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新型コロナウイルスのパンデミック中に若者の精神状態が改善したという報告


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、世界各地で都市封鎖などの対策が講じられたため、多くの人々が精神的に不安定になったことが報じられています。ところが、多くの成人がメンタルヘルスの不調を訴えているにもかかわらず、「10代の若者たちはパンデミック中にメンタルヘルスが改善した」との研究結果が報告されました。

Teens in Quarantine: Mental Health, Screen Time, and Family Connection
(PDFファイル)https://ifstudies.org/ifs-admin/resources/final-teenquarantine2020.pdf

How Teens Handled Quarantine - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/family/archive/2020/10/how-teens-handled-quarantine/616695/

Why COVID-19 quarantine helped teen mental health, though adults struggled more - Deseret News
https://www.deseret.com/indepth/2020/10/13/21513309/covid-19-quarantine-teens-mental-health-jean-twenge-depression-loneliness-byu-family-studies

パンデミックやそれに伴う都市封鎖などの対策が日常生活に与えた影響は大きく、人々は親しい友人との接触や長距離の移動が制限されたほか、飲食店などの業種は大きな経済的損失を被りました。影響を受けたのは成人に限らず、学生たちも授業がリモートに移行したり友人と会えなくなったりと、多くの変化にさらされています。

そこで、アメリカのブリガム・ヤング大学サンディエゴ州立大学Institute for Family Studiesの研究チームは、パンデミック中にティーンエイジャーがどのように反応したのかを調べるため、アメリカに住む1523人のティーンエイジャーを対象に調査を行いました。


研究チームは2020年5月~7月にかけて、ティーンエイジャーを対象に「メンタルヘルス」「家族と過ごす時間」「睡眠習慣」「テクノロジーの利用」「人種差別に対する抗議活動への見解」などに関するアンケートを行いました。このうち、メンタルヘルスは「人生への不満」「不幸度」「うつ状態」「孤独感」という4つの尺度で評価されたとのこと。

今回の調査結果を、2018年に行われたティーンエイジャーのメンタルヘルスに関する調査結果と照らし合わせたところ、「ティーンエイジャーのメンタルヘルスはパンデミック中に悪化していないどころか、一部の側面では改善していた」ことが判明しました。

メンタルヘルスに関する2018年の調査結果と、パンデミック中の学校があった期間および夏休み期間の調査結果を示した図がこれ。黒線で示された「孤独感」と黒の破線で示された「うつ状態」が、2018年と比較してパンデミック中は大幅に減少していることがわかります。一方、黄線で示された「人生への不満」と黄の破線で示された「不幸度」は、2018年とパンデミック中であまり変わらないという結果になっています。


今回の研究を率いたサンディエゴ州立大学の心理学者・Jean Twenge氏は、過去5~6年間でティーンエイジャーのメンタルヘルスは急速に悪化していることから、パンデミックはさらにティーンエイジャーのメンタルヘルスを悪化させる可能性があると予想していたと述べています。パンデミック中にもかかわらずティーンエイジャーのメンタルヘルスが比較的前向きな変化を示したことについて、研究チームは「パンデミックによる生活習慣の変化」が理由ではないかと推測しています。

まず1つ目の理由として研究チームが挙げているのが「睡眠習慣の変化」です。2018年の調査で「通常は7時間以上寝ている」と回答したティーンエイジャーは全体の55%でしたが、パンデミック中の学校があった期間の調査では、実に84%のティーンエイジャーが7時間以上寝ていると回答したとのこと。この理由については、パンデミック中は学校がオンライン授業に切り替わったため、生徒たちが朝の通学時間分だけ遅くまで寝られたと考えられています。


また、パンデミック中は多くの労働者が在宅勤務になったことにより、ティーンエイジャーが「家族と過ごす時間」が増えた点も、パンデミックによるネガティブな影響を軽減したとみられています。ティーンエイジャーの56%は「パンデミック中はそれ以前より両親との会話が増えた」と回答しており、「家族が一緒に夕食を食べる頻度が増えた」と回答したのは54%、「兄弟とより多くの時間を過ごした」と回答したのは46%だったとのこと。

おそらく最も印象的な結果だったと研究チームが指摘するのが、「パンデミック中に家族の距離が縮まった」と回答したティーンエイジャーが全体の68%もいたことです。パンデミック中に家族の距離が縮まったと回答したティーンエイジャーでは、メンタルヘルスの落ち込みを経験した割合が15%にとどまっていたのに対し、家族の距離が縮まったと回答しなかったティーンエイジャーでは、27%がメンタルヘルスの落ち込みを報告しました。

Twenge氏は、「『ティーンエイジャーは両親と一緒に時間を過ごしたいと思っていない』という一般的な認識があり、確かに友人関係が重要であるのも事実です。しかし、彼らは両親との親密さを望んでいます。この事実が判明したことは、ある意味でパンデミックの数少ない恩恵でした」と述べています。


研究チームが注目したメンタルヘルス以外の結果として、パンデミック中のティーンエイジャーによるテクノロジーの使用が挙げられます。パンデミック中には友人と会えないため、ソーシャルメディアの利用が劇的に増加する可能性が想定されていましたが、2018年と比較してソーシャルメディアの利用は減少していたとのこと。

テキストメッセージやソーシャルメディア、ゲームに費やす時間が減少した一方で、ティーンエイジャーは友人とのビデオチャットや動画・映画の視聴により多くの時間を費やしていたそうです。Twenge氏はパンデミック中にネガティブなソーシャルメディアの利用が減り、ネットいじめの発生率も低下したのではないかと推測しています。

また、今回の調査ではティーンエイジャーの53%が「パンデミックの経験で自分がより強く、回復力がある人間になったと感じる」と回答したとのこと。これは、パンデミックという特殊な状況を経験したティーンエイジャーが、自分の成長を感じたことを示しています。

もちろんティーンエイジャーたちも、パンデミックの悪影響を感じていたことも報告されています。全体の29%が「COVID-19と診断された人を知っている」と述べ、27%が「パンデミックにより親が失業した」と答えたほか、日々の食事や家庭の資金繰りについて心配するティーンエイジャーも少なくありませんでした。こうした不安を抱えるティーンエイジャーは、そうでない場合よりメンタルヘルスの落ち込みが激しかったそうです。パンデミックにより全体的にはティーンエイジャーのメンタルヘルスが改善傾向を見せたものの、依然としてティーンエイジャーをサポートする取り組みの重要性は高いと研究チームは主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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