「TikTokが拡大するほど動画クリエイターは収益が少なくなる」という落とし穴がある
動画共有アプリのTikTokは2021年9月に月間アクティブユーザー数が10億人に到達したことを発表しました。TikTokに動画を投稿するクリエイターも増加していますが、その収益構造に「落とし穴」があることが指摘されています。
Hank Green Has A Problem With TikTok's Creator Fund: "When TikTok Becomes More Successful, TikTokers Become Less Successful." - Tubefilter
https://www.tubefilter.com/2022/01/24/hank-green-tiktok-creator-fund-earnings-per-view/
How creator funds fall short for creators - by Casey Newton
https://www.platformer.news/p/how-creator-funds-fall-short-for
動画共有プラットフォームとしてはYouTubeが世界的なシェアを誇っていますが、一方でTikTokも近年は大きな成長を見せています。2021年12月にはアメリカとイギリスでTikTokの「1ユーザーあたりの平均動画再生時間」がYouTubeを超えたことが判明しました。
TikTokの「動画の平均再生時間」がついにYouTubeを超える - GIGAZINE
YouTubeもTikTokも収入の大部分が広告収入です。両プラットフォームともに、クリエイターに優れた動画をたくさん投稿してもらい、オーディエンスを拡大していき、より多くの広告を表示することで収益を得ています。プラットフォームが得た収益は「プラットフォーム運営企業が得るもの」と「クリエイターに還元されるもの」の2つに分けられ、例えばYouTubeであればこの収益分配に「YouTube Partner Program」という仕組みを採用しています。
YouTube Partner Programは2008年に発表されたもの。それまでクリエイターは「コンテンツが公開されることで直接収益を得る」ことができませんでしたが、YouTube Partner Programはこれを根本から変えた画期的な仕組みであると評価されています。
YouTube Partner Programを利用するには「チャンネル登録者数が1000人以上」「有効な公開動画の総再生時間が直近の12か月間で4000時間以上」「AdSenseアカウントを持っている」といった一定の要件を満たす必要があります。この要件を満たしプログラムに参加するチャンネルは、「動画に表示された広告収入のうちYouTubeは45%を、クリエイターは55%を受け取る」という分割ルールに則って収益を得ることが可能です。これはつまり、YouTubeの動画が視聴され収益全体が多くなるほど、クリエイターへ分配される収益も大きくなることを意味しています。
一方でTikTokの収益構造は、YouTubeとは全く異なります。YouTubeとは違い、TikTokは再生される動画そのものに広告を貼りません。TikTokにおいて広告は「動画と動画の間に挟まれるもの」となっています。このため個々のクリエイターが「自分の動画に表示された広告から収益を直接得る」ことはできないとのこと。
「YouTubeのようにクリエイターに収益が還元されない」という問題を解決すべく、TikTokは2020年にクリエイター支援のために2億ドル(約210億円)規模のファンドを創設しました。このクリエイターファンドにおける収益分配の詳細は公開されていませんが、「動画の総再生時間から比例分配される」と考えられています。
この年間2億ドルという額を365日で割ると、1日あたり55万ドル(約6400万円)になります。6400万円は少ない額ではないものの、分配額に上限があるということは、「クリエイターの数が増加して再生回数の多い動画が増えるほど、個々のクリエイターの取り分が少なくなる」ということを意味します。
実際に、人気のYouTubeチャンネル「SciShow」の創設者であるHank Green氏は、「TikTokにおいて2020年は1000ビューあたり5セント(約6円)のあった収益が、2021年には2.5セント(約3円)になった」と述べています。つまり、YouTubeは「プラットフォームが拡大するほどクリエイターが収益を増やせる仕組み」であるのに対し、TikTokは「プラットフォームが拡大するほどクリエイターの収益が少なくなる」という仕組みになっているわけです。
So...TikTok Sucks - YouTube
またGreen氏の調査によって、TikTokのユーザーはだいたい10回動画を再生するごとに1回の広告が表示されるとのこと。Green氏が試しに広告を出してみたところ、1000ビューを得るための広告費用は3~6ドル(約350~700円)だったそうです。調査から、Green氏はTikTokが得る広告収益が「広告の1視聴あたり30〜60セント(約35~70円)」になると考えており、クリエイターへの分配割合がYouTubeよりも圧倒的に少ないことを指摘。また、TikTokがYouTubeと同様の仕組みを採用した場合、クリエイターへの分配は現状の最低6倍になると述べました。
Green氏は、YouTubeとTikTokではプラットフォームの成長段階が異なり、TikTokは「拡大すること」に焦点を置いているフェーズなのかもしれないとしつつも、「TikTokのクリエイター経済には落とし穴がある」と指摘しました。
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