ADHDとデジタルメディアの使い過ぎには関連性があると研究
by Elijah O'Donell
10代の少年少女約2800人を対象とした2年間にわたる研究で、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と現代のデジタルメディアの関係が初めて長期的に調査され、ADHDの症状とデジタルメディアとの間には関連性がみられることが明らかになりました。
Association of Digital Media Use With Subsequent Symptoms of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Among Adolescents | JAMA | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2687861
Symptoms of ADHD in teens linked to heavy screen time - The Verge
https://www.theverge.com/2018/7/17/17581486/adhd-digital-media-technology-teens
南カリフォルニア大学で予防医学について研究を行うAdam Leventhal氏らは、スマートフォンの使用が一般的になった現代におけるADHDとメディアの関わりについて初めて長期的な研究を行いました。調査対象となったロサンゼルスの高校に通う10代の少年少女2800人に対し、ADHDの症状とデジタルメディアの使用について問うアンケートを実施。アンケートの中身は被験者に「すぐに気が散る」「直接話しかけられても話を聞かない」といった質問に答えてもらうと共に、ソーシャルメディアやテキストメッセージ、ストリーミング、オンラインショッピングなど14タイプのデジタルメディアの使用頻度を尋ねるものでした。
by Luke Porter
「ADHDが先かソーシャルメディアが先か」ということをはっきりさせるため、2800人の被験者のうち、調査開始当時からADHDの症状が顕著にみられる人は調査対象から除外されました。研究開始当時にADHDの症状を持たなかった生徒は2600人で、これらの被験者がその後2年にわたって追跡調査されています。
その結果、研究チームはまず、被験者全体の81%が少なくとも1つのデジタルメディアを1日のうち複数回使用していることを報告しています。そして、あまりデジタルメディアを使用しない被験者495人は、調査開始後においてADHDだと診断される割合が4.6%だったのに対し、7~14のデジタルメディアを頻繁に使っている114人の被験者はこの割合が9.5%、つまり約2倍となっていることが判明しました。14全てのデジタルメディアを使っている51人の被験者はこの割合が10.5%でした。
ただし、この研究は被験者の自己申告に基づいて調査を行っており、被験者が症状を認めることを拒否したり、症状について忘れていたりする可能性があるという制約が存在します。また、デジタルメディアそのものではなく、「通知」によって被験者の集中力が途切れ、ADHDの症状が出た可能性があるなど、具体的な原因もはっきりしていません。さらに、貧困や心理的ストレス、機能不全家族といった環境的な原因によって子どもたちがデジタルメディアに没頭し、集中力が妨げられている可能性も考えられます。
by Lacie Slezak
今回の研究は、あくまでADHDとデジタルメディアとの間には何らかの関連性が見られることがわかったということを示したものであって、「デジタルメディアの頻繁な使用がADHDの症状を引き起こす」とは結論づけておらず、「ADHDの症状が少年少女にどのような影響をもたらすのか」を明らかにしたものでもありません。若い子どものいる親は、この研究結果を見て「テクノロジーは子どもたちに悪影響を与えるんだ!」とパニックに陥るのではなく、まず「テクノロジーへの反応や動機付けについて、子どもと話し合うこと」が推奨されています。
これまでに行われた研究から、ソーシャルメディアとうつの関係が注目されていますが、現実にはまだ因果関係を明確にするところまではいっていません。ソーシャルメディアがうつを引き起こすのではなく、うつ状態にある人は現実で社会的な行動を取るのが難しいため、その代わりとしてオンラインでの人間関係に重きを置いているという可能性もあるとのこと。これと同様に、ADHDの研究結果も、「ADHDの症状が子どもをデジタルメディアに向かわせる」ということと、「インターネットに作業を中断されることで我慢して勉強したり、衝動をコントロールしたりすることが難しくなるというADHDの症状がでる」という両方の可能性が考えられています。
・関連記事
TwitterやFacebookが脳に与えている5つの影響とは - GIGAZINE
毎日2時間以上SNSを利用している若者は心理的苦痛や自殺念慮を抱えている割合が高いことが明らかに - GIGAZINE
世界中で少年少女を次々と自殺に追い込んでいく謎の死のゲーム「青い鯨(Blue Whale)」とは? - GIGAZINE
最もメンタルヘルスに悪いアプリは「Instagram」 - GIGAZINE
機械学習を使った調査で「うつ」病の人がよく使いがちな言葉が判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ