カフェインがドーパミンをブロックしてアルコール依存症の治療に役立つ可能性
さまざまな飲料に含まれているアルコールとカフェインは、世界中の人々の生活に影響を及ぼす化学物質であり、その精神薬理学的な作用について広く研究されています。新たにイタリアとアメリカの研究チームが、カフェインはアルコールによる脳の報酬系への影響を妨げ、アルコール依存症(アルコール使用障害)の治療に役立つ可能性があることを示しました。
Receptor and metabolic insights on the ability of caffeine to prevent alcohol-induced stimulation of mesolimbic dopamine transmission | Translational Psychiatry
https://www.nature.com/articles/s41398-024-03112-6
Caffeine's impact on brain's mesolimbic dopaminergic pathway could reduce alcohol's addictive effects
https://www.psypost.org/caffeines-impact-on-brains-mesolimbic-dopaminergic-pathway-could-reduce-alcohols-addictive-effects/
Caffeine Seems to Have a Blocking Effect on Dopamine, And Here's Why : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/caffeine-seems-to-have-a-blocking-effect-on-dopamine-and-heres-why
スクリプス研究所の博士研究員であるリカルド・マッチョーニ氏らは、マウスを対象にした2020年の研究で、カフェインがアルコールによって条件付けられた行動の一部を妨げることを実証しました。
マッチョーニ氏らは、アルコールの活性に対するカフェインの作用は、中脳辺縁系のドーパミン作動性経路によって媒介される可能性があると仮説を立てました。この経路は報酬プロセスと薬物中毒の初期段階に強く関連しており、経路が活性化するとドーパミンが放出されて報酬が知覚されるとのこと。
今回の研究ではオスのマウスを対象にして、側坐核と腹側被蓋野のドーパミンニューロンの活動と、ドーパミンレベルや脳内化学物質を測定しました。マウスは「アルコールのみを投与されたグループ」「アルコールとカフェインの両方を投与されたグループ」「カフェインと比較するために特定の薬物を投与されたグループ」など、さまざまな状態に分けられました。
実験の結果、カフェインは特に側坐核において、アルコールによって引き起こされるドーパミンの放出を効果的にブロックすることが判明しました。さらにカフェインは、アルコールの報酬効果に関連するサルソリノールと呼ばれる化学物質の生成を防ぎ、ドーパミンニューロンの刺激を妨げる可能性もあることがわかりました。
マッチョーニ氏は、「カフェインは特に報酬を媒介する特定の脳領域でのドーパミン放出を妨げるため、アルコールの前にカフェインを摂取すると、アルコールによる快感の知覚が低下する可能性があります」と述べ、カフェインを摂取することでアルコール使用障害から保護できるかもしれないと主張しています。
さらに今回の研究では、アルコールではなくサルソリノールとモルヒネを投与した場合でも、カフェインがそれらの影響をブロックすることが確認されました。これは、カフェインがアルコール使用障害だけでなく、その他の薬物使用障害の治療にも役立つ可能性を示唆するものです。
マッチョーニ氏は、「この研究で使用されたマウスは、過去にアルコールにさらされたことがありませんでした。すでにアルコールに依存している動物に対するカフェインの影響を見るのは興味深いでしょう」「その後、この研究がアルコール使用障害の潜在的な治療標的について、洞察に満ちた案を提供できるかどうかを検証することに興味を持っています」と述べました。
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