地球はこれまで考えられていたよりはるかに巨大な宇宙の構造「引力流域」の一部との研究結果
5万6000個の銀河の動きを分析して宇宙の地図を作る研究により、これまで天の川銀河が所属すると考えられてきた超銀河団は、それよりも最大10倍大きな宇宙の大規模構造「引力流域(Basin of Attraction:BOA)」の一部に過ぎない可能性があることが判明しました。
Identification of basins of attraction in the local Universe | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-024-02370-0
New map of the universe shows mega structures | AIP
https://www.aip.de/en/news/cosmography-mega-structures/
UH astronomers: Our cosmic neighborhood may be 10x larger | University of Hawaiʻi System News
https://www.hawaii.edu/news/2024/09/27/cosmic-neighborhood-may-be-10x-larger/
The Milky Way could be part of a much larger 'cosmic neighborhood' than we realized, challenging our understanding of the universe | Live Science
https://www.livescience.com/space/cosmology/the-milky-way-could-be-part-of-a-much-larger-cosmic-neighborhood-than-we-realized-challenging-our-understanding-of-the-universe
地球は火星や水星などと一緒に太陽系を回っており、太陽系は天の川銀河に位置しています。また、天の川銀河や隣のアンドロメダ銀河は局所銀河群というグループに属しており、この局所銀河群はさらにラニアケア超銀河団に含まれていると考えられています。
「無限の天空」を意味するハワイ語から名付けられたラニアケア超銀河団は、10万個の銀河を擁する直径約1億6000万パーセク(約5億2000万光年)の広大な領域に広がっていますが、2024年9月27日に学術雑誌・Nature Astronomyに掲載された論文では、さらにその最大10倍の大きさを持つ「引力流域(BOA)」の一部である可能性が示されました。
BOAとは、「宇宙の膨張がなければある一点に収縮する領域」と定義される領域のことです。
BOAについて、ハワイ大学の天文学者であるリチャード・ブレント・タリー氏は「私たちの宇宙は巨大な網目のようなもので、銀河は張り巡らされたフィラメントに沿うようにして、重力に引き寄せられてできた節目に集まっています。ちょうど、水が流域を流れるように、銀河も宇宙の『引力流域』を流れているわけです。このような巨大な宇宙の流域が発見されれば、宇宙の構造に対する私たちの理解が根本から覆されるかもしれません」と説明しています。
この研究で、ハワイ大学、エルサレム大学、パリ=サクレ大学の研究チームは、5万6000個以上の銀河の相対的な動きを分析し、天の川銀河を取り囲む宇宙の地図を作成しました。
以下は、研究チームが特定した潜在的なBOA15個を可視化したもので、ラニアケア超銀河団は赤枠で示されています。
これまで、天の川銀河はラニアケア超銀河団、つまりラニアケアBOAに関連していると考えられていましたが、今回の研究では最大10倍の広さを持つBOAである「シャプレー超銀河団」の一部の可能性があると結論づけられました。
もしこれが事実なら、ラニアケア超銀河団はそもそも存在せず、天の川銀河はシャプレー超銀河団の辺境にある存在に過ぎないということを意味していると、研究者らは述べています。
シャプレー超銀河団は今回初めて発見されたものではありませんが、以前は天の川銀河と関係しているとは考えられていませんでした。
これまでのところ、研究者らは天の川銀河がシャプレー超銀河団に属している可能性は60%だと見積もっています。この不確実性は、遠方の銀河の速度を測定する際の誤差や、観測不能でありながら宇宙の広い領域に巨大な重力効果を及ぼすダークマターの存在に起因しているとのこと。研究チームは、今後も宇宙最大の構造の地図を作成する研究を続けていく予定です。
論文の著者のひとりであるハワイ大学のノアム・リベスキンド氏は「宇宙のかなたへと目を向けるにつれて、私たちの住む超銀河団が思っていた以上につながりが深く広大だということが見えてくるのは、驚くに値しないかもしれません。しかし、私たちがもっと大きな構造の一部である可能性を突き止めることを思うと、とてもわくわくします。これまで見つかっているのは、まだ手がかりに過ぎません。私たちが住む超銀河団の大きさを確かめるには、さらに多くの観測を行う必要があります」と述べました。
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