1カ所に集まってプレイすることを好むゲーマーが増えており中国全土でeスポーツホテルの需要が高まって2万1000軒以上も展開、2段ベッド・年中無休の技術サポート・最先端のコンソールを配備
中国やマレーシアなど、ゲーマーが多い東南アジア地域で「ゲーマー向けホテル」が売上を伸ばしています。こうしたホテルの利用者・経営者双方の声を、Bloombergがまとめました。
China Gamers Playing League of Legends, PUBG Drive Demand for Esports Hotels - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-11-22/china-gamers-playing-league-of-legends-pubg-drive-demand-for-esports-hotels
深センのホテルに数人の友人を連れてチェックインしたという20代前半の会社員、Zhu Hao氏は、「1人でゲームをプレイするのはつまらない」「ホテルなら両親が口うるさく言うこともないし、ゲームの邪魔をすることもない」という考えを持っているそうです。
Hao氏が利用したのは、中国のフランチャイズホテルブランドであるジンナンeスポーツパンエンターテインメントホテル(锦囊电竞泛娱酒店)。深セン都市圏を中心にホテルを展開しており、国内ナンバーワンの「eスポーツホテルブランド」の地位を確立しています。
このホテルには、2段ベッドが5つもある寮のような部屋や、巨大なモニターと快適なパッド入りの椅子を備えた豪華なゲーム部屋、備え付けのPCなどが用意されていて、オンラインゲームだけでなくボードゲームやカラオケ大会、集団での映画鑑賞などさまざまな用途で利用されているとのこと。漫画、スナック、インスタントラーメンなどさながらネットカフェのような備品まであり、遊び疲れたらマッサージで一息つくこともできるそうです。
このような専門的な宿泊施設は、香港、マレーシア、シンガポールなどアジア全域で誕生していて、中国では「寝そべり族」と呼ばれる若い世代が主に利用しているといいます。
同様の宿泊施設を運営するZhang Zijun氏は利用者の傾向について、「リーズナブルであれば値段はあまり気にしません。彼らが気にするのはベッドの大きさ、友人とゲームをするのに快適な環境かどうかです」と話しています。Zijun氏のホテルの利用者は「ゲーマーの心」を持つ20代前半から30代の男性会社員が中心で、平均稼働率は92%、週末はたいてい満室になるとのことです。
大抵の宿泊客は部屋にこもって朝方までゲームをしていて、滞在を延長する人も少なくないそう。あるグループは1泊でチェックインして最終的に8泊に延長し、山のように食べ物を注文して「掃除のおばさんが巨大なゴミ袋を2つ持って出ていった」との目撃談があったとZijun氏は語っています。
Bloombergは「ゲーマーが自宅でプレイするのが一般的なアメリカやヨーロッパとは異なる傾向だ」と指摘。eスポーツアナリストであるアレクサンダー・チャンプリン氏は、「自分のゲーム機に投資するよりも、リソースを共有して友人と遊ぶ方が手頃。ホテルの一室でみんなでプレイする方が、戦略を話しやすいというメリットもある」と話します。
中国政府は依存症対策のため、未成年者のオンラインゲームのプレイ時間を制限するなど、ゲーム業界を厳しく規制しています。しかし、政府はeスポーツを経済成長の原動力としても位置づけており、習近平国家主席が2023年の第19回アジア競技大会の開幕式に出席するなど、ゲームの勢いが盛んになりつつあります。
2024年8月に発売され、数日で1000万本を売り上げた中国発のRPG「黒神話:悟空」の影響も大きく、ハードウェアの売上を伸ばし、eスポーツホテルにも利益をもたらしたといいます。
「黒神話:悟空」がわずか83時間で1000万本を販売しPS5本体も売り切れ、エルデンリングやホグワーツ・レガシーを超える勢いで既に推定4億5000万ドル以上の収益 - GIGAZINE
中国最大のオンライン旅行代理店Ctrip.comのレポートによると、中国のeスポーツ宿泊市場は2023年だけで約27億ドル(約4160億円)の収益があったとのこと。
ゲーマー向けのホテルが350軒以上もある深センは、競技ゲーム産業を奨励するために補助金を支給しており、少なくとも8つのeスポーツクラブがチームを結成している「eスポーツの街」でもあります。ゲーマーの需要を満たすことを目的としたビジネス戦争が、こうした土地で静かに始まっています。
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