サイエンス

IQが高い子どもはADHDだと診断される年齢が遅れてしまう可能性


注意欠如多動症(ADHD)は多動性や衝動性、不注意などを特徴とする発達障害であり、学童期の子どもの3~7%がADHDであると診断されています。カナダの研究チームが行った研究では、「IQが高い子どもほどADHDだと診断される年齢が遅くなる」ことがわかりました。

Sex and intelligence quotient differences in age of diagnosis among youth with attention‐deficit hyperactivity disorder - Hare - 2024 - British Journal of Clinical Psychology - Wiley Online Library
https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjc.12485


Children With High IQs Get ADHD Diagnosed Later, Study Reveals : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/children-with-high-iqs-get-adhd-diagnosed-later-study-reveals

ADHDは動き方や集中力、衝動の制御方法などに違いを及ぼし、子どもの学習や発達に大きな影響を与えます。そのため、診断が早ければ早いほどさまざまな対策が取りやすく、ADHDに関連する行動上の問題や学業成績の低下などを防ぐことができます。


しかし、これまでの研究では女性の方がADHDだと診断されにくい可能性や、IQの高い人ほどADHDだと診断されるのが遅くなる可能性が示唆されています。また、社会経済的地位や民族などがADHDの診断に影響を及ぼしている可能性もあるとのこと。

そこでウェスタンオンタリオ大学クイーンズ大学の研究チームは、ADHDだと診断された4歳~22歳の若者568人のデータを収集し、性別やIQ、社会経済的地位といったさまざまな要因と、ADHDだと診断された年齢との関連性を分析しました。


分析の結果、被験者のIQが高ければ高いほど、ADHDだと診断される年齢が遅くなる傾向が明らかになりました。また、「社会経済的地位が高い」「母親が非白人である」「ADHDの症状が行動に出ないものである」といった要因も、診断年齢の遅れに関連していたとのことです。

以下のグラフは、縦軸が「被験者がADHDだと診断された年齢」を、横軸が「被験者のIQ」を表しています。個人によってばらつきはあるものの、全体的に見ればIQが高いほどADHDの診断年齢が遅くなっているのがわかります。なお、研究チームは以前の研究結果に基づいて、「IQが診断年齢に及ぼす影響は男子より女子の方が大きいのではないか」と考えていましたが、今回の研究では女性のサンプルサイズが小さかったため、 性差は確認できませんでした。


今回の結果は、周囲から賢いと思われていたり、自身の症状を隠すのが上手だったり、母親の民族性がマイノリティだったりする子どもは、ADHDを見落とされる可能性が高いことを示唆しています。

研究チームは将来の研究で、ADHDの症状が見落とされており、まだADHDの診断を受けていない患者を被験者に含める必要があると主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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