TikTok上で約2万5000人分のボットアカウントを運用した大規模な選挙運動が展開されたことが大きく影響しているといわれており、その背景にはロシアの介入が疑われました。
「TikTok動画が選挙結果に与える影響が大き過ぎる」としてルーマニア規制当局がTikTokの一時停止を要求、大統領選挙で親露・極右の無所属候補がTikTokで扇動し1位になったため - GIGAZINE
2024年12月6日、ルーマニアの最高裁判所は第1回投票の結果を無効にするという判決を下しました。また、欧州委員会はDSAに基づき、TikTokに「EU圏内の選挙プロセスや市民の議論に影響をもたらす可能性があるデータを保存せよ」という命令を下しています。
TikTokが原因でルーマニアの大統領選挙が無効になったとの判決、極右候補を支援するロシアの介入が背景に - GIGAZINE
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2024年12月17日付けで発表した声明で、「民主主義を外国からの干渉から守る必要性を強調し、外国勢力がTikTokを使用してルーマニア大統領選挙に介入した重大な兆候があることを受けて、詳細な調査を実施する」と述べました。
今回行われる調査では、「TikTokのレコメンダーシステム」と「政治的な広告やコンテンツ」が対象となります。レコメンダーシステムに関しては、アルゴリズムが選挙関連の情報をユーザーに表示している仕組みやその影響を含んだ、プラットフォーム上での組織的な不正操作や自動化された悪用のリスクが調査されます。政治的な広告やコンテンツに関しては、有料の政治コンテンツの取り扱いやそれらが選挙に与える影響について調査が行われるとのこと。
調査における欧州委員会は、暫定措置や不遵守決定などの執行措置を取る権限を持っており、TikTokが問題解決のために提案するコミットメントを受け入れることもできます。
TikTokの広報担当であるエリオット・バートン氏は「世界中で150回以上行われている選挙を通じて、当社はプラットフォームの完全性を守り、業界全体の課題に積極的に取り組んでいます。TikTokはこれらの取り組みに関する詳細な情報を欧州委員会に提供しており、当社の断固たる行動の詳細を透明性を持って公開しています」と主張。また、「当社は有料の政治広告を受け入れておらず、誤報、嫌がらせ、ヘイトスピーチに関する当社のポリシーに違反するコンテンツを積極的に削除しており、要請に対応し懸念事項について議論するために欧州委員会や地域・国家当局と協力を続けています」と述べました。
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