サイエンス

ウォーキングは歩き続けるより「休憩」を挟んだ方が最大60%も消費カロリーが多いとの研究結果


自動車は停車時から発進する際に多くの燃料を消費することから、省エネのためにゆっくりとアクセルペダルを踏む「ふんわりアクセル」が奨励されています。同様に、人間の体も安静時から運動に移行する過程で多くのエネルギーを消費するため、同じ距離をウォーキングする場合、歩き通すより立ち止まりながら歩いた方が効果的な可能性があるとの研究結果が報告されました。

Move less, spend more: the metabolic demands of short walking bouts | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2024.1220

Walking in short bursts found to consume 20% to 60% more energy than walking continuously for same distance
https://phys.org/news/2024-10-short-consume-energy-distance.html

This Small Tweak Makes a Huge Difference to Your Daily Walk : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/this-small-tweak-makes-a-huge-difference-to-your-daily-walk

Strolls with stops use more energy than continuous walking, scientists show | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2024/oct/16/strolls-with-stops-use-more-energy-than-continuous-walking-scientists-show

科学系ニュースサイト・ScienceAlertによると、日本の歩数計メーカーのマーケティングから始まった「1日1万歩」という目標は、当初は科学的な根拠に基づいたものではなかったものの、オーストラリアの研究で取り上げられたのを契機に世界中で実践されたり、研究でその効果が検証されたりしてきたとのこと。

歩数と健康の関係に関する調査の結果は「1日2000~4000歩でも効果がある」というものから「1日7000歩で十分」というもの、「やはり1日に1万歩には意味があった」というものまでさまざまです。


しかし、イタリア・ミラノ大学のフランチェスコ・ルチアーノ氏らの研究チームによると、ウォーキングと消費エネルギーに関するこれまでの研究の多くには、代謝が「定常状態」で運動している人のデータのみに基づいているという制限があるとのこと。

定常状態とは、心拍数が一定に保たれていて、体のエネルギー生産と消費のバランスが取れている状態のことで、よく巡航速度で走行している車に例えられます。しかし、人間を含め足で歩く動物の歩行は、歩数が少なすぎて定常状態に到達しないことがほとんどだと、研究チームは指摘しています。


運動の停止と再開を繰り返した場合と、運動し続けた場合の代謝の違いに着目した研究チームは、男女5人ずつ合計10人のボランティアを集めてトレッドミルを使ったウォーキングや階段の昇降運動をしてもらい、その最中の消費エネルギーの変化を分析しました。

実験は3つの異なる速度で行われ、運動時間は10秒から240秒、つまり4分までの5段階にわけて実施されました。特に、4分間の歩行では、歩行中に4回にわけて酸素摂取量が測定され、定常状態の歩行の効果が評価されました。

その結果、長時間運動よりも短時間運動の方が、時間平均した酸素摂取量と代謝コストが大きいことが判明しました。これは、同じ距離を移動する場合でも、一定の運動を長時間かけて行うより停止と再開を何度も繰り返した方がエネルギー消費量が多いということを意味しています。


具体的には、10~30秒の短いスパンで歩行したり階段を昇降したりした方が、同じ距離を一気に移動する場合より、エネルギー消費量の指標である酸素の摂取量が20~60%多かったとのことです。

この結果について、ルチアーノ氏は「歩行を開始したその瞬間は『固定費用』がかかるようです。例えるなら、車で移動しようとするとエンジンを始動させたり車庫から出したりするのに燃料が必要になるのと同じで、人間も安静状態からスタートすると、歩き始めるだけでかなりの量の酸素が消費されました。この消費コストは、歩行を開始してから10秒歩くか30秒歩くかに関係なく発生します」と話しました。

今回の研究は、10人の健康な参加者というごく小さなサンプルサイズに基づいている点に注意が必要です。

その一方で、この知見は高齢者や歩行障害がある人など、長時間の運動能力が制限されている人向けのリハビリテーションプログラムや運動指導の改善に役立つ可能性もあります。

また、研究を取り上げた海外メディアのThe Guardianは、「この研究は、座る時間が長くなりがちなライフスタイルの人や、まとまった運動時間が作れない人が日常生活の中で少しずつこまめに行う運動である『エクササイズ・スナッキング』の効果を裏付けるものかもしれません」と指摘しました。

ジム通いしなくても少しの運動で十分な効果が得られる「エクササイズ・スナッキング」とは? - GIGAZINE


◆フォーラム開設中
本記事に関連するフォーラムをGIGAZINE公式Discordサーバーに設置しました。誰でも自由に書き込めるので、どしどしコメントしてください!Discordアカウントを持っていない場合は、アカウント作成手順解説記事を参考にアカウントを作成してみてください!

• Discord | "ウォーキングの際に音楽を聴いてる?どんな音楽を聴いてる?" | GIGAZINE(ギガジン)
https://discord.com/channels/1037961069903216680/1303285288902328360

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ウォーキングとランニングではどちらが効率的に運動できるのか? - GIGAZINE

腰痛を改善するたったひとつの簡単な運動は「散歩」、ウォーキングで腰痛再発リスクは半分に - GIGAZINE

たとえ1日2000~4000歩でも「歩けば歩くほど死亡リスクを減らせる」ことが判明 - GIGAZINE

なぜランニングはウォーキングよりカロリー消費量が多いのか? - GIGAZINE

ウォーキングではない「日常生活の中の歩行」にも寿命を延ばす絶大な効果があることが明らかに - GIGAZINE

「運動はウォーキングで十分なのか?」という質問に各分野の専門家5人が回答するとこうなる - GIGAZINE

「歩き方」でビタミン不足や糖尿病など多くの病気を見つけることができる - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article Research shows that walking with breaks ….