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TikTokでは若者を食い物にする「ADHDの自己診断や治療をオススメする広告」が許可されている


注意欠陥・多動性障害(ADHD)は多動性や衝動性、不注意などが特徴の発達障害であり、学齢期の子どもの約3~7%が抱えるといわれています。そんなADHDに関する「自己診断や治療」をオススメする広告が、若者に人気のショートムービー共有SNS・TikTokで許可されていると報じられています。

TikTok is enabling predatory ADHD advertisers to target young users | Media Matters for America
https://www.mediamatters.org/tiktok/tiktok-enabling-predatory-adhd-advertisers-target-young-users

2022年1月28日、アメリカのNBCニュースが「TikTokやInstagramで『ADHDと肥満を関連付ける広告』が表示されている」と報じました。この広告はメンタルヘルスに関するオンライン診療サービスを提供するスタートアップ・Cerebralが掲載したもので、ジャンクフードに囲まれた女性の映像に「衝動的に生きる人は衝動的に食べる」というテキストをのせ、「ADHDの成人は肥満率が5倍」と述べて、メンタルヘルスの障害を治療することが過食を防ぐと主張したとのこと。

NBCニュースがこの広告について問い合わせたところ、Instagramの親会社であるMetaやTikTokは広告を削除したと報告されています。しかし、SNS関連のメディアであるMedia Mattersによると、依然としてTikTok上ではNBCニュースが取り上げたものと類似したADHD関連の広告が表示されているそうです。

Media Mattersが例示したCerebralの広告を見ると、「How to Recognize Inattentive ADHD in Women(女性の不注意なADHDの見分け方)」と表示した後に、「spacey(ぼうっとする)」「forgetful(忘れっぽい)」「chatty(おしゃべり)」といった要素を上げ、最終的に「you can take control of your ADHD(あなたはADHDをコントロールできます)」と述べています。


Cerebralの広告で取り上げられている「ぼうっとする・忘れっぽい・おしゃべり」といった要素は非常に一般的であり、これだけに基づいて「自分はADHDだ」と自己診断してしまうことは危険です。Media Mattersによると、TikTokではADHDの障害を過度に単純化して「ADHDの特徴」「ADHDチェック」といった形で紹介するムービーが多数投稿されているそうで、Cerebralの広告はこの流れに便乗したものだとのこと。

近年ではメンタルヘルスや発達障害に関する知識が一般化すると共に、TikTokなどのSNSで不適切な自己診断を推奨することの問題指摘されています。ADHDの症状を一般化して広めることは、TikTokがコミュニティガイドラインで禁止している「個人の身体的健康に害を及ぼす可能性のある医学的誤情報」に該当する可能性があるとMedia Mattersは述べています。

また、別のオンライン診療サービスを提供するスタートアップ・Doneは、より明示的な形でユーザーにADHDの自己診断を推奨し、ADHDを治療できるという自社サービスについて宣伝していたとのこと。Doneは「6つの質問に答えるだけでDoneが助けになるかどうか確認できる」として、1分間の質問に答えるよう要求していました。この質問は正式な診断を下すものではありませんでしたが、「ADHDの可能性が高いかどうか」をユーザーに伝え、Doneのサービスを使えば認可された医療従事者との面会予約を入れることができると主張したそうです。

Doneの広告はTikTokで人気の音楽やフォーマットを使用しており、特に若者をターゲットにしていることがうかがえるとのこと。


別の広告では、18歳未満の若者が不安や抑うつ症状、知能の後れ、怠惰などを経験する場合はADHDの可能性があると主張し、Doneのサービスや薬を利用すれば問題を改善できると示唆しています。


他にもDoneは「空虚感」「モチベーションの低下」などをADHDに結びつけていますが、シラキュース大学の心理学教授であるKevin Antshel氏は、これらの感覚はADHDの患者に限らず、パンデミックにおいて非常に一般的なものであると指摘しました。その一方で、CerebralやDoneが提供するオンライン診療サービスについては、多くの人がメンタルヘルスケアにアクセスするのを助ける可能性があると認めています。

すでに一部のユーザーは医療関連企業がTikTokで広告を流し、ADHDを治療するために投薬治療を推奨しているということに気付いているとのこと。Media Mattersは、誤った方法でADHD治療薬を服用することには医療上のリスクがあると指摘したほか、TikTokは若いユーザーの誤解を招くような広告を許可しているだけでなく、これらの広告企業から利益を得ていると非難しました。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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