文献検索エンジン「Google Scholar」の知られざる20の事実
文献検索サービス「Google Scholar」のサービス開始20周年を記念して、Google公式ブログに「Google Scholarの知られざる20の事実」が掲載されました。
Google Scholar turns 20: Fun facts about Google Scholar
https://blog.google/outreach-initiatives/education/google-scholar-20-years/
◆事実その1:Google Scholar開発チームは2人で始まった
Google ScholarはAlex Verstak氏(写真左)とAnurag Acharya氏(写真右)によって2004年に開発されました。初期バージョンの開発には9カ月かかったそうです。
◆事実その2:初期は論文ファイルを物理的に運んでいた
サービス開始当初はインターネットの回線速度が遅くて不安定だったため、文献をオンラインで収集するのは困難でした。そこで、開発チームは出版社が用意した物理メディアを自分で回収していました。
◆事実その3:赤ちゃんがGoogle Scholarのリリース時期を早めた
Google Scholarの開発当時、Verstak氏は生まれてくる子どものために育児休暇を取得しようとしていたとのこと。出産予定日が近づいてもGoogle Scholarは開発途中の状態だったため、開発チームはVerstak氏が子どもの誕生の瞬間に立ち会えるようにするために徹夜で作業したそうです。
◆事実その4:研究者への敬意
研究コミュニティは他の研究者が築いた基盤の上に構築されます。このため、Google Scholarは「巨人の肩の上に立つ」というフレーズを製品モットーとしています。
◆事実その5:Google Scholarの野望
Google Scholarの開発チームは世界中のあらゆる場所に存在する「書籍」「研究論文」「記事」などを一括で閲覧できる巨大ライブラリの構築を目指しています。
◆事実その6:Google Scholar PDF ReaderにAI要約機能が搭載されている
研究論文の可読性を向上させられるChrome拡張機能「Google Scholar PDF Reader」にAI要約機能が追加されました。ただし、記事作成時点では英語の論文の要約にのみ対応しています。
◆事実その7:判例検索に対応
Google Scholarには判例検索機能が搭載されており、検索画面で「Case law」にチェックを入れると判例のみを検索できます。なお、記事作成時点では日本語版のGoogle Scholarでは「Case law」というチェックボックスが表示されないので、言語設定を英語に変更する必要があります。
試しに「Google」で検索するとGoogleに関係する判例がズラリと表示されました。
◆事実その8:文献を簡単に引用できる
検索結果内の「引用」をクリックすると、引用に適した形式で文献のタイトルや雑誌名などが表示されます。試しに「引用」をクリック。
すると、画面中央に複数の形式で文献情報が表示されました。後は、コピペするだけで正しく引用できるというわけです。
◆事実その9:引用増加を祝う機能がある
自分の論文の引用件数が規定値を超えると、Google Scholarのホームページにお祝いメッセージが表示されます。表示例は以下の通り。
Me on Google Scholar: "whose birthday is it?"
— Jenni Tabler, PhD (@jenni_tabler) January 14, 2023
Google Scholar: CONGRATULATIONS
Me: Why are there balloons
Google Scholar: WOULD YOU LIKE TO TWEET YOUR MILESTONE?
Me: *actually reads the words on the page* "Hey I reached 1000 citations today!"
Google Scholar: 🎈🥹 pic.twitter.com/jU99MoCdvc
◆事実その10:アクセス可能な文献を増やしている
Google Scholarはアクセス可能な文献を増やすために世界中の出版社や図書館との連携を進めています。
◆事実その11:個人ライブラリを構築可能
検索結果内の「保存」をクリックすると自分専用ライブラリに文献を追加できます。
◆事実その12:特定の著者をフォローできる
Google Scholarでは特定の著者をフォローして新着メールを受け取ることが可能です。
◆事実その13:コロナ禍で論文数は急増した
コロナ禍で外出が制限される中、Google Scholarは出版社と協力して「大学の外からでも定期購読中の雑誌にアクセスできるサービス」を提供しました。これにより研究者は自宅で論文を読んだり研究したりできるようになり、コロナ禍でも多くの論文が投稿されたそうです。
◆事実その14:Google Scholarで家族の意外な一面を知れる
Google Scholarの開発チームは、家族の知られざる歴史を知るためにGoogle Scholarで家族の名前を検索することを勧めています。
◆事実その15:Google Scholarに愛の告白をする人が数多く存在する
SNS上には「Google Scholarへの愛の告白」が数多く投稿されています。特に期末試験のシーズンに入ると学生からの告白が増えるそうです。
If I could marry a website it would be google scholar, forever the saviour of my uni work. 😍
— Anna Hastings 🍎 (@AnnaHastings6) January 6, 2015
◆事実その16:興味深い文献を発掘できる
Google Scholarには多様な文献がインデックスされています。開発チームは例として「200本以上の映画タイトルが含まれる判決文」や「ハードボイルド小説風に記された判決文」を紹介しています。
◆事実その17:要旨がめちゃくちゃ短い論文が存在する
2011年に公開された「Can apparent superluminal neutrino speeds be explained as a quantum weak measurement?(超高速ニュートリノは量子の弱い測定として説明できるか?)」という論文の要旨欄には「Probably not(多分無理)」とだけ記されています。
◆事実その18:ネコと一緒に書かれた論文が存在する
1975年に公開された「Two-, Three-, and Four-Atom Exchange Effects in bcc 3He」という論文にはF・ D・C・ウィラードという名前のネコが共著者として名を連ねています。
◆事実その19:珍しい組み合わせの研究が存在する
2020年には多様な物事が新型コロナウイルスと絡めて論じられました。例えば「チョコレート」と「COVID」という関係なさそうなワードで検索しても大量の文献がヒットします。
◆事実その20:科学の発展には大勢の協力が必要
2015年に公開されたヒッグス粒子に関する論文には共著者として5000人以上の名前が記されています。Google Scholarの開発チームは「20年間で、これほどチームワークが発揮された論文を見たのは初めてです」「科学的発見には、多くの人の協力が必要なのです」と述べています。
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